REPORT
レポート
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第47回全国大学選手権大会・準決勝
2011/01/02
階段はあと一つ…、いよいよ決勝の舞台へ!
1月2日・国立競技場○帝京大学 36対22 東海大学●
《出場メンバー》
①吉田(康) ②森(太)⇒小幡 ③西村⇒坪井 ④菅原⇒李 ⑤ボンド ⑥ツイ ⑦吉田(光) ⑧柴田 ⑨滑川 ⑩森田 ⑪富永 ⑫南橋 ⑬黒川 ⑭鬼海 ⑮竹田(宜)
大学選手権に入り、1戦ごとに力を発揮し始めた帝京。準決勝の相手は昨年、決勝戦で対戦し、1点差勝利という好ゲームを演じた東海大学。雪辱を期する相手に対し、それ以上の気持ちで挑む覚悟が、帝京フィフティーンにはあった。
【前半戦】
決戦直前。この日も帝京はウォーミングアップから気合い十分。バイスキャプテン富永らが大きな声を出し、チームを鼓舞する。スタートからいい形で試合に入っていけそうだ。
正月決戦が開始される。キックオフ直後、FLツイからFL吉田(光)へとつないで帝京FWは前進。さらにCTB南橋の突破などで敵陣ゴール前へと運ぶ。だが、気合いの空回りか、国立競技場の異様な雰囲気か、ミスと反則を繰り返してしまう。
帝京は攻め込みながらチャンスを逃してしまうと、一転、攻め込まれる展開に。だが、ここは相手の強力FWを使ったモール攻撃もしっかり耐える。先制点を許すも、帝京フィフティーンは少しもあわてない。簡単なミスとペナルティが起点であり、けっして崩された失点ではないことを確認すると、基本の、前に出るディフェンスを徹底する。ハイパントのキックチェイスから、WTB鬼海が日本代表マイケル・リーチに突き刺さる好タックルを見せる。
今度は攻め上がる番だ。相手の攻撃をしっかりと止め、ターンオーバーすると、シザースで切れ込んだCTB黒川が大きくゲイン。さらに、鬼海、LO菅原、SO森田らの突破で敵陣ゴール前まで攻め込む。ここでペナルティをもらうと迷わずスクラムを選択。コラプシングの反則を何度ももらうが、その都度、スクラムを選択。FWでのこだわりを見せる。
その後も攻め続け、30分にはWTB富永が突破して作ったチャンスから、ツイ⇒森田とつないで、反撃ののろしとなるトライ!(7-7)。さらに38分には、敵陣10mライン付近のラインアウトからモールを押し込み、抜け出したツイが相手ディフェンスを振り切って、左隅ギリギリのところにトライ。タッチライン際の非常に難しい位置からのコンバージョンを森田が決め、前半は14-7で折り返すこととなった。
趨勢はこの時点ではっきりと帝京に移っていることが感じ取れる、前半のラスト10分であった。
【後半戦】
前半は激しい攻防ながら、ロースコアの展開。だが、明らかに力の差は明らかだ。帝京としては、このまま後半は攻撃をしっかりとスコアにつなげたいところだ。
そして後半が再開される。キックオフ早々、PR西村の好タックルで相手の攻撃の芽を摘む。4分にはペナルティキックで3点を返されるが、直後の6分には森田の仕掛けで前進すると、さらに菅原が前進。鬼海の相手ディフェンスを引き付ける好プレーから、森⇒吉田(光)とつないでトライ(21-10)。
帝京ペースが加速する。スコアこそ一時21-22と逆転を許すも、インゴールで集結する帝京フィフティーンの表情は微塵も揺るがない。苦しい時間帯のはずだが、帝京フィフティーンの顔はまだまだ余裕の表情。ミスは忘れて、次のプレーだけに集中する。
相手ゴール前まで攻め込んだ20分には、相手ディフェンスの穴を冷静に見ていたSH滑川が抜け出し、すぐさま逆転に成功(28-22)。
ペナルティゴールで3点追加した後の25分には、No8柴田、黒川らの渾身のタックルでターンオーバー。ラックから外に回すと富永が関東・慶應戦に続くトライ! この難しい角度のコンバージョンも森田がきっちりと決めて36-22。
その後、帝京は残り時間を楽しむかのように巧みに時間を使う。森田の突破に南橋の前進でトライ寸前までもち込む。菅原のキックチャージ、柴田の前進、黒川の好タックルなど、最後まで集中を切らさず失点を防ぎ、ついに36-22でノーサイドとなった。いうまでもなく完勝だ。
昨年の決勝戦の再現は、攻守に優る帝京がきっちりと勝利。強力FWと多彩なBKを有する東海に引導を渡す勝利は、決勝戦に向けて大きな弾みとなった。
一週間後、帝京フィフティーンは再び、国立の場に戻って来る。帝京のメンバー、そして全ての部員、関係者、ファンはこの言葉を胸に秘め、最後の決戦に臨むことだろう。
『信じて根を張れ! 楕円のボールは信じるヤツの前に落ちてくる』。
《試合後のインタビュー》
□岩出雅之監督
「みなさまの応援のおかげで、3年連続で大学選手権の決勝の舞台に立てることになりました。まずはそのことを喜び、そして、感謝したいと思います。
今日は東海大学さんの1年前の決勝戦での悔しさと、私たちが対抗戦で教えてもらった厳しさ、悔しさとの戦いという、非常にタフなゲームになるだろうと思っていました。メンタル面で受け身にならないよう、気持ちを高めて臨みました。立ち上がりは少し硬さも見られましたが、その後は相手にトライを取られても集中力を切らさない粘り強さを見せてくれました。
