REPORT
レポート
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関東大学対抗戦・第6戦 明治大学戦
2011/11/21
力と力の真っ向勝負で勝利!対抗戦『第一位』を確保
11月20日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 17-8 明治大学●
《帝京》
1吉田 2白 3前田(龍)⇒出渕 4今村⇒小瀧 5ボンド 6大和田⇒河口 7松永 8李 9滑川 10森田
11伊藤(拓) 12南橋 13中村(亮) 14南藤 15竹田
《明治》※先発のみ
1石原 2鈴木 3小野 4池田 5日高 6比果 7竹内 8堀江 9秦 10染山 11山中 12溝口 13西村
14小泉 15仁平
対抗戦も残り2試合。第6戦の相手は明治大学。重戦車FWなどと言われ、FWの強さが代名詞の相手だが、ここ数年はディフェンス力やBKでの突破力も増している。巷では「対抗戦全勝対決」として注目されているが、帝京としては気持ちの入った強敵相手にどこまで自分たちのラグビーをやりきれるかが試される。
注目はやはりFW戦。帝京もFW戦では負けられない。激しいプレッシャーに加え、セットプレーをどれだけ安定させられるかがポイントになるだろう。また、この時期にとしては気温が高く、選手のスタミナの消耗もキーとなることが予想された。帝京が勝てば、3年ぶり2度目の対抗戦『第一位』が決まる注目の一戦だ。
【前半戦】
開始直後は大観衆の雰囲気にやや固くなったのか、ややボールが手につかないプレーが見られる両チーム。帝京は、8分にはノックオンしたボールが前方の味方の選手に当たるノックオンオフサイドの反則を取られ、PGの3点を献上してしまう。
だが、ポイントの一つである接点ではまったく負けていないし、攻められてもFL松永、CTB南橋らを軸にしっかり止め切り、モールを組まれても押させない。
スクラムはお互いにコラプシングを取られるなどしたが、これもまったく押される様子はない。明治の重戦車FWに対して負けていないどころか、十分押し勝っている。
それを証明するかのように、16分、ラインアウトからモールを押し込むと、FW第3列が持ち出してゴール前へ。ゴールライン直前でつかまるが、しっかりとラックにしてキープする。そのボールを、この試合何度も絶妙なボールへの絡みを見せたHO白が拾って逆転のトライを奪う(7-3)。
その後もFW戦では圧倒。場内からは帝京の圧力にため息がもれる。さらにラインアウトからモールを押し込んでゴールラインを越える。トライかと思われたが、グラウンディングが認められずにキャリーバック。その後のスクラムでもぐいぐい押して行き、このままスクラムトライかと期待されたが、ここではボールコントロールを失った一瞬の隙を突かれ、ボールにからまれてターンオーバーされてしまう。
岩出監督も「ここできっちり点が取れていれば、もう少し勢いに乗れたかなと思っています」と振り返ったように、押し込みながら得点できないというややもどかしい時間帯が続く。
しかし、帝京の攻めは続く。相手ボールのドロップアウトをLO今村がギリギリのところでウォッチしてダイレクトタッチにすると、22mライン上でのスクラムで相手のコラプシングの反則を誘う。SO森田がきっちりPGを決め、10-3と点差を広げる。
その後、攻められる場面もあるが、帝京は安定したディフェンスを見せる。堅いディフェンスは相手のミスも誘う。こぼれたボールを森田がゴロキックで前進を図るなど、帝京の攻め手は緩まない。得点にこそならなかったが、終始帝京ペースで進み、前半を10-3で折り返すこととなった。
【後半戦】
後半も帝京がいい流れで攻撃しかける。相手のキックに対してWTB南藤らが献身的にプレッシャーをかけに続ける。攻撃されてもしっかりしのぎ、ボールを奪い返す。この日もオールラウンドに活躍したLOボンドが力強く縦に前進すると、森田の好タッチキックで敵陣ゴール前まで進む。
そして迎えた2分。相手ボールのラインアウトをスチールすると、今度はモールを形成。中央付近まで攻め込む。モールは崩れるが、SH滑川が持ち出して前進。最後は相手タックラーを引き摺りながらインゴールへ。後半早々、帝京が17-3と突き放すトライを奪う。
このまま勢いに乗っていくかに見えたが、明治はFWを前面に出して攻め込んでくる。5分後にはラインアウトからモールを組まれると、押し込まれてトライを献上(17-8)。
