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日本選手権大会1回戦・六甲ファイティングブル戦
2012/02/27
新戦力も活躍! 13トライで完勝
2月25日(土)・駒沢陸上競技場
○帝京大学 83-12 六甲ファイティングブル●
《帝京》
1吉田 2白⇒泉 3前田(龍)⇒辻井 4小瀧⇒木下 5マニング 6大和田 7松永(浩) 8河口 9滑川
10森田⇒中村(有) 11荒井⇒伊藤(拓) 12橋口⇒野田 13中村(亮) 14小野 15竹田
《六甲》※先発のみ
1島田 2小西 3田村 4大内 5打出 6鎌田 7タウモエピアウ 8板垣 9橋詰 10由良 11高山 12外村
13竹内 14内山 15加島
日本選手権1回戦の相手は、全国クラブ大会優勝の六甲ファイティングブル。クラブチームとはいえ、元トップリーガーを何人も擁し、社会人の老獪さも併せ持つ相手ゆえ油断は禁物。学生王者として、次につながるきっちりとしたゲームを披露したいところだ。
【前半戦】
前日から降り続いた冷たい雨は、キックオフ直前には上がったものの、グラウンドコンディションは悪く、ボールも滑りやすい。そうした状況の中でも、帝京が選んだ戦い方は「ボールと人を積極的に動かし、相手のスペースにボールを運ぶ」というもの。ボールも足元も滑りやすい状態だが、ミスを恐れず果敢にチャレンジし、次戦、ひいては次年度への成長につなげたい。
このあと、滑るボールに両チームとも手こずるが、試合が動いたのは開始6分。相手のキックボールに対してFB竹田がカウンターアタックを仕掛ける。LO小瀧がつないで前進。BK展開から小野がタックルを受けながらも粘って前へ出る。さらに継続してゴール前へ。
BKで前進し、当初確認した戦法どおり、積極的にボールと人を動かす。SH滑川から迷いなくBKへ展開。SO森田-CTB橋口-WTB荒井とつないでトライ。橋口と荒井の間に竹田が走り込み、相手ディフェンスを引き付けて、外側のWTBを余らせるというまさに教科書どおりのトライで先制した(7-0)。
このあと、一瞬の隙をつかれトライを献上するが(7-7)、これで目が覚めた帝京。ここから怒涛の攻めが始まる。特に、No8に入った1年生の河口が活躍。CTB中村(亮)の突破で作ったチャンスに、しっかりフォローに走った河口がつないでそのまま逆転トライ(14-7)。
直後のキックオフでは、河口がナイスキャッチ。その河口が起点となったラックから滑川が仕掛けて前進し、ディフェンスを引き付け、並走する森田へパスしてそのままトライ。26分には、橋口、HO白らの前進でできたラックからのボールを、絶妙なコースに走り込んだ河口が受け取りトライ。
まだまだ、攻撃の手は緩まない。竹田の突破から一度FWで前進し、BKへ展開。再度、竹田がライン参加し、外の人数を余らせ最後は大外の荒井へと渡りトライ。さらに、この日再三にわたって力強い突破を見せた中村(亮)をFW陣が後ろからフォロー。モールというよりも、まさに「人のかたまり」となって大きく前進。ラックになると、滑川が素早い球さばきで森田へパスし、トライ。
37分には、自陣から展開。荒井が抜群のアングルから走り込み、森田からのパスでラインブレイク。パスが相手にあたってボールがこぼれるものの、小野がうまく拾い上げてフォロー。最後は相手ディフェンスをかわしてトライ。
前半終了間際にも滑川の素早い反応からチャンスを作り、小野へ渡りトライ。前半だけで8トライ、54-7とほぼ試合の趨勢を決めた。
【後半戦】
前半は、ぬかるむグラウンドコンディションの中でもボールと人を積極的に動かす戦い方を見せ、大量リードで折り返し。
1トライを失ったものの、ディフェンスもおおむね安定。FW陣の献身的なタックルが光った。
攻撃面ではトライを量産した荒井、小野の両WTBのほかに、小瀧、河口の1年生FW、さらには力強い縦突破とともに、難しい位置からのコンバージョンキックをことごとく成功させた中村(亮)らの活躍が見られた。
後半もこうした戦い方を維持しつつ、リザーブに名を連ねる新戦力たちの活躍にも期待したい。
後半開始早々は、前半開始直後同様、守る時間帯に。やはり滑るボールと足元でお互いにミスが出る。ボールへの集中力を発揮し、こぼれ球に素早く反応した橋口も滑るボールに惜しくもノックオン。
直後、ディフェンスのコミュニケーションでミスが出て、トライを献上してしまう(54-12)。だが、ここで帝京はもう一度覚醒する。
相手のミスから得たボールをつないでBKへ展開。途中出場のCTB野田がディフェンスを引き付け、ラインに入っていた河口に好タイミングでパス。河口が前進し、最後は荒井へ渡って、後半最初のトライをあげる。
この日、3トライの荒井はこう振り返る。
「トライは自分の活躍というよりもチームがしっかりとボールをつなげたからです。
