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UTY招待ラグビー 明治大学

UTY招待ラグビー 明治大学

2012/05/28

対抗戦のライバルに快勝。経験値を積み次なるステージへ


5月27日(日)・山梨中銀スタジアム
○帝京大学 59-26 明治大学●



《帝京》
1森川⇒徳永 2泉 3深村⇒浅堀 4今村⇒筬島 5マニング 6藤田⇒河口 7松永(浩) 8イラウア⇒坂手
9天野⇒岩本 10中村 11磯田 12荒井(基)⇒野田  13権⇒山崎 14小野⇒南藤 15竹田⇒木﨑

《明治》※先発のみ
1石原 2石沢 3山口(誠) 4比果 5友永 6前田 7竹内 8古屋 9山口(修) 10染山 11小澤 12幸重 13猿楽
14市原 15高平

春の第四戦は山梨中銀スタジアムでの招待試合、対抗戦グループのライバル、明治大学との対戦となった。現段階での互いの成長度合いが測れるという意味でも楽しみな一戦だ。積極的にチャレンジしつつ、自分たちの成長の証をしっかりと出し切りたい。また、帝京、明治ともに強力FWをもつチーム。互いに譲れないFW勝負は、大勢集まったスタンドのファンにとっても大きな見どころだ。

【前半戦】
試合前のアップ練習場。徐々にキャプテンの自覚も見え始めた泉を中心に、一人一人がしっかり声を出し、的確な指示を出し合う。戦いに向けた闘志の入り具合とともに、雰囲気はこの日も良さそうだ。

その気合いは、試合開始早々、プレーに表れる。SHとしての経験を積み上げ、FWをうまくコントロールする天野がまずは突破口を掴む。自ら仕掛けて大きく前進。惜しくもパスがつながらず、チャンスの芽を摘んだかに見えたが、相手に十分な威圧感を与える。この攻撃に呼応したCTB中村が突き刺さるタックル。フォローも早く、ターンオーバー。再び天野が素早くさばいて、左へ展開。WTB磯田まで回ると、そのまま走り切ってトライ。開始2分で先制点を挙げる。



その後も帝京ペースは続く。相手ボールのラインアウトを連続で奪取すると、No8イラウアのパワフルな走り、中村の切れ味鋭い走り、磯田のスピードなど、FW、BK一体となって前に出る。つかまってもラックから素早くボールを出し、再度、左へ展開。またも磯田が走り切って、連続トライを奪う。

攻め続ける帝京。ゴール前、モールで押し込み、ゴールラインを超えるが、惜しくもグラウンディングできずに5mスクラムになる。スクラムで反則を取られ、こチャンスを潰したかに見えたが、この日はラインアウトが圧巻。またも相手ボールのラインアウトを奪い、BKへ。中村が縦に仕掛けて、ラインブレイク。そのまま持ち込んでトライを挙げる(21-0)。



ゲームの主導権を完全に握った帝京の勢いは止まらない。相手の攻めもしっかりと防ぎ、ゲインラインを越えさせない。春当初から好調のLOマニングが相手ボールを奪うと、またも素早くBKへ。CTB権が相手ディフェンスをかわし、タッチライン際をうまく走り切って、左隅にトライ。

その後も、FWがモールを押し切る展開が続く。FL松永(浩)、PR森川は相手を圧倒する前進を見せる。BKに展開しても中村を軸に縦を突き、3トライを追加。結局、前半を47-7で折り返すこととなった。

気持ちの面でも、プレーの面でも、よさが出た前半。特にブレイクダウンでの力強さが目立った。後半も、前半同様のプレーを続けて圧倒したいところだ。



【後半戦】
後半も、開始早々は帝京ペース。U20日本代表から戻ったNo8河口、今日も力強いカウンターアタックを見せたFB竹田、センタークラッシュでしっかりと体を張り続けたCTB荒井(基)らが前進を図る。

5分、竹田、中村らの突破でチャンスを作ると、FWがモールで前進。出たボールをつなぎ、最後はイラウアがハンドオフで相手をかわしてトライを奪う。





このあたりからやや流れが変わり始めるが、それでも帝京ペースは変わらない。互いに停滞する時間帯が続くが、それでも帝京はしっかりと我慢し続ける。相手にゴールラインを突破されてもグラウンディングさせない粘りのディフェンスを見せる。後半の中盤に入り、下級生を中心に新戦力を続々と投入させる。徳永、浅堀、坂手、岩本らルーキー陣も臆することなく、体を張り続ける。途中ややアンラッキーな部分もありトライを献上するも、この経験は間違いなく、秋以降、また将来の帝京ラグビーを見据えた場合貴重な財産となるだろう。

相手は前半と打って変わり攻め立てるが、試合の趨勢は揺るがず、終了間際にはCTB野田が力強く相手ディフェンスを切り裂いてトライを奪い、59-26で勝利を飾ることとなった。

前半はほぼ理想的な展開でゲームを進めた帝京。後半はやや停滞した場面もあったが、個々にとっては今後につながる経験を得られたゲームであったといえるだろう。そしてチームにとっても、緩やかながら、確実に上昇曲線を描き前進していることを実証する試合となった。




