REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
春季オープン戦 法政大学

春季オープン戦 法政大学

2012/06/25

若手中心も、全員で勝ち取った勝利


6月24日(日)・百草グラウンド
○帝京大学 60-0 法政大学●



《帝京》
1猿渡⇒前田 2森川⇒徳永 3深村⇒出渕 4今村 5小瀧 6藤田(哲)⇒伊藤(哲) 7松永⇒木下
8大和田⇒藤田(哲) 9荒井(康)⇒前原  10森谷 11磯田⇒柳 12荒井(基)⇒野田 13前原⇒菅谷
14南藤 15小野(寛)

《法政》※先発のみ
1大河原 2小池 3浅岡 4新谷 5小山 6武者 7高橋 8堀 9中村 10加藤 11井上 12猪村 13岡村
14野々上 15森谷

春シーズンも残すところあと2試合。今回の相手は法政大学。昨年度はリーグ戦5位と振るわなかったが、大学選手権1回戦では天理大学と善戦したチームだ。だが、何より敵は己自身にあり。対戦相手をリスペクトしつつ、自分たちのやってきたことを出し切りたい。

ただ、この日はケガで主力選手を大幅に欠く布陣となった。メンバーには、キャプテン泉をはじめ、マニング、イラウア、李、天野、中村、権、竹田といった名前がない。しかし、メンバーに入った選手にとっては大きなチャンス。層の厚さを確認できる、引き締まったゲームを期待しよう。

【前半戦】
試合前の円陣では、ゲームキャプテンFB小野(寛)から「集中力を高めて、コミュニケーションをしっかり取ろう。激しく前に出よう」と声がかかる。

試合開始直後、帝京は自らのミスでピンチを招く。だがペナルティで自陣深く攻め込まれるが、ここはしっかりと守る。相手ボールのラインアウトをことごとく奪取し、ピンチをしのぐ。その後、No8大和田らの突進で地域を挽回するが、得点には至らない。

試合が動いたのは8分。カウンターアタックからWTB磯田が前進。ラックでターンオーバーされるも、鋭い出足でチャージに成功。そのボールをHO森川が拾ってトライ。

その後も大和田、FB小野、LO小瀧らが再三の突破を見せるなど、帝京ペースで試合が進むが、仕留め切れない。そんな状況を打破したのは、この日も抜群の動きを見せた1年生HB団。ラックからSH荒井(康)が前に出てSO森谷へパス。森谷が相手ディフェンスを引きつけると、ぽっかりとあいた内側に磯田が切れ込んでトライ(14-0)。





直後、力強さの増したFL藤田(哲)の突破でチャンスを作ると、しっかりつないだ小野がトライ。さらにその直後にも、成長著しいCTB前原の前進でチャンスを作り、またしても森谷が相手ディフェンスをしっかりと引きつけてからパス。小野が飛び込んで追加点を奪う(26-0)。森谷は1年生とは思えない積極的かつ冷静な動きで、ゲームを支配する。

前半終了間際には、その森谷がインゴールへと深く蹴り込み、WTBを走らせる。あと一歩のシーンを作るが、相手の戻りが一瞬早く、ドロップアウト。ここで前半終了となった。

序盤は攻め込まれる時間帯もあったが、それも徐々に修正。攻め込みながらもターンオーバーされるなど、やや詰めの甘さは出たものの、おおむね帝京ペースでゲームは進んだ。後半はさらに決定力を発揮したいところ。



【後半戦】
ハーフタイム、岩出監督からは「相手を抜いてのロングゲインを狙うよりも、一人一人、もっと強く当たっていくことを心掛けよう」との指示が出る。激しく体をぶつけていくという原点に立ち返ろうという確認がなされた。

後半も開始直後から帝京ペース。激しいプレッシャーで相手の反則を誘うと、ゴール前5mでのマイボール・ラインアウトを獲得。しっかりキープしてモールを押し込み、持ち出した森川がトライを奪う。