だが帝京はここでモールディフェンスを再確認。押された原因をはっきりさせると、その後は危険な地域でモールを押し込まれることはなかった。WTB伊藤(拓)のキックチャージなど、BKも積極的に前に出るディフェンスを披露。
帝京はその後も守る時間帯が続くものの、しっかりとディフェンスし、決定的な場面は作らせない。明治はゴール前でモールを形成するが、帝京は着実にターンオーバー。再度のモール攻撃も耐え、アンプレイアブルで帝京ボールにしてしまう。
残り10分あたりからはFW攻撃を真正面から受け止める展開に。ゴール正面で帝京が二度反則を取られるが、明治はPGを狙わない。点差は9点。6点差にされると嫌な流れになりそうだったが、明治はあくまでもFWにこだわった。
森田は冷静に振り返る。「あそこはPGを狙われたほうが嫌でした」。モールディフェンスを修正できている帝京にとってはかえって守りやすい展開になったといえそうだ。FWで攻められても帝京のディフェンスラインはいっこうに崩れない。
FB竹田はこう振り返る。
「試合前はディフェンスが抜かれたらしっかり上がって防ごうと意識して臨んだのですが、今日はディフェンスがよく、抜かれるシーンがなかったので、僕が上がる場面を作らずにすみました」
明治の攻めが続くが、堅い守りの帝京にとってはむしろ相手が時間を使ってくれる好展開。なんら慌てることなく最後まできっちりと守り切り、帝京が17-8で対抗戦全勝対決を制した。
この勝利で帝京にとってまた新しい歴史が塗り替えられた。3年ぶり2回目の対抗戦第一位である。だが、(試合後初めて第一位が確定したことを知った選手・スタッフがほとんどであったように)選手たちにとってはそれ以上に、ある部分での手ごたえを得た試合だったのではないだろうか。試合を重ねるごとに、赤いマグマと称されるDFが、いよいよ形成されてきた感がある。11月下旬にしては暑いくらいの気候の中、最後までディフェンスの集中力を切らさなかった帝京フィフティーン。大きく重い相手に対して最後までひたむきにタックルに行った彼らに、見ていた多くの人がたくましい成長を感じたことだろう。
「今日は明治大学さんが勝てば13年ぶりの対抗戦優勝が決まるということで、明治大学さんの強いパワーを感じました。そんな中でのゲーム、学生たちはやや緊張もし、力も入ったと思います。結果的に勝利でき、学生達を『よく頑張った』とほめてあげたいと思います。
ゲームの内容に関してはもう少し出来のいいところを期待したのですが、まだまだ力強さやしぶとさに欠ける部分があったかなと思っています。学生もそれは感じていると思いますが、選手、スタッフ、皆にとって次につながるたいへんいい試合だったと思います。
明治大学さんとはもう一度、対戦するときが来るのではないかと感じています。そのときは今日の経験が生きたと言えるように、短い時間ではありますが、これからも精進していきたいと思っています。
次は筑波大学さんとの試合になります。例年は10月頃に対戦していて、ここ数年はとても苦戦している相手です。ですが、今年は12月の対戦ということで、10月時点のチームと12月時のチームとの成長の違いをお見せすることができるようなゲームをしたいと思っています。次戦も応援のほどよろしくお願いいたします。」
■キャプテン・森田佳寿(4年)
「今日の試合もこれまでと同様、この試合を通じてさらに成長していこうと言って臨みました。また、明治大学さんはこの試合に勝てば対抗戦の優勝が決まるということで、非常に高いモチベーションをもって、精神的にもタフな状態で来るだろうと予想し、そういう精神状態の強い相手に勝つことで我々の精神的な強さを生みだそうと言って臨みました。
試合内容としては練習してきたことがなかなか出せず、課題の多く残るゲームになりましたが、勝ち切れたという点で我々もタフに成長できたのではないかと思っています。今日出た課題をしっかり修正して、対抗戦の最終戦、またその先の大学選手権に向けて頑張っていきたいと思っています。」
■パワフルにスクラムを牽引したPR吉田康平(4年)
「今日はセットプレーでは、スクラムでプレッシャーを与える、マイボール・スクラムは安定させる、ラインアウトはキープするといったことを考えて臨んだのですが、自分のペナルティやミスもあって、うまくコントロールできませんでした。スクラムは春に比べたらとても良くなっていると思いますが、あとは8人でまとまって組めたらもっといいスクラムになると思います。次はまずはセットプレーと相手へのプレッシャー、さらにはブレイクダウンとタックルを自分の中で目標に掲げて練習していきたいと思っています。」
