REPORT
レポート
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第55回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 準々決勝 流通経済大学戦
2018/12/22
12月22日(土)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学45-0流通経済大学●
《帝京大学》
[FW]
(1)岡本⇒長谷川(2)清水⇒奥野(3)當眞⇒淺岡(4)ロガヴァトゥ⇒藤田(5)秋山⇒菅原(6)今村⇒安田(7)中野(8)マクカラン(ブ)
[BK]
(9)小畑⇒末(10)北村(11)奥村(12)本郷(13)マクカラン(二)⇒西川(14)木村(15)竹山
《流通経済大学》※先発のみ
[FW]
(1)藤田(2)林(3)井上(4)山川(5)津嘉山(6)カペネ(7)坂本(8)積
[BK]
(9)北原(10)林(11)韓(12)平井(13)タカヤワ(14)中根(15)桑江
【前半】【得点経過】
【10分】帝5-0流
ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO北村-CTBマクカラン(二)-WTB木村と渡り、木村が走り切ってトライ。
【22分】帝12-0流
スクラムからSH小畑-FB竹山-WTB奥村と渡り、奥村が抜け出してトライ。ゴール成功。
【後半】【得点経過】
【6分】帝19-0流
ラインアウトからモールを押し切り、LOロガヴァトゥがトライ。ゴール成功。
【11分】帝26-0流
FB竹山が相手のキックをキャッチし、カウンターアタック。自陣から走り切ってトライ。ゴール成功。
【19分】帝33-0流
スクラムから展開。No8マクカラン(ブ)-SH小畑-CTB本郷-SH小畑-WTB奥村と渡り、奥村が抜け出してトライ。ゴール成功。
【32分】帝40-0流
相手のドロップアウトのボールをキャッチし、連続攻撃。ラックからSH末が持ち出して前進。No8マクカラン(ブ)にパスし、マクカランが走り切ってトライ。ゴール成功。
【37分】帝45―0流
ペナルティキックをFB竹山が逆サイドにキックパス。WTB木村がキャッチしてトライ。
《BRIEF REVIEW》
いよいよ大学選手権が始まった。帝京はこの日の準々決勝からのスタート。対戦相手は関東リーグ戦3位の流通経済大学。前半、帝京は攻める時間帯も多くあるが、相手の堅い守りに阻まれ、またミスもあり、なかなか得点できない。相手の攻撃を受けてしまう場面も多いが、一人一人が体を張って防ぐ。試合が動いたのは10分。ラインアウトからFWで攻撃を仕掛け、相手ディフェンスが固まってきたところでBKへ展開。WTB木村が抜け出して先制トライを決める。22分にはスクラムから展開し、WTB奥村がトライ。これで波に乗るかと思われたが、その後も一進一退の展開が続く。相手の厳しいディフェンスでなかなかチャンスを作れない。それでも、相手の攻撃はしっかりと防ぎ、前半を12-0で折り返した。後半は、やや甘さのあった前半を反省して、帝京が厳しさを出していく。6分にラインアウト・モールを押し切って追加点を奪う。その後、相手に攻め込まれ、ピンチとなるが、CTB本郷、SH小畑らの好タックルで防ぐ。11分にはFB竹山が自陣からキックカウンターを仕掛け、そのまま走り切ってトライを奪い、19分にはスクラムからBKに展開してWTB奥村がこの日2つ目のトライを決める。攻められる時間帯もあるが、ラック、スクラムでFW陣が奮闘。相手ボールを奪う機会が増える。特に後半はスクラムでのターンオーバーが光り、さらに、BK陣も一人一人が前に出てタックルし、得点を与えない。32分にはSH末の仕掛けでチャンスを作り、パスを受けたNo8マクカラン(ブ)が抜け出してトライを奪う。37分にはペナルティキックを得たFB竹山からのキックパスが逆サイドのWTB木村に通り、トライ。ピンチはあるものの、最後まで相手にゴールラインを割らせなかった帝京が45-0で勝利し、1月2日の準決勝へと駒を進めた。
《POST MATCH INTERVIEW》
■岩出雅之監督