さらに、WTB菅谷、FL松永、森谷らが前進を図る。ラックから展開し、磯田まで回ってトライ。直後、CTB荒井(基)の突破からチャンスを作る。一度、ボールを奪われるが、FL伊藤(哲)のタックルでターンオーバー。荒井(康)がすばやくさばいて森川へパス。そのまま森川が持ち込んでトライ。

後半はメンバーも大幅にチェンジしたこともあり、最初は大きく突破したあとにつかまってターンオーバーされる場面もあったが、逆に好タックルからボールを奪い返すシーンも数多く見られた。

その後も帝京は好タックルを連発。CTBに入った野田のタックルでターンオーバー。野田はさらに突破も図り、チャンスメイク。伊藤の前進でゴール前に迫ると、PR前田がつないでそのままトライ。



34分には小野の突破から、パスを受けた菅谷が相手を引きずりながらトライ。終了間際には、スクラムから木下が飛び込んでトライと、最後まで集中力を切らすことなく攻め続け、60-0でノーサイドとなった。

主力メンバーを大幅に欠きながらも、出場したメンバーが自分たちのラグビーをやり切った帝京。常に全員で戦う意識が層の厚さを支えているようだ。各自が自分の持ち味を精一杯出し切った好ゲームとなった。



 

《試合後のインタビュー》

■岩出雅之監督
「今日のゲームもそうですが、チームは今、『自分で考え、自分で行動しよう』ということに力を入れています。基本の動きはありますが、なるべく型にはめるようなことはしないで、各自が臨機応変に動けるようになることを期待しています。これは試合の中だけでなく、練習でも指示を待ち、与えられたことで動きたすのでなく、主体的、能動的に自分で考えて行動してほしいからです。チーム練習だけに頼るのではなく、自分で考えて必要な準備を自らしてほしい。
もう一つ、『頑張りの質を変えよう』ということも言っています。自分の成長とともに、仲間を孤独にさせない力をつける努力をしていく。これも、試合中に限らず、練習でも、私生活でも同じようにやってほしいと思っています。
春シーズンも残すところあと一週間、ゲームも残り一試合となりました。限られた時間ではありますが、一人一人が自ら考えて行動することでまだまだ伸びる余地があります。選手たちには春シーズンを気持ちよく終えることができるよう、ラスト一週間、一日一日を大切過ごしてほしい。特にしっかりとコンディションを整えて、ケガなく春を締めくくりたいですね。」

■ゲームキャプテン・FB小野寛智(4年)


「今日は自分たちの準備してきたことをしっかりと出していこうと言って臨みました。これまで自分はバイスキャプテンとしてチームを見てきましたが、今日は泉キャプテンが不在ということもあり、ウォームアップやゲームの入りのところから、普段とは違った視点でチームを見ることができました。各選手一人一人が集中してゲームに臨んでくれたおかげで、自分自身もいい形で集中したプレーができたと思います。内容もいいゲームだったと思いますが、特に1年生ハーフ団がエリアを意識したゲーム運びをしてくれたのがよかったです。また、最後まで油断せずに自分たちのラグビーができたことはとてもよかったと思います。次は、春シーズンのラストゲーム。一週間しっかりと集中して準備して、これまで同様、自分たちのやるべきラグビーをやり切りたいと思います。」

■久しぶりのゲームもスクラムの安定に貢献・PR猿渡康雄(4年)
「ケガが治って久しぶりのゲームということで、しっかり気持ちを作って臨みました。最初のスクラムでは下に落ちてしまいましたが、本数を重ねるにつれて相手にプレッシャーをかけることができるようになり、前半の最後くらいには自分としてもいいスクラムが組めるようになったと思います。FW第一列は若い選手が多いので、練習から自分たち4年生が引っ張って、スクラムを強くしなければと思ってやっています。スクラムは帝京の強みであり、PRとしての見せ場でもあるので、もっと安定した力強いスクラムを組みたいです。次もスクラムで圧倒して、いいボールをBKに供給できるように頑張ります。」