■真っ向勝負のFWリーダーHO白隆尚(4年)
「今日は自分たちのやってきたことを出そう、今のプレーに集中しようと言って臨みました。結果は勝利できたのですが、まだまだ自分たちの納得のいく内容ではないので、練習で修正して、さらに成長していきたいです。FWリーダーとしては、常に逃げずにプレーし続けて、思い切りよく強気でプレーすることでみんなを引っ張っていきたいと思っています。接点での圧倒ということを常に心がけているので、次の筑波大戦に向けても接点での圧倒を意識して練習に取り組んでいきたいと思います。」
■セットプレーの安定に大きく貢献したPR前田龍佑(4年)
「今日は相手FWに自分たちがFWとしてどれだけ通用するのかを試すんだと言って試合に臨みました。明治大学さんはスクラムで特殊な組み方をしてくるのですが、その対策も練習してきたのでそれほど相手の組み方は気になりませんでした。自分はタックルに行く回数が少ないとよく指摘されるので、次戦はFWとしてセットプレーでプレッシャーをかけるのはもちろん、もっとタックルなどフィールドプレーで貢献できるように頑張りたいと思います。」
■攻撃オプションで見せ場を作ったCTB中村亮土(2年)
「自分の課題として、ボールを大切にするということを考えて臨みました。ノックオンをしないとか、ダウンボールをしっかりやるというところですね。ただ、今日もノックオンをしてしまいました。味方とのコミュニケーション不足なので、そこは修正したいです。南橋さんとのサインプレーでは一つ二つ練習してきたとおりにできました。もっともっとああいう場面が増えるように練習していきたいです。さらに積極的なプレー、BKでもトライを取り切れるようなインパクトのあるプレーをしたいと思っています。次の筑波大学さんはディフェンスがしっかりしているチームなので、いかに激しく前に出るかを課題にして、一歩でも前に出られるように体を張りたいと思います。」
■長いキックでエリアをマネジメントしたFB竹田宜純(2年)
「今日は勝ててうれしいです。前回の早稲田戦では大事なところでキックミスをしてしまったので、今日はチームの流れを変えられるようなキックをしたいと思って臨みました。うちのディフェンスが堅かったので自分がディフェンスする場面はあまりなかったのですが、それでもやはり明治大学さんは一人一人が強いなと感じました。次戦も自分の役割をきちんと果たせるように頑張ります。」
■途中出場ながら思い切りのよさをアピールLO小瀧尚弘(1年)
「途中出場ということでパワーも有り余っていましたから、とにかく激しさだけを意識して、絶対に相手を前に出さないようにと思って臨みました。攻められている場面だったこともあり、緊張しましたが、相手を前に出さないディフェンスができたのでよかったと思います。次戦も今日のような気持ちをもって、激しく行って、絶対に勝ちます。」
■公式戦初出場ながら積極的にプレーしたFL河口駿(1年)
「後半の最後の方に出たの ですが、自陣で攻められている場面だったので、一発のタックルで流れを変えてやろうと思って入りました。たくさんのお客さんの前でプレーできてうれしかったです。入るまでは緊張していたのですが、入ったときに先輩たちに声をかけていただき、緊張がほぐれました。明治大学さんは体もできていて強かったので、自分も体づくりを頑張ってもっと大きくなって、もう一度対戦してみたいです。」
LO 今村哲央(2年生)
IMAMURA TETSUO
1991年4月20日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
佐賀工業高校出身
身長191cm/体重108 kg/血液型AB型
■公式戦初先発でしたが、どんなことを考えて臨んだのでしょうか?
「初めての先発出場ということでとても緊張したのですが、監督からは『思い切ってやろう』と言われていたので、思い切りやることだけを考えて臨みました。」
■思ったプレーはできましたか?
「前半は思い切りできたのですが、後半は少しスタミナがなくなってきて、そこでサインミスなどが出てしまいました。もっと後半ばてない体力をつけないといけないと思いました。」
■プレーの中でこだわろうと思っていたことはありますか?
「セットプレーでまずマイボールのラインアウトは100%獲得して、相手ボールのセットプレーはとことんプレッシャーをかけ続けようと思っていました。ラインアウトではコミュニケーション不足によるミスが多く出てしまい、そこは修正点です。」
■今日、一番よかったのはどこでしょうか?