「結果としてベスト4に進出できてよかったと思います。今日の細かな反省をしっかりとして、次戦の天理大学さんとの試合では、うちの厳しさが出せるように頑張りたいと思います。今日の試合内容に関しては、いいところもあり、悪いところもあり、のんびりしているところもあり、少し気合いの入ってきたところもあり、今日のコンディションの中で学生なりに精一杯やってくれたのではないかと思います。実は対抗戦が終わってからの3週間で、ケガ人が出たり、コンディションを崩したりする選手が出たりして、今日、やっとメンバーが集まったというような状況でした。そんな状況の中でも、今日は『いい』とまでは言えないながらもシャットアウトゲームをやってくれましたので、そういう意味では『厳しさ』を出してくれたのかなと感じています。グラウンドだけでなく、ロッカールームやミーティングの雰囲気も変わってきていると感じますので、ここから本当の意味でスイッチが入ってくれるのではないかと期待しています。」
■バイスキャプテン・FB竹山晃暉(4年)
「まずは準決勝に進出でき、次につなげることができたということを、個人としてもチームとしても喜びたいと思います。今日は、うまくいったこと、うまくいかなかったことがはっきりと出たと思うので、自分たちが次にどう戦っていくかを確認して、次に向けていい準備をしていきたいと思います。大学選手権はノックアウトゲームで、負けたらそこで終わり。その気持ちを持って試合に臨みました。対抗戦とは違う空気感をチームが味わえたと思うので、今日の経験を次の試合に活かしていきたいと思います。ディフェンスに関しては、まず一対一でのタックルの精度を高めるということを、出ているメンバーが一人一人の責任としてやっていこうという意識でやり、その上でチームとしてのコミュニケーションもしっかりと取れたことが失点0につながったと思っています。次戦の天理大学さんは自分の出身地の奈良県の大学ということで、中学、高校と一緒に戦ってきた仲間やライバルたちもいますので楽しみです。自分がしっかりとリーダーシップをとって、みんなで戦いを楽しみたいと思っています。」
■集中力を切らさず、2トライで勝利に貢献・WTB木村朋也(2年)
「今日の試合、個人としてはあまり納得がいく内容ではありませんでした。軽いプレーがあったり、ゲインした後にノックオンがあったり、ミスボールを拾ってからのリアクションといったところ、あるいはまだまだ裏のスペースを見ていないとか、自分の前のスペースを見られていなかったので、そこは反省しなければいけないと感じています。チームとしては、前半はあまりよくありませんでしたが、後半の修正力や戦術理解の深め方という部分ではよかったと思います。後半最後のトライ(ペナルティキックをキックパスで受け取ってトライ)は、竹山くんと目が合ってアイコンタクトが取れたので、来るんじゃないかと思って準備していました。次の天理大学さんは力強いプレーヤーが多いので、チーム一丸となって体を張ることが大事。また、WTBとして自分がトライを取るという役目を果たすことによって、チームに勢いを与えることができると思うので、そういうプレーをしたいと思います。個人的には、天理大学さんには高校日本代表やU20日本代表で一緒にやっていたシオサイア・フィフィタ選手がいるので、対戦するのが楽しみです。彼はすごく強い選手で、おそらくキーマンの一人だと思いますが、なんとかチームの力で止めたいと思っています。」
■Aチームのレベルを経験し、さらなる努力を誓う・HO奥野翔太(1年)
「Aチームでの試合は初めてで緊張しましたが、自分のやるべきことをやろうと思って試合に臨みました。まだまだ気持ちの部分やフィジカルの面、スクラムでも通用しなかったので、そこは反省して、もっともっとレベルを上げていかないといけないと感じました。メンバーに選ばれたこと自体は、自分がこれまでしっかりと練習してきたことを認めていただいた結果だと思いますので、そこは自信にして、今日できたいい経験を今後につなげて、もっともっと高いレベルに挑戦できるように頑張りたいと思います。」
《PICK UP PLAYERS》
一対一の勝負が大好きなWTB
WTB 奥村 翔
OKUMURA KAKERU
医療技術学部スポーツ医療学科
伏見工業高校出身
身長179cm/体重80kg
■今日は久々の先発で、WTBでの出場でした。
「やはり試合で結果を出すにはもっと努力しないといけないと感じました。」
■2トライと、動きもよかったように見えました。
「トライについては、いい形でボールが回ってきて取れたと思いますが、自分の力で取り切ったというものではなかったので、もっと力をつけていきたいです。」
■WTBでプレーすることについて、自身ではどう感じていますか。
「SO、FBをやってきて、ボールを持ったときに裏のスペースにキックも蹴れたりしますし、『状況判断』の部分も評価されてのものだと思っています。」
■さらに、ボールを持って勝負できる強さもありますね。
「ありがとうございます。一対一は好きですし、走るのは得意としているところなので、そこをどんどん見せていけたらと思っています。」
■WTBをやることになったのは、いつから?