《試合後のインタビュー》

■岩出雅之監督
「今日はたいへん多くの方々にご観戦いただき、ありがとうございました。また、こうしたすばらしい環境でプレーをさせていただいたUTYテレビ山梨、山梨県ラグビー協会、大会関係者の皆様、ならびにキッズエスコートに参加してくださったお子さんと保護者の方々、そして最後まで厳しい戦いをしてくださった明治大学ラグビー部の皆様に厚く御礼申し上げます。
ゲームに関しては、前半はとてもいい流れでできたと思いますが、後半はやや甘いところが出てしまうという、先週の試合とはちょうど逆の展開になりました。ただ、まだまだ経験の浅い選手もたくさん出ていますし、そうした選手にとってはとてもいい経験になったのではないかと考えています。
この時期に対抗戦のライバル校と対戦できることは、相手はどこまで準備ができていて、自分たちの準備はそれと比べてどうなのかというすり合わせができるという意味でも、とても意義のあることだと思います。今日はこうした結果を得ることができましたが、これが秋への保証になるわけではありませんから、今日よかったことはしっかりと自分たちの自信にして、足りなかったところはもう一度、真摯に取り組んでいってほしいと思います。普段の練習では感じられず、試合でしか感じられないことがあると思いますが、今日感じたことを刺激として、今後に生かしてほしいと思います。ゲームの流れをよくするのも悪くするのも自分たち次第だということも実感できたと思いますので、学生たちはこれからもしっかりと自己成長に努めてくれることと思います。」

■キャプテン・HO泉敬(4年)


「今日は前回のゲームの反省を踏まえて、前半からしっかり気持ちを入れてやっていこうと言って臨みました。前半はいいゲームができたと思いますが、後半、やや失速してしまいました。後半は自分たちのミスがあったり、セットプレーが安定し切れなかったところに原因があったように思います。セットプレーでは、スクラムにフォーカスしてやっていたのですが、試合中、PR陣とずっと話をしながら修正をかけることができ、だんだんいいスクラムが組めるようになりました。まだ1、2年の若いPR陣なので、今日の経験を糧に、また徐々にいいスクラムが組めるようになったことを自信にしてほしいと思います。今はどんな相手でも常に自分との戦いなので、まず自分のベストを出し、チャレンジし続け、前半からしっかりと出し切ることを心掛けてやっていきたいと思います。」

■フィールドプレーで活躍・PR森川由起乙(2年)
「スクラムを一番大きな課題として臨みました。明治大学さんとスクラムを組めたことは、とてもいい経験になりました。この春シーズンでこうしたいい経験ができたことはとてもよかったと思います。ただ特に前半、スクラムが安定せず、ゲーム展開では帝京有利でしたが、セットプレーについては自分の中ではまったく納得していません。後半は、細かくコンパクトに組むことを意識して、前半よりはいいスクラムが組めたかなと思います。パワーで負けていた部分もあったので、自分としてはもっとパワーアップのための体づくりをしっかりやっていきたいです。」

■スクラム戦から得た経験を今後の糧に・PR深村亮太(1年)
「今日はとにかくスクラムに集中しようと思って臨みました。スクラムは一本ずつ組むごとによくなっていったので、そこはよかったと思います。スクラムについては、他のチームに絶対に負けたくないので、これからもっとしっかり練習して強くなっていきたいです。」

■BKをうまくコントロールした・WTB小野智寛(4年)
「個人的には『誠実なプレーをしよう』と心掛けて臨みました。前半の最初にちょっとアクシデントがあり、自分として満足のいくプレーができなかったのが悔しいです。どんな状態でも自分のベストのプレーができるようにしたいです。チームとしては、後半、もっと辛抱強くプレーすることが大事だと感じました。BKもゲーム運びの部分で十分にできていなかったところがあったので、そこを修正して次に向けてしっかりと準備をしたいと思います。」

■スクラムでしっかり修正し自信を得た・PR徳永一斗(1年)
「後半、自分が出たらスクラムで流れを変えたいと思って臨みました。ただ、出てすぐのスクラムでプレッシャーをかけられてしまい、悔しいです。ですが、そのあとのスクラムからは、自分としてはしっかり組めていたと思います。運動量も足りなかったので、次はスクラムだけでなく、ボールを持って前に出るプレーやディフェンスの面でもいいプレーができるように頑張りたいと思います。」

■短時間ながら、Aチームの圧力を実感・FL坂手淳史(1年)
「初めてAチームの試合に出場し、とてもいい経験になりました。高校生とは全然違う圧力を体感できたので、今後に生かしていきたいと思います。U20日本代表から一昨日帰ってきたのですが、そこでも外国人選手の接点での圧力の違いなどを感じることができたので、今後、その感じたことをどう生かして、自分の強みをどう出していくかというところにフォーカスしてやっていきたいと思います。今の時点での自分の強みは、タックル力。そのタックルをしっかり出していきたいです。今日はFLとしての出場でしたが、HOとしてもやっていきたいと思って取り組んでいます。今後はスクラムを強化して、FLの運動量を持つHOになりたいと思っています。」