「自分としては、前半、ゴール前でのマイボール・スクラムをしっかり押せた場面ですね。スクラムトライできるかなというシーンで、きちんと3番にプッシュできて、前に進めたところがよかったです。結果的にはボールにからまれてしまったのですが、スクラムで押せる手応えを感じました。」
■自分自身の成長を感じるところはどこでしょうか?
「セットプレーですかね。力を入れて練習しているので、そこは成長していると感じます。」
■今日の先発はどこを期待されたのだと思いますか?
「セットプレー、特にラインアウトの獲得率向上を期待され たと思っています。」
■その期待に応えられたでしょうか?
「もう少しやれたかなという気持ちはあります。修正して今後の試合に活かしたいと思います。」
■一番見てほしいプレーはどんなプレーですか?
「ラインアウトの高さの部分ですね。」
■次戦への意気込みを聞かせてください。
「ラインアウトでの修正点が多く出たので、次はミスをなくして、セットプレーからどんどんプレッシャーをかけて相手のミスを誘うようなプレーをしたいと思っています。応援よろしくお願いします。」
成長途上ながら、身長191cmの高さはそれだけで大きな武器だ。周囲の期待も大きい。公式戦初先発でも物怖じすることなく、普段どおりのプレーを見せてくれた。まだまだ荒削りだが、その潜在能力は計り知れない。LOはボンドを筆頭に、マニング、小瀧、そして今村etcと最激戦ポジションの一つだが、大舞台を経験し、チームの戦術理解が進めば、大きな戦力になるはずだ。
対抗戦最後の相手は筑波大学。一昨年は敗れ、昨年も大苦戦を強いられた相手。今年は早稲田、慶應といった伝統強豪校を倒して波に乗っている。けっして侮れない難敵だが、帝京にとっては大学選手権をも見据えた上で、自分たちのラグビーをすることこそが、己の成長・そして勝利への近道となるのではないか。きっちりとした試合をして、大学選手権へいい形でつなげていきたい。熊谷は都心からはやや離れるが、ぜひ赤い服装をまとって、スタンドから帝京の勇姿を見届けよう。
(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
11月20日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学 17-8 明治大学●
《帝京》
1吉田 2白 3前田(龍)⇒出渕 4今村⇒小瀧 5ボンド 6大和田⇒河口 7松永 8李 9滑川 10森田
11伊藤(拓) 12南橋 13中村(亮) 14南藤 15竹田
《明治》※先発のみ
1石原 2鈴木 3小野 4池田 5日高 6比果 7竹内 8堀江 9秦 10染山 11山中 12溝口 13西村
14小泉 15仁平
対抗戦も残り2試合。第6戦の相手は明治大学。重戦車FWなどと言われ、FWの強さが代名詞の相手だが、ここ数年はディフェンス力やBKでの突破力も増している。巷では「対抗戦全勝対決」として注目されているが、帝京としては気持ちの入った強敵相手にどこまで自分たちのラグビーをやりきれるかが試される。
注目はやはりFW戦。帝京もFW戦では負けられない。激しいプレッシャーに加え、セットプレーをどれだけ安定させられるかがポイントになるだろう。また、この時期にとしては気温が高く、選手のスタミナの消耗もキーとなることが予想された。帝京が勝てば、3年ぶり2度目の対抗戦『第一位』が決まる注目の一戦だ。
【前半戦】
開始直後は大観衆の雰囲気にやや固くなったのか、ややボールが手につかないプレーが見られる両チーム。帝京は、8分にはノックオンしたボールが前方の味方の選手に当たるノックオンオフサイドの反則を取られ、PGの3点を献上してしまう。
だが、ポイントの一つである接点ではまったく負けていないし、攻められてもFL松永、CTB南橋らを軸にしっかり止め切り、モールを組まれても押させない。
スクラムはお互いにコラプシングを取られるなどしたが、これもまったく押される様子はない。明治の重戦車FWに対して負けていないどころか、十分押し勝っている。
それを証明するかのように、16分、ラインアウトからモールを押し込むと、FW第3列が持ち出してゴール前へ。ゴールライン直前でつかまるが、しっかりとラックにしてキープする。そのボールを、この試合何度も絶妙なボールへの絡みを見せたHO白が拾って逆転のトライを奪う(7-3)。