「先週です(笑)。」
■今日の試合全体を振り返って、どう捉えていますか。
「前半、流通経済大学さんのディフェンスが厳しく、自分たちのやろうとしていることができなくて苦戦したところがありました。後半は、修正して、FWを前に出して、さらにBKでも展開するという帝京の強みが出せたと思います。」
■次戦の天理大戦に向けて、意気込みをお願いします。
「天理大学さんのアタックは力強いですが、それに対して逃げないディフェンスをしていくこと、そしてアタック面ではもっと裏のスペースを見て、エリアをしっかりと取っていけるようにしていきたいです。」
SO、FBを経験し、さらにこの日はWTBとして出場。練習開始は先週からということだったが、センスのよさを発揮し、2トライ(+惜しいプレー)を見せてくれた。本人も語るように、一対一での勝負に強いだけでなく、局面に応じてキックも蹴ることができ、プレーの幅が広い。もともとSOだったので、当然、パススキルも高い。きっかけはコンディションが悪化した選手が多い中での選択肢拡大だったのかもしれないが、自身もチームも、結果としてそれ以上の収穫を得ることができたようだ。帝京にまた、新たな戦い方が加わった。
《COLUMN》
―― 二刀流 ――
昨今、特に今年一年は「二刀流」という言葉がはやったようです。
もともとは剣術において二本の刀を左右の手に同時に持って戦う流儀のこと。有名なのは、巌流島の戦いでも名高い宮本武蔵でしょう。彼の著書『五輪書』に「左手さしたることなし」とあるので、左手の刀は単なる予備的なものだとする説もあるようですが、いずれにしても、二本の刀をうまいこと使い分けて戦う、あるいは予備的にでももう一本の刀を抜いておいて、いつでも使えるようにしておくのが「二刀流」です。
ただ、このところよく言われる「二刀流」は、野球のメジャーリーガー大谷翔平選手による「投手と打者の兼務」を表現する言葉として使われるようになりました。そこから、一人の人が二つの異なる分野の仕事をこなし、一定の結果を出したときに「二刀流」と言われるようになっています。
たとえば、平昌オリンピックでアルペンスキースーパー大回転とスノーボードパラレル大回転の2種目で金メダルを獲得したチェコのエステル・レデツカ選手が「スキーとスノーボードの二刀流」などと言われたり、競馬の有馬記念に障害競走のスペシャリスト「オジュウチョウサン」が出走して「障害と平地の二刀流」と言われたりと(結果は勝てなかったようですが)、スポーツや勝負事の分野で「二刀流」が注目されているようです。
ラグビーでは、2つ(あるいはそれ以上)のポジションを兼務して、状況に応じて異なる仕事を担うケースは少なくありません。特に帝京では、複数ポジションができる選手がたくさんいます。この試合でWTBとして出場した奥村翔選手のように、FW内、BK内で複数ポジションができるのは、いまやごく普通のことですが、FWとBKを兼務するといった例も稀ではありません。
もちろん、1つのポジションに専念して、そのポジションでのプレーを深く極めるのもすばらしいことですが、二刀流(あるいはそれ以上)ができるのであれば、それに越したことはありません。
ラグビーは野球のポジションとは違い、ゲーム中に自由にポジションを変えることが可能です。別にPRの選手がSHの代わりにラックからボールを出してもいいわけです(SHがラックに巻き込まれたケースなどで見られます)し、HOの選手がキックを蹴ってもいいわけです(堀江翔太選手がよくやりますね)。