結果的に最後に自分のところに来たのでトライになりましたが、自分としてはチームのみんながしっかりやってくれた結果だと思っています。」
また、河口はこう振り返る。
「試合前、岩出監督から『気持ちを強く持って、思い切りやろう』とアドバイスをいただいていたので、とにかく思い切りよくやることだけを考えていました。」
帝京はこのあともトライを量産。守っても、途中出場のSO中村(有)、PR辻井、次期主将のHO泉、LO木下らが体を張って相手を止める。
後半20分過ぎからは、やや停滞する時間帯となるものの、終了間際にFL大和田がトライをあげ、
83-12で勝利。
試験期間等、長いブランクがあり、選手たちのコンディション、また雨によるグラウンドコンディションも万全ではない中、しっかりと結果を出した。
次戦はトップリーグ3強の一角・東芝ブレイブルーパスとの対戦となる。
帝京の強みを思い切りぶつけ強敵に真っ向から挑み、来季にも何かを残してほしい。
《試合後のインタビュー》
■岩出雅之監督「今日の試合は、大学選手権が終わってからかなりの日があいたこともありましたので、学生の心身のコンディションを含め、チームの状態をどれだけ上げていけるか、1回戦のゲーム内容が次の2回戦にしっかりとつながるように引き締まったゲームができるかを考え、気持ちを入れて臨みました。
ただ、学生たちの自己コントロールは非常にしっかりできていましたので、あまり心配はしていませんでしたし、その点での彼らの成長を感じました。
ゲームの内容は、いいところもありましたし、甘いところもありました。次のゲームにまたしっかりと挑戦できるように、この一週間、練習していきたいと思います。
六甲さんには2年前には1トライ、今日は2トライ取られました。練習環境を含め、いろいろとたいへんな中で、しっかりと準備されて今日の試合に臨まれたことに対して敬意を表します。また今後も対戦することになろうかと思いますが、そのときにはわれわれも今日の反省を生かして臨みたいと思います。
次戦は自分たちの強みを生かし、相手の強みを出させない戦い方は何なのかをしっかり考えて、チャレンジしたいと思います。」
■キャプテン・SO森田佳寿(4年)
「今日の試合が2回戦に向けて、また帝京大学の来シーズンの進化に向けて、さらに僕たち4年生にとっては大学を卒業して次のステージにもつながるようなゲーム、チャレンジしていくスタートゲームだと捉えて臨みました。今日はできる限りボールを動かし、自分たちも体を動かし、相手のスペースにボールを運ぼうと考えていましたが、できたところもあり、甘さが出てしまったところもあり、またディフェンスで軽さが出てしまったところもありました。今日の反省をしっかり練習で修正し、2回戦に臨みたいと思います。」
■力強い前進を何度も見せた・LO小瀧尚弘(1年)
「今日はティム(LOボンド)という大きな存在がいない中でのゲームでしたが、自分としてはティムに負けないようにチームに貢献しようと思って臨みました。まだフィットネスが十分でなく、サポートなどにも体が動けていないところが課題として出ましたので、そこを修正して次に臨みたいです。自分の力がトップリーグにどこまで通用するのか、思い切ってチャレンジしたいと思います。」
■チャンスメイクに、トライゲットに活躍・No8河口駿(1年)
「今日はチームとして『厳しさ』をテーマにして臨みました。また、正確さとリアクションをしっかりしようと言われていたので、自分もブレイクダウンでの厳しさ、正確さを心掛けてプレーしました。今日、コミュニケーションの部分でのミスがあったので、次戦に向けてそこをしっかり改善していきたいと思います。」
■久しぶりの先発出場も存在感十分・CTB橋口功(4年)
「今日は自分の持ち味である突破力、タックルをしっかり見せられたと思います。ただ、雨の影響もありミスが出てしまったので、天候に関係なくボールを継続できるようにして次戦に臨みたいです。トップリーグは体つきもパワーもすごいと思いますが、それに負けないタックル、力強いアタックをしたいです。後輩たちにも、まず来週の試合でチームとしてしっかりチャレンジして、そして勝って、春シーズンからどんどん成長していってほしいと思います。」
■きっちり走り切って3トライを奪取・WTB荒井基植(3年)
「トライはチームみんなで取ったもの。自分としてはもっとアタックでの接点のこだわりとか、オプションの精度を上げていきたいです。次の試合は、これまで自分がやってきた泥臭いプレー、強く前に出るディフェンスなどをしっかりやって、チャレンジしたいと思います。」
■球際の素早い反応が光った・WTB小野智寛(3年)
「今日はしっかり体を張れた部分も、まだまだ甘い部分も両方ありましたが、勝利という結果を得られたことは良かったと思います。今日はWTBでの出場でしたが、どのポジションでもできるというのが自分の持ち味なので、どこに入っても自分のイメージしたプレー、チームに求められるプレーができるように常に準備して臨んでいます。次戦は、今日出た課題をしっかり確認して臨みたいと思います。」