その後もFW戦では圧倒。場内からは帝京の圧力にため息がもれる。さらにラインアウトからモールを押し込んでゴールラインを越える。トライかと思われたが、グラウンディングが認められずにキャリーバック。その後のスクラムでもぐいぐい押して行き、このままスクラムトライかと期待されたが、ここではボールコントロールを失った一瞬の隙を突かれ、ボールにからまれてターンオーバーされてしまう。
岩出監督も「ここできっちり点が取れていれば、もう少し勢いに乗れたかなと思っています」と振り返ったように、押し込みながら得点できないというややもどかしい時間帯が続く。
しかし、帝京の攻めは続く。相手ボールのドロップアウトをLO今村がギリギリのところでウォッチしてダイレクトタッチにすると、22mライン上でのスクラムで相手のコラプシングの反則を誘う。SO森田がきっちりPGを決め、10-3と点差を広げる。
その後、攻められる場面もあるが、帝京は安定したディフェンスを見せる。堅いディフェンスは相手のミスも誘う。こぼれたボールを森田がゴロキックで前進を図るなど、帝京の攻め手は緩まない。得点にこそならなかったが、終始帝京ペースで進み、前半を10-3で折り返すこととなった。
【後半戦】
後半も帝京がいい流れで攻撃しかける。相手のキックに対してWTB南藤らが献身的にプレッシャーをかけに続ける。攻撃されてもしっかりしのぎ、ボールを奪い返す。この日もオールラウンドに活躍したLOボンドが力強く縦に前進すると、森田の好タッチキックで敵陣ゴール前まで進む。
そして迎えた2分。相手ボールのラインアウトをスチールすると、今度はモールを形成。中央付近まで攻め込む。モールは崩れるが、SH滑川が持ち出して前進。最後は相手タックラーを引き摺りながらインゴールへ。後半早々、帝京が17-3と突き放すトライを奪う。
このまま勢いに乗っていくかに見えたが、明治はFWを前面に出して攻め込んでくる。5分後にはラインアウトからモールを組まれると、押し込まれてトライを献上(17-8)。
だが帝京はここでモールディフェンスを再確認。押された原因をはっきりさせると、その後は危険な地域でモールを押し込まれることはなかった。WTB伊藤(拓)のキックチャージなど、BKも積極的に前に出るディフェンスを披露。
帝京はその後も守る時間帯が続くものの、しっかりとディフェンスし、決定的な場面は作らせない。明治はゴール前でモールを形成するが、帝京は着実にターンオーバー。再度のモール攻撃も耐え、アンプレイアブルで帝京ボールにしてしまう。
残り10分あたりからはFW攻撃を真正面から受け止める展開に。ゴール正面で帝京が二度反則を取られるが、明治はPGを狙わない。点差は9点。6点差にされると嫌な流れになりそうだったが、明治はあくまでもFWにこだわった。
森田は冷静に振り返る。「あそこはPGを狙われたほうが嫌でした」。モールディフェンスを修正できている帝京にとってはかえって守りやすい展開になったといえそうだ。FWで攻められても帝京のディフェンスラインはいっこうに崩れない。
FB竹田はこう振り返る。
「試合前はディフェンスが抜かれたらしっかり上がって防ごうと意識して臨んだのですが、今日はディフェンスがよく、抜かれるシーンがなかったので、僕が上がる場面を作らずにすみました」
明治の攻めが続くが、堅い守りの帝京にとってはむしろ相手が時間を使ってくれる好展開。なんら慌てることなく最後まできっちりと守り切り、帝京が17-8で対抗戦全勝対決を制した。
この勝利で帝京にとってまた新しい歴史が塗り替えられた。3年ぶり2回目の対抗戦第一位である。だが、(試合後初めて第一位が確定したことを知った選手・スタッフがほとんどであったように)選手たちにとってはそれ以上に、ある部分での手ごたえを得た試合だったのではないだろうか。試合を重ねるごとに、赤いマグマと称されるDFが、いよいよ形成されてきた感がある。11月下旬にしては暑いくらいの気候の中、最後までディフェンスの集中力を切らさなかった帝京フィフティーン。大きく重い相手に対して最後までひたむきにタックルに行った彼らに、見ていた多くの人がたくましい成長を感じたことだろう。
《試合後のインタビュー》
■岩出雅之監督「今日は明治大学さんが勝てば13年ぶりの対抗戦優勝が決まるということで、明治大学さんの強いパワーを感じました。そんな中でのゲーム、学生たちはやや緊張もし、力も入ったと思います。結果的に勝利でき、学生達を『よく頑張った』とほめてあげたいと思います。
ゲームの内容に関してはもう少し出来のいいところを期待したのですが、まだまだ力強さやしぶとさに欠ける部分があったかなと思っています。学生もそれは感じていると思いますが、選手、スタッフ、皆にとって次につながるたいへんいい試合だったと思います。