比較的、役割分担がはっきりしているラグビーのポジションですが、固定されているわけではなく、状況によっては別の役割を担うこともあるわけです。ポジションの個性はラグビーの大きな魅力の1つと言えますが、それがある程度、流動的で、「二刀流」も許されている点もまた大きな魅力の1つと言えるのではないでしょうか。「ポジション」というわかりやすい二刀流でなくても、状況に応じて、ほとんどの選手は他のポジションが担うべき仕事をこなしていますので、これも「隠れ二刀流」と言えるかもしれません。
さあ、いよいよ大学選手権も準決勝へと進みます。「隠れ二刀流」も含め、次の試合でも多くの選手が「二刀流」「三刀流」を発揮してくれると思いますが、彼らの頑張りは、私たちファンのワクワクを増やしてくれるのと同時に、チーム力という点でも大きな力を与えてくれます。
異なるポジションの仕事をそれぞれ難なくこなす選手たちを見るとき、その裏側に隠れている彼らの並々ならぬ努力に想いを馳せ、いいプレーには惜しみない拍手を贈っていただけたらうれしく思います。
《NEXT MATCH》
第55回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 準決勝 対天理大学(https://www.tu-rugby.com/)
1月2日(水) 秩父宮ラグビー場
14時10分キックオフ
過去の対戦成績:大学選手権3勝0敗
[天理大学の直近5戦]
11月3日 ○61-19大阪体育大学(関西大学Aリーグ)
11月10日 ○73-7関西学院大学(関西大学Aリーグ)
11月18日 ○48-19立命館大学(関西大学Aリーグ)
11月24日 ○70-12京都産業大学(関西大学Aリーグ)
12月22日 ○30-17大東文化大学(大学選手権準々決勝)
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
○帝京大学45-0流通経済大学●
《帝京大学》
[FW]
(1)岡本⇒長谷川(2)清水⇒奥野(3)當眞⇒淺岡(4)ロガヴァトゥ⇒藤田(5)秋山⇒菅原(6)今村⇒安田(7)中野(8)マクカラン(ブ)
[BK]
(9)小畑⇒末(10)北村(11)奥村(12)本郷(13)マクカラン(二)⇒西川(14)木村(15)竹山
《流通経済大学》※先発のみ
[FW]
(1)藤田(2)林(3)井上(4)山川(5)津嘉山(6)カペネ(7)坂本(8)積
[BK]
(9)北原(10)林(11)韓(12)平井(13)タカヤワ(14)中根(15)桑江
【前半】【得点経過】
【10分】帝5-0流
ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO北村-CTBマクカラン(二)-WTB木村と渡り、木村が走り切ってトライ。
【22分】帝12-0流
スクラムからSH小畑-FB竹山-WTB奥村と渡り、奥村が抜け出してトライ。ゴール成功。
【後半】【得点経過】
【6分】帝19-0流
ラインアウトからモールを押し切り、LOロガヴァトゥがトライ。ゴール成功。
【11分】帝26-0流
FB竹山が相手のキックをキャッチし、カウンターアタック。自陣から走り切ってトライ。ゴール成功。
【19分】帝33-0流
スクラムから展開。No8マクカラン(ブ)-SH小畑-CTB本郷-SH小畑-WTB奥村と渡り、奥村が抜け出してトライ。ゴール成功。
【32分】帝40-0流
相手のドロップアウトのボールをキャッチし、連続攻撃。ラックからSH末が持ち出して前進。No8マクカラン(ブ)にパスし、マクカランが走り切ってトライ。ゴール成功。
【37分】帝45―0流