■一発のタックルで落ち着きを取り戻した・SH岩本吉樹(1年)
「後半、流れがちょっとよくなかったので、自分がその流れを変えたいと思って臨みました。Aチームの試合はこれが初めてで緊張もありましたが、出るからには全力でやってやろうと思っていました。入って一発目のタックルがうまく決まったので、そこからパスも落ち着いて放れました。自分の強みはタックルと仕掛けて抜け出すランプレー。『SHなのにいいタックルするなあ』と思われるプレーをしたいです。Aチームのゲームはテンポも流れも早くて、それについて行こうと硬くなったところもあったので、次はもっとリラックスして、自分のできるプレーを思い切ってやりたいと思います。また、もっとアタックも積極的に行って、自分から得点を取っていくプレーでチームに貢献したいと思います。」

■Aチーム初出場の試合に万全の状態で臨めた・WTB木﨑翼(2年)
「初めてのAチームの試合でしたが、出たら思い切ってやろうと気持ちも作っていて、体の調子もよかったので、自分としては万全な状態で出ることができました。チームとしては『激しさ』をテーマに、個人としてはボールを持ったら思い切り勝負しようと考えて臨みました。ただ、今日はあまりボールにからむシーンを作れませんでした。次の試合はもっと積極的にボールをもらいに行って、勝負する場面を作るという気持ちを継続して臨みたいです。自分の強みは、一対一の局面で抜くところ。その強みを出して、Aチームに定着できるように、一日一日、ひたむきに頑張りたいと思います。」


《PICK UP PLAYERS》
運動量とタックルで「帝京の13番」としての誇りを体現
CTB 権裕人(2年生)



KWON YUIN
1992年4月9日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
大阪朝鮮高校出身
身長182㎝/体重96㎏/血液型B型


■今日は縦に力強く前進するシーンもあり、いいプレーがたくさんありました。
「ありがとうございます。自分は前半だけの出場でしたが、チーム全体の雰囲気もよく、自分自身もアタック面はよかったです。でも、まだまだボールを触る回数が少ないので、もっといっぱいボールに触って、攻撃の軸になれるようにしたいです。」

■今日はどんなテーマで臨んだのでしょうか。
「いつものとおり、運動量とタックルです。まずはタックルから。『激しさをプレーに出し切る』、自分を前に出して、相手に突き刺さっていく勢いを出して戦う、というテーマで臨みました。」

■いいタックルも再三ありました。
「ありがとうございます。ただ、前半の最後に、自分の判断ミスで取られてしまい、そこは反省点です。それ以外も、できて当たり前の部分もありましたから、もっと高いところを見据えてやっていきたいです。」

■今日は権選手に限らず、みんなアップのときから気合いが入っていたように見えました。
「アップのときから、上級生、下級生関係なく、よく声が出ていたと思います。試合中もしっかり声が出ていて、いい雰囲気でできたと思います。」

■ここ数戦、Aチームの先発メンバーとして出場していますが、気持ちの面ではどんなことに気を配っていますか。
「帝京の13番はいろいろな人が背負っていますが、その中で自分がファーストジャージの13番をつけて出場することの重みをしっかり感じて、軽いプレーはせず、練習でやってきたことを試合で出せるように、誠実に、まじめにプレーしようと思って臨んでいます。」

■試合経験も増えて、自信もだいぶついてきたのではないですか。
「そうですね。ただ、もっとチームに信頼してもらえるようなプレーをいっぱいして、対抗戦、大学選手権でも13番をつけて出られるように頑張りたいです。」

■試合が終わって、次へと臨むときのリフレッシュ法、気持ちの切り替えという部分で何かやっていることはありますか。
「自分はわりとオンとオフの切り替えがうまくできるほうなので、特別何かをやっているということはないですね。趣味というのも特にないですし。寮の4階にソファーがあるのですが、そこでみんなとしゃべることくらいでしょうか。みんなとしゃべると、すごく気持ちがリフレッシュできます。」

■今後、さらに強化していきたいところはどこでしょうか。
「やはり、自分が毎試合テーマにしている運動量とタックルですね。ここをもっともっと磨いていきたいと思っています。」

今年はCTBのポジション争いも激戦。周囲の期待も高まる中、本人は自分のペースを崩すことなく、しっかりと成長を重ねている。ここにきてAチームでの試合経験も増え、自信にもつながっているようだ。常に口にするテーマは「運動量とタックル」。このこだわりも頼もしい。「攻撃の軸になりたい」とも語るが、それはすなわちチームの進化の証ともなる。今後も帝京の得点力アップを担う、躍動感あふれるプレーを見せてくれそうだ。



《NEXT MATCH PREVIEW》
【6月3日(日)関東春季大会・第3戦 VS流通経済大学 百草グラウンド 13時キックオフ】

次戦は、春季大会第3戦。相手は、昨季リーグ戦グループ優勝の流通経済大学。ここまでの成長を確認できるいい対戦となることだろう。結果はもちろん、いいチャレンジをして、さらなる進化につなげるゲームにしたい。



(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

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