明治大学さんとはもう一度、対戦するときが来るのではないかと感じています。そのときは今日の経験が生きたと言えるように、短い時間ではありますが、これからも精進していきたいと思っています。
次は筑波大学さんとの試合になります。例年は10月頃に対戦していて、ここ数年はとても苦戦している相手です。ですが、今年は12月の対戦ということで、10月時点のチームと12月時のチームとの成長の違いをお見せすることができるようなゲームをしたいと思っています。次戦も応援のほどよろしくお願いいたします。」
■キャプテン・森田佳寿(4年)
「今日の試合もこれまでと同様、この試合を通じてさらに成長していこうと言って臨みました。また、明治大学さんはこの試合に勝てば対抗戦の優勝が決まるということで、非常に高いモチベーションをもって、精神的にもタフな状態で来るだろうと予想し、そういう精神状態の強い相手に勝つことで我々の精神的な強さを生みだそうと言って臨みました。
試合内容としては練習してきたことがなかなか出せず、課題の多く残るゲームになりましたが、勝ち切れたという点で我々もタフに成長できたのではないかと思っています。今日出た課題をしっかり修正して、対抗戦の最終戦、またその先の大学選手権に向けて頑張っていきたいと思っています。」
■パワフルにスクラムを牽引したPR吉田康平(4年)
「今日はセットプレーでは、スクラムでプレッシャーを与える、マイボール・スクラムは安定させる、ラインアウトはキープするといったことを考えて臨んだのですが、自分のペナルティやミスもあって、うまくコントロールできませんでした。スクラムは春に比べたらとても良くなっていると思いますが、あとは8人でまとまって組めたらもっといいスクラムになると思います。次はまずはセットプレーと相手へのプレッシャー、さらにはブレイクダウンとタックルを自分の中で目標に掲げて練習していきたいと思っています。」
■真っ向勝負のFWリーダーHO白隆尚(4年)
「今日は自分たちのやってきたことを出そう、今のプレーに集中しようと言って臨みました。結果は勝利できたのですが、まだまだ自分たちの納得のいく内容ではないので、練習で修正して、さらに成長していきたいです。FWリーダーとしては、常に逃げずにプレーし続けて、思い切りよく強気でプレーすることでみんなを引っ張っていきたいと思っています。接点での圧倒ということを常に心がけているので、次の筑波大戦に向けても接点での圧倒を意識して練習に取り組んでいきたいと思います。」
■セットプレーの安定に大きく貢献したPR前田龍佑(4年)
「今日は相手FWに自分たちがFWとしてどれだけ通用するのかを試すんだと言って試合に臨みました。明治大学さんはスクラムで特殊な組み方をしてくるのですが、その対策も練習してきたのでそれほど相手の組み方は気になりませんでした。自分はタックルに行く回数が少ないとよく指摘されるので、次戦はFWとしてセットプレーでプレッシャーをかけるのはもちろん、もっとタックルなどフィールドプレーで貢献できるように頑張りたいと思います。」
■攻撃オプションで見せ場を作ったCTB中村亮土(2年)
「自分の課題として、ボールを大切にするということを考えて臨みました。ノックオンをしないとか、ダウンボールをしっかりやるというところですね。ただ、今日もノックオンをしてしまいました。味方とのコミュニケーション不足なので、そこは修正したいです。南橋さんとのサインプレーでは一つ二つ練習してきたとおりにできました。もっともっとああいう場面が増えるように練習していきたいです。さらに積極的なプレー、BKでもトライを取り切れるようなインパクトのあるプレーをしたいと思っています。次の筑波大学さんはディフェンスがしっかりしているチームなので、いかに激しく前に出るかを課題にして、一歩でも前に出られるように体を張りたいと思います。」
■長いキックでエリアをマネジメントしたFB竹田宜純(2年)
「今日は勝ててうれしいです。前回の早稲田戦では大事なところでキックミスをしてしまったので、今日はチームの流れを変えられるようなキックをしたいと思って臨みました。うちのディフェンスが堅かったので自分がディフェンスする場面はあまりなかったのですが、それでもやはり明治大学さんは一人一人が強いなと感じました。次戦も自分の役割をきちんと果たせるように頑張ります。」
■途中出場ながら思い切りのよさをアピールLO小瀧尚弘(1年)