ペナルティキックをFB竹山が逆サイドにキックパス。WTB木村がキャッチしてトライ。
《BRIEF REVIEW》
いよいよ大学選手権が始まった。帝京はこの日の準々決勝からのスタート。対戦相手は関東リーグ戦3位の流通経済大学。前半、帝京は攻める時間帯も多くあるが、相手の堅い守りに阻まれ、またミスもあり、なかなか得点できない。相手の攻撃を受けてしまう場面も多いが、一人一人が体を張って防ぐ。試合が動いたのは10分。ラインアウトからFWで攻撃を仕掛け、相手ディフェンスが固まってきたところでBKへ展開。WTB木村が抜け出して先制トライを決める。22分にはスクラムから展開し、WTB奥村がトライ。これで波に乗るかと思われたが、その後も一進一退の展開が続く。相手の厳しいディフェンスでなかなかチャンスを作れない。それでも、相手の攻撃はしっかりと防ぎ、前半を12-0で折り返した。後半は、やや甘さのあった前半を反省して、帝京が厳しさを出していく。6分にラインアウト・モールを押し切って追加点を奪う。その後、相手に攻め込まれ、ピンチとなるが、CTB本郷、SH小畑らの好タックルで防ぐ。11分にはFB竹山が自陣からキックカウンターを仕掛け、そのまま走り切ってトライを奪い、19分にはスクラムからBKに展開してWTB奥村がこの日2つ目のトライを決める。攻められる時間帯もあるが、ラック、スクラムでFW陣が奮闘。相手ボールを奪う機会が増える。特に後半はスクラムでのターンオーバーが光り、さらに、BK陣も一人一人が前に出てタックルし、得点を与えない。32分にはSH末の仕掛けでチャンスを作り、パスを受けたNo8マクカラン(ブ)が抜け出してトライを奪う。37分にはペナルティキックを得たFB竹山からのキックパスが逆サイドのWTB木村に通り、トライ。ピンチはあるものの、最後まで相手にゴールラインを割らせなかった帝京が45-0で勝利し、1月2日の準決勝へと駒を進めた。
《POST MATCH INTERVIEW》
■岩出雅之監督
「結果としてベスト4に進出できてよかったと思います。今日の細かな反省をしっかりとして、次戦の天理大学さんとの試合では、うちの厳しさが出せるように頑張りたいと思います。今日の試合内容に関しては、いいところもあり、悪いところもあり、のんびりしているところもあり、少し気合いの入ってきたところもあり、今日のコンディションの中で学生なりに精一杯やってくれたのではないかと思います。実は対抗戦が終わってからの3週間で、ケガ人が出たり、コンディションを崩したりする選手が出たりして、今日、やっとメンバーが集まったというような状況でした。そんな状況の中でも、今日は『いい』とまでは言えないながらもシャットアウトゲームをやってくれましたので、そういう意味では『厳しさ』を出してくれたのかなと感じています。グラウンドだけでなく、ロッカールームやミーティングの雰囲気も変わってきていると感じますので、ここから本当の意味でスイッチが入ってくれるのではないかと期待しています。」
■バイスキャプテン・FB竹山晃暉(4年)
「まずは準決勝に進出でき、次につなげることができたということを、個人としてもチームとしても喜びたいと思います。今日は、うまくいったこと、うまくいかなかったことがはっきりと出たと思うので、自分たちが次にどう戦っていくかを確認して、次に向けていい準備をしていきたいと思います。大学選手権はノックアウトゲームで、負けたらそこで終わり。その気持ちを持って試合に臨みました。対抗戦とは違う空気感をチームが味わえたと思うので、今日の経験を次の試合に活かしていきたいと思います。ディフェンスに関しては、まず一対一でのタックルの精度を高めるということを、出ているメンバーが一人一人の責任としてやっていこうという意識でやり、その上でチームとしてのコミュニケーションもしっかりと取れたことが失点0につながったと思っています。次戦の天理大学さんは自分の出身地の奈良県の大学ということで、中学、高校と一緒に戦ってきた仲間やライバルたちもいますので楽しみです。自分がしっかりとリーダーシップをとって、みんなで戦いを楽しみたいと思っています。」