■豊富な運動量で3トライの大活躍・HO森川由起乙(2年)


「今日は久しぶりのHOでしたが、ゲームにはセットプレー、特にスクラムを意識して臨みました。前半の前半は自分の甘さもあっていいスクラムが組めていなかったのですが、それ以降はだいぶ安定して組めるようになり、コントロールできるようになりました。これまで1番(PR)をやってきたおかげで、相手へのプレッシャーの掛け方の部分で学んだことも多く、今日もそれが生かせたので1番でいい経験ができたと思っています。トライについては、今日はFWがみんなよく走っていたので、そのおかげで最後にボールが回ってきてトライが取れました。天候が暑くしんどい試合でしたが、みんな集中してよく走ってくれたと思います。」

■臆することなく思い切った仕掛けも見せた・SH荒井康植(1年)
「今日は自分のできることを最大限発揮しようと思っていました。敵は法政大学さんではなく、自分自身だと思ってやりました。フェーズを重ねていく中で相手のラックへのプレッシャーが強くなって、自分が球出しを手こずってしまう場面があったので、もっと球さばきを早くすべきだったと反省しています。また、もっと高いレベルでプレーできるように、パスの精度、キックの精度を高めていきたいです。周りに頼ってしまうところもあったので、もっとFWにいい指示ができるように頑張って練習したいと思います。」

■センタークラッシュで体を張り続けた・CTB荒井基植(4年)
「法政大学さんは今までの相手とはディフェンスのシステムが違ったので、若いハーフ団は序盤、少し戸惑ったかもしれません。そこで自分がもっとリードしていければよかったのですが、自分が相手のディフェンスにつかまる形になってしまい、あまり攻撃がうまく機能しませんでした。ただ、流れの中、アンストラクチャーな状態でみんなが考えて動けていたところはよかったと思います。春シーズン残り1試合ですが、しっかりコンディションを整えて、夏、秋に向けていいチャレンジができるようにしていきたいです。」

■Aチーム初出場ながら後半セットプレーの安定に寄与した・HO前田篤志(2年)
「今日は初めてのAチームでの試合でしたが、自分のベストを出し切ろうと思って臨みました。周りの先輩方のサポートもあって、不安なく臨め、ラインアウトも安定させることができましたし、全体にいいプレーができたと思います。自分の強みは泥臭く、ひたむきにプレーするところ。次もやってきたことをしっかりと出し切って、春シーズンの集大成にしたいと思います。」

■4年生として自覚をもってFW陣を引っ張る・PR出渕賢史(4年)
「今、チームとしてスクラムの安定の部分は課題の一つなので、自分が出たときには安定した球出しをして、相手に少しでもプレッシャーをかけられるようにと思ってやっています。今日は比較的よかったと思います。自分はここぞというときのインパクトプレーヤーとして出させてもらっていると思っていますので、自分の強みであるスクラムの部分でアピールできるようにもっともっと練習していきたいです。PRの4年生として猿渡らと、少しでも周りを楽にさせてあげられるように、しっかり周りを引っ張ってあげられるようにということを常に意識しています。次も自分が体を張って、チームを支えることを意識してやっていきたいです。」

■攻守ともに快足は健在・WTB菅谷優(4年)


「今シーズン初のAチームの試合ということもあって、最初は流れに乗るのに少し苦労したのですが、時間とともに馴染めて、自分らしプレーが少しずつできていたと思います。アタックはもう走るだけなので、とにかくディフェンスの部分でしっかりとコミュニケーションを取ってやろうと思っていました。タックルは自分が意識して取り組んできたことの一つですが、今日はできた部分とミスをした部分と両方あったので、これから修正して、タックル成功率100%を目指して頑張りたいと思います。」
 

《PICK UP PLAYERS》

努力する楽しさを覚え、日々成長を続ける
SO 森谷圭介(1年生)