■Aチームでの公式戦初出場ながら大器の片鱗を見せた・CTB野田滉貴(2年)
「初めてのAチームでしたが、さほど緊張せず、いい感じでゲームに入ることができました。今日はタックルの部分で自分らしさを出そうと思っていましたが、去年、U-20で世界を経験できたことは自分にとって大きかったと思います。体の大きな外国人選手を相手に戦った経験があったので、今日も相手の体の大きさを意識せず、強い気持ちでプレーすることができました。ここからもっともっと成長して、Aチームで活躍できるプレーヤーになりたいです。次戦のトップリーグ相手の試合は、今日以上に厳しいと思いますが、その経験を必ず自分の成長につなげたいと思っています。」
■六甲ファイティングブル・FB加島諒典(帝京大学OB・昨年度主務)
「帝京大学と対戦してみて、改めて自分はこんなに高いレベルでラグビーをしていたんだと感じることができました。ひたむきなプレーが徹底されていましたし、在学中には気づかなかった点もあり、リスペクトできるところも再認識できました。これからも帝京大学ラグビー部を応援していきたいですし、またこうした舞台で対戦できるように、自分たちも頑張っていきたいと思います。」
《PICK UP PLAYERS》
次期キャプテンとしてチームを束ねる
HO 泉 敬(3年生)
IZUMI HIRO
1990年8月24日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
常翔学園高校出身
身長175㎝/体重97㎏/血液型A型
■まずは今日の試合を振り返っていかがでしたか。
「後半からの出場でしたが、やるべきことを自分の中で明確にして、全力でプレーしようと思って臨みました。」
■Aチームの公式戦初出場でしたが、緊張はありませんでしたか。
「緊張はほとんどなく、『エンジョイ』しようという思い、思い切りやろうという思いだけでした。」
■日本選手権そのものには、どのような気持ちで臨んでいるのでしょうか。
「4年生は4年間の集大成、あるいは就職先での次のステージにつなげるという意味合いがありますし、自分たち3年生以下は新チームのスタートという気持ちもあります。一人一人、このゲームが次にどこにつながっていくのかを考えながらやっています。」
■泉選手は次期キャプテンですが、いまどのような気持ちでしょうか。
「周りからはよく『プレッシャーがあるのではないか』と言われるのですが、いまはプレッシャー以上にやりがいを感じています。歴代のすばらしいキャプテンがいて、その中で自分が選ばれたことはとても誇りに思います。」
■キャプテンとしてどのようにチームを引っ張ろうと考えていますか。
「自分としてはハート、気持ちの部分で引っ張っていきたいです。
最前列で体を張り続けることが、自分のリーダーシップにもつながると思うので、声を出したり、泥臭いプレーでみんなを奮い立たせられればと思っています。」
■森田キャプテンから学んだことはどんなところでしょうか。
「この一年間、森田さんをはじめ、4年生のみなさんのすばらしい背中を見て、自分も成長させてもらったので、来年度は自分がそういう立場でみんなを成長させてあげられるような存在になりたいと思っています。」
■では、来週の試合に向けて、意気込みを聞かせてください。
「トップリーグにチャレンジできる機会はそう多くはないので、自分たちがどこまでできるのか楽しみです。自分としては、強みであるタックルとスクラムに磨きをかけて、思い切りチャレンジしたいと思います。」
中学・高校とずっとキャプテンを経験してきたという泉。これまでAチームでの出場経験こそ少ないが、裏を返せば、それでもキャプテンに選ばれるほどリーダーシップに優れた人物になる可能性を秘めている、ということだ。今後、経験を積んでいくことで、その懸念は払拭されていくことだろう。森田キャプテンも「泉なら大丈夫。先輩の僕から見ても尊敬できる人物です。」と太鼓判を押す。まずは次戦、トップリーグ相手にどんなプレーをしてくれるか楽しみだ。
《NEXT MATCH PREVIEW》
【3月4日(日)日本選手権2回戦 VS東芝ブレイブルーパス 熊谷ラグビー場 14時キックオフ】日本選手権2回戦の相手は、トップリーグの強豪、東芝ブレイブルーパス。昨年の日本選手権でも対戦し、大きな壁となって立ちはだかった相手だ。帝京としては失うものは何もない。学生代表として思い切りチャレンジしたい。こういったビッグゲームに挑戦する歴史が、帝京ラグビー部の新たな伝統となっていくに違いない。
(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
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