■集中力を切らさず、2トライで勝利に貢献・WTB木村朋也(2年)
「今日の試合、個人としてはあまり納得がいく内容ではありませんでした。軽いプレーがあったり、ゲインした後にノックオンがあったり、ミスボールを拾ってからのリアクションといったところ、あるいはまだまだ裏のスペースを見ていないとか、自分の前のスペースを見られていなかったので、そこは反省しなければいけないと感じています。チームとしては、前半はあまりよくありませんでしたが、後半の修正力や戦術理解の深め方という部分ではよかったと思います。後半最後のトライ(ペナルティキックをキックパスで受け取ってトライ)は、竹山くんと目が合ってアイコンタクトが取れたので、来るんじゃないかと思って準備していました。次の天理大学さんは力強いプレーヤーが多いので、チーム一丸となって体を張ることが大事。また、WTBとして自分がトライを取るという役目を果たすことによって、チームに勢いを与えることができると思うので、そういうプレーをしたいと思います。個人的には、天理大学さんには高校日本代表やU20日本代表で一緒にやっていたシオサイア・フィフィタ選手がいるので、対戦するのが楽しみです。彼はすごく強い選手で、おそらくキーマンの一人だと思いますが、なんとかチームの力で止めたいと思っています。」
■Aチームのレベルを経験し、さらなる努力を誓う・HO奥野翔太(1年)
「Aチームでの試合は初めてで緊張しましたが、自分のやるべきことをやろうと思って試合に臨みました。まだまだ気持ちの部分やフィジカルの面、スクラムでも通用しなかったので、そこは反省して、もっともっとレベルを上げていかないといけないと感じました。メンバーに選ばれたこと自体は、自分がこれまでしっかりと練習してきたことを認めていただいた結果だと思いますので、そこは自信にして、今日できたいい経験を今後につなげて、もっともっと高いレベルに挑戦できるように頑張りたいと思います。」
《PICK UP PLAYERS》
一対一の勝負が大好きなWTB
WTB 奥村 翔
OKUMURA KAKERU
医療技術学部スポーツ医療学科
伏見工業高校出身
身長179cm/体重80kg
■今日は久々の先発で、WTBでの出場でした。
「やはり試合で結果を出すにはもっと努力しないといけないと感じました。」
■2トライと、動きもよかったように見えました。
「トライについては、いい形でボールが回ってきて取れたと思いますが、自分の力で取り切ったというものではなかったので、もっと力をつけていきたいです。」
■WTBでプレーすることについて、自身ではどう感じていますか。
「SO、FBをやってきて、ボールを持ったときに裏のスペースにキックも蹴れたりしますし、『状況判断』の部分も評価されてのものだと思っています。」
■さらに、ボールを持って勝負できる強さもありますね。
「ありがとうございます。一対一は好きですし、走るのは得意としているところなので、そこをどんどん見せていけたらと思っています。」
■WTBをやることになったのは、いつから?