「途中出場ということでパワーも有り余っていましたから、とにかく激しさだけを意識して、絶対に相手を前に出さないようにと思って臨みました。攻められている場面だったこともあり、緊張しましたが、相手を前に出さないディフェンスができたのでよかったと思います。次戦も今日のような気持ちをもって、激しく行って、絶対に勝ちます。」
■公式戦初出場ながら積極的にプレーしたFL河口駿(1年)
「後半の最後の方に出たの ですが、自陣で攻められている場面だったので、一発のタックルで流れを変えてやろうと思って入りました。たくさんのお客さんの前でプレーできてうれしかったです。入るまでは緊張していたのですが、入ったときに先輩たちに声をかけていただき、緊張がほぐれました。明治大学さんは体もできていて強かったので、自分も体づくりを頑張ってもっと大きくなって、もう一度対戦してみたいです。」
《PICK UP PLAYERS》
未完の大器がついに目覚めはじめたLO 今村哲央(2年生)
IMAMURA TETSUO
1991年4月20日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
佐賀工業高校出身
身長191cm/体重108 kg/血液型AB型
■公式戦初先発でしたが、どんなことを考えて臨んだのでしょうか?
「初めての先発出場ということでとても緊張したのですが、監督からは『思い切ってやろう』と言われていたので、思い切りやることだけを考えて臨みました。」
■思ったプレーはできましたか?
「前半は思い切りできたのですが、後半は少しスタミナがなくなってきて、そこでサインミスなどが出てしまいました。もっと後半ばてない体力をつけないといけないと思いました。」
■プレーの中でこだわろうと思っていたことはありますか?
「セットプレーでまずマイボールのラインアウトは100%獲得して、相手ボールのセットプレーはとことんプレッシャーをかけ続けようと思っていました。ラインアウトではコミュニケーション不足によるミスが多く出てしまい、そこは修正点です。」
■今日、一番よかったのはどこでしょうか?
「自分としては、前半、ゴール前でのマイボール・スクラムをしっかり押せた場面ですね。スクラムトライできるかなというシーンで、きちんと3番にプッシュできて、前に進めたところがよかったです。結果的にはボールにからまれてしまったのですが、スクラムで押せる手応えを感じました。」
■自分自身の成長を感じるところはどこでしょうか?
「セットプレーですかね。力を入れて練習しているので、そこは成長していると感じます。」
■今日の先発はどこを期待されたのだと思いますか?
「セットプレー、特にラインアウトの獲得率向上を期待され たと思っています。」
■その期待に応えられたでしょうか?
「もう少しやれたかなという気持ちはあります。修正して今後の試合に活かしたいと思います。」
■一番見てほしいプレーはどんなプレーですか?
「ラインアウトの高さの部分ですね。」
■次戦への意気込みを聞かせてください。
「ラインアウトでの修正点が多く出たので、次はミスをなくして、セットプレーからどんどんプレッシャーをかけて相手のミスを誘うようなプレーをしたいと思っています。応援よろしくお願いします。」
成長途上ながら、身長191cmの高さはそれだけで大きな武器だ。周囲の期待も大きい。公式戦初先発でも物怖じすることなく、普段どおりのプレーを見せてくれた。まだまだ荒削りだが、その潜在能力は計り知れない。LOはボンドを筆頭に、マニング、小瀧、そして今村etcと最激戦ポジションの一つだが、大舞台を経験し、チームの戦術理解が進めば、大きな戦力になるはずだ。
《NEXT MATCH PREVIEW》
【12月3日(土)関東大学対抗戦 VS筑波大学 熊谷ラグビー場 14時キックオフ】対抗戦最後の相手は筑波大学。一昨年は敗れ、昨年も大苦戦を強いられた相手。今年は早稲田、慶應といった伝統強豪校を倒して波に乗っている。けっして侮れない難敵だが、帝京にとっては大学選手権をも見据えた上で、自分たちのラグビーをすることこそが、己の成長・そして勝利への近道となるのではないか。きっちりとした試合をして、大学選手権へいい形でつなげていきたい。熊谷は都心からはやや離れるが、ぜひ赤い服装をまとって、スタンドから帝京の勇姿を見届けよう。
(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
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