MORIYA KEISUKE
1994年3月4日生まれ
文学部史学科
正智深谷高校出身
身長186㎝/体重86㎏

■今日はどんなテーマを掲げて臨んだのでしょうか。
「今日も仕掛けとタックルを自分の中でのテーマとして挙げて臨みました。」

■ゲームを振り返っての感想を聞かせてください。
「法政大学さんのディフェンスが前回の東海大学さんのディフェンスと違ったので、それに対応するのに時間がかかってしまい、CTBの先輩に迷惑をかけてしまいました。序盤は自分のためにいい流れが作れなかったので、そこを早く対応できるように冷静にできたらよかったと思います。」

■途中からは動きもよくなったように見えましたが、何か修正を加えたのでしょうか。
「前半はパスのことばかり考えてしまい、自分の前があいていても見ることができませんでした。後半は考えすぎずに思い切ってやろうと思って入って、前があいたら仕掛けていこうと決めていました。少しでもゲインが切れたのはよかったと思いますが、もっと立ってつなぐことができればさらによかったと思います。」

■普段から意識していることはどんなことでしょうか。
「まずはやはり、仕掛けとタックルですね。仕掛けの部分は自分の武器というか、持ち味として強みにしていきたいと思っています。中村亮土さんや森田佳寿さんのような上手な仕掛けができるように、プレーやビデオを見て盗みたいと思っています。タックルはAチームで出ている責任もあるので、いつも心掛けてやっています。また、常に考えてプレーすることも意識しています。今、相手がこういう動きをしているから、自分はこう動こうと考えたり、場面場面で一番いい選択ができるように考えていきたいと思っています。」

■キックも大きな強みの一つですね。
「キックはまだまだ安定感が足りないので、安定して飛距離が出せるようにしたいです。また、落とす場所の精度を高めたり、キックの種類を考えたりすることもしっかりとやっていきたいと思っています。」

■帝京大学に入って、高校時代と変わったところはありますか。
「人間性の部分と言いますか、ラグビーに対する考え方が変わったと思います。今考えると、高校時代は努力することから逃げていたところがあったように思います。ちょっと頑張ったら『もうこのくらいでいいかな』と思ってしまうことがありました。帝京大学に入ってからは、まだまだですが、逃げずに努力できるようになりました。」

■どうしてそんなふうに変われたのでしょうか。
「入学当初から監督やコーチに自分の足りないところを指摘していただいていました。最初は『怒られている』と感じていたのですが、『これは自分の直すべきところを教えてくださっているんだ』と気づいて、そこを直した結果、Aチームでプレーできるようになり、さらにもっと高いレベルを目指したいと思うようになりました。今はまだ試されている段階だと思っていますが、もっと上を目指して、Aチームとして出場している責任感と重みを感じながら努力していきたいと思っています。」

■今後への意気込みを聞かせてください。
「今日は入りがよくなくて、前が見えていなかったり、CTBの人たちに迷惑をかけてしまったのですが、次はもっと冷静に、力強く、前を突破することを狙っていきたいですし、パスで周りを生かすことも覚えていきたいです。また、帝京はディフェンス、タックルが強みのチームなので、そこも意識してやっていきたいです。」

前回、初めてのAチームでの試合で見事に期待に応え、この日もいい動きを見せた。自らの仕掛けで突破もできるし、仕掛けながら相手ディフェンスを十分に引きつけてのすばやいパスもできる。また吸収力も高いので、監督、コーチからのアドバイスをすぐに結果につなげる力がある。さらに「努力することの楽しさ」を知った今、可能性はさらに広がる。岩出監督は「1年生だから無理はさせたくないですし、これからの選手」と敢えて過大評価は避けるが、サイズもあり楽しみなプレーヤーだ。今季の帝京の『Xファクター』となるかも知れない。


《NEXT MATCH PREVIEW》
【7月1日(日)春季オープン戦 VS慶應義塾大学 百草グラウンド 14時半キックオフ】

次戦は、慶應義塾大学とのオープン戦、春シーズン最後の試合となる。春の集大成として、自分たちのラグビーをやり切って、成長の証を確認できるゲームとしたい。

(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
 

特集一覧