「先週です(笑)。」
■今日の試合全体を振り返って、どう捉えていますか。
「前半、流通経済大学さんのディフェンスが厳しく、自分たちのやろうとしていることができなくて苦戦したところがありました。後半は、修正して、FWを前に出して、さらにBKでも展開するという帝京の強みが出せたと思います。」
■次戦の天理大戦に向けて、意気込みをお願いします。
「天理大学さんのアタックは力強いですが、それに対して逃げないディフェンスをしていくこと、そしてアタック面ではもっと裏のスペースを見て、エリアをしっかりと取っていけるようにしていきたいです。」
SO、FBを経験し、さらにこの日はWTBとして出場。練習開始は先週からということだったが、センスのよさを発揮し、2トライ(+惜しいプレー)を見せてくれた。本人も語るように、一対一での勝負に強いだけでなく、局面に応じてキックも蹴ることができ、プレーの幅が広い。もともとSOだったので、当然、パススキルも高い。きっかけはコンディションが悪化した選手が多い中での選択肢拡大だったのかもしれないが、自身もチームも、結果としてそれ以上の収穫を得ることができたようだ。帝京にまた、新たな戦い方が加わった。
《COLUMN》
―― 二刀流 ――
昨今、特に今年一年は「二刀流」という言葉がはやったようです。
もともとは剣術において二本の刀を左右の手に同時に持って戦う流儀のこと。有名なのは、巌流島の戦いでも名高い宮本武蔵でしょう。彼の著書『五輪書』に「左手さしたることなし」とあるので、左手の刀は単なる予備的なものだとする説もあるようですが、いずれにしても、二本の刀をうまいこと使い分けて戦う、あるいは予備的にでももう一本の刀を抜いておいて、いつでも使えるようにしておくのが「二刀流」です。
ただ、このところよく言われる「二刀流」は、野球のメジャーリーガー大谷翔平選手による「投手と打者の兼務」を表現する言葉として使われるようになりました。そこから、一人の人が二つの異なる分野の仕事をこなし、一定の結果を出したときに「二刀流」と言われるようになっています。
たとえば、平昌オリンピックでアルペンスキースーパー大回転とスノーボードパラレル大回転の2種目で金メダルを獲得したチェコのエステル・レデツカ選手が「スキーとスノーボードの二刀流」などと言われたり、競馬の有馬記念に障害競走のスペシャリスト「オジュウチョウサン」が出走して「障害と平地の二刀流」と言われたりと(結果は勝てなかったようですが)、スポーツや勝負事の分野で「二刀流」が注目されているようです。
ラグビーでは、2つ(あるいはそれ以上)のポジションを兼務して、状況に応じて異なる仕事を担うケースは少なくありません。特に帝京では、複数ポジションができる選手がたくさんいます。この試合でWTBとして出場した奥村翔選手のように、FW内、BK内で複数ポジションができるのは、いまやごく普通のことですが、FWとBKを兼務するといった例も稀ではありません。
もちろん、1つのポジションに専念して、そのポジションでのプレーを深く極めるのもすばらしいことですが、二刀流(あるいはそれ以上)ができるのであれば、それに越したことはありません。
ラグビーは野球のポジションとは違い、ゲーム中に自由にポジションを変えることが可能です。別にPRの選手がSHの代わりにラックからボールを出してもいいわけです(SHがラックに巻き込まれたケースなどで見られます)し、HOの選手がキックを蹴ってもいいわけです(堀江翔太選手がよくやりますね)。
比較的、役割分担がはっきりしているラグビーのポジションですが、固定されているわけではなく、状況によっては別の役割を担うこともあるわけです。ポジションの個性はラグビーの大きな魅力の1つと言えますが、それがある程度、流動的で、「二刀流」も許されている点もまた大きな魅力の1つと言えるのではないでしょうか。「ポジション」というわかりやすい二刀流でなくても、状況に応じて、ほとんどの選手は他のポジションが担うべき仕事をこなしていますので、これも「隠れ二刀流」と言えるかもしれません。
さあ、いよいよ大学選手権も準決勝へと進みます。「隠れ二刀流」も含め、次の試合でも多くの選手が「二刀流」「三刀流」を発揮してくれると思いますが、彼らの頑張りは、私たちファンのワクワクを増やしてくれるのと同時に、チーム力という点でも大きな力を与えてくれます。
異なるポジションの仕事をそれぞれ難なくこなす選手たちを見るとき、その裏側に隠れている彼らの並々ならぬ努力に想いを馳せ、いいプレーには惜しみない拍手を贈っていただけたらうれしく思います。
《NEXT MATCH》
第55回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 準決勝 対天理大学(https://www.tu-rugby.com/)
1月2日(水) 秩父宮ラグビー場
14時10分キックオフ
過去の対戦成績:大学選手権3勝0敗
[天理大学の直近5戦]
11月3日 ○61-19大阪体育大学(関西大学Aリーグ)
11月10日 ○73-7関西学院大学(関西大学Aリーグ)
11月18日 ○48-19立命館大学(関西大学Aリーグ)
11月24日 ○70-12京都産業大学(関西大学Aリーグ)
12月22日 ○30-17大東文化大学(大学選手権準々決勝)
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
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