対抗戦でのチャレンジを経たことで、大学選手権に入ってやっと去年のチームと違った、今年のチームの味が出てきたように思います。選手たちもそうした実感を得てきたようで、いい形で決勝戦に臨めます。
私たちは、昨年優勝させていただいたことでやっと礎ができたかなというチームです。けっして横綱相撲が取れるようなチームではありませんから、しっかりと気を引き締めて決勝戦に臨みたいと思います。終わった後、行動せずに後悔するのではなく、思い切って行動していろいろな思いが生まれるようなゲームにしたいと考えています。
残り1試合、今日以上に粘り強い、今シーズンの集大成となるゲームをお見せしたいと思います。今日の東海大学さん、そして慶應大学さん、関東学院大学さんの思いも一緒に決勝で出し切って、彼らの分まで頑張りたいと思いますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。」
□キャプテン・FL 吉田光治郎(4年生)
「試合前は『国立の舞台に立てる喜びを感じながら、チャレンジャーとしてぶつかろう』『仲間のために、そして支えてくれているすべての人たちのために、自分たちのラグビーをしてしっかり結果を出そう』と言って臨みました。攻められているときでも、すべて自分たちのミスからだったので、『ミスをなくせば大丈夫』とチームで言い合っていました。ミスは引き摺らないで捨ててしまって、前向きに目の前のプレーに集中するという点で意思統一できて、チームが一つにまとまることができたと思います。
来週の80分間のために、この1年、そして4年生はこの4年間やってきたという思いがあるので、全員のその思いを胸に80分間を楽しんで、実力を出し切って、最後にみんなで笑いたいと思います」
□激しいプレーで前に出続けた・LO 菅原貴広(4年生)
「うれしいという気持ちと、ようやくここに来たなという両方の気持ちがあります。今日も前回同様、アタックのシーンが多く、自分がトライまでの道筋を作るための泥臭いプレーができればと思って頑張りました。スクラムは今年組んできた相手で一番強かったと思います。ST(スクラムトライ)を取りたかったのですが、そうはいきませんでした。次に勝てばV2。帝京大学ラグビー部の新たな歴史を僕らの代で作れると思うとすごくワクワクします。次も今日同様、ゲームを楽しみたいと思います」
□ディフェンスでもアタックでもチームに貢献・No8 柴田一昂(4年生)
「東海大学さんは去年の悔しさをぶつけてくるはずなので、それに負けない気持ちでやろうと準備してきました。また、いままでにないFWの圧力を受けるだろうと想定して、それに負けないブレイクダウンを意識してやれたことに自分たちの成長を感じます。次の決勝戦では、対抗戦で負けた悔しさを忘れず、ずっと支えてくれている130人の部員たち、スタッフのみなさん、ファンのみなさんのためにも絶対に勝って、全員で喜びを分かち合いたいです。自分たちはディフェンスのチームなので、ディフェンスから勝負をかけていきたいと思います」
□冷静な判断で自らもトライを奪取・SH 滑川剛人(3年生)
「決勝戦に進めるのは非常にうれしいし、楽しみです。今日は帝京のFWと東海さんのFWとどちらが強いかという勝負になるだろうと思っていました。最後はどちらが勝ちたい気持ちが強いかで決まるだろうと思っていたので、気持ちで負けないように頑張りました。帝京はFWが強いですが、BKも強いんです。FW一辺倒では疲れてしまいますから、FW、BK一体となった攻撃を繰り返すことで両方の体力がうまく回復できるように心掛けました。ペナルティが多くなるとそういったことはできなくなるので、決勝ではペナルティの少ない戦いをしたいと思います」
□再三の仕掛けでラインブレイク連発・SO 森田佳寿(3年生・ゲームMVP)
「試合前はエリアマネジメントをしっかりやろうということでした。東海大学さんはFWに自信をもっていて、個人で前に出る力のある選手が多いので、エリアを取って少しでもうちのFWを前に出すことを考えました。前半、風下ながらFWの頑張りもあって敵陣深く攻め込む時間帯を長く作れたのはよかったです。後半は風上なので、キックで敵陣へというプランを立て、ミスもありましたが、おおむねできたのではないかと思っています。リードされた場面でも、みんな焦ることなく、ミスしないで敵陣に入ろうという意思統一ができました。
次戦はもう一度タックル、ディフェンスから帝京のラグビーをしっかりやっていきたいと思います」
□果敢なプレーでチャレンジし続けた・FB 竹田宜純(1年生)
「今日は国立の雰囲気に緊張してしまい自分のプレーができず、ミスばかりで先輩たちに迷惑をかけてしまいました。次は頑張ります。この1週間、ディフェンスとキック、基本プレーの練習をしっかりやり直して決勝に臨みたいと思います!」
□後半にFW陣をリード・PR 坪井秀龍(4年生)
「自分は後半からなので、出たときにはインパクトのあるプレーをしようと思っていました。その点はかなりできたのではないかと思っています。みんな乗っていると言いますか、頂点しか見ていないので、そういう意識がいい形での追加点につながったと思います。4年生になって初めてわかったのですが、少しでも長くこのチームでやりたいという思いが強くなっています。出ていない4年生も同じ思いだとすごく感じますし、彼らの分も含めて、できる限り長くこのチームでラグビーをしたいと思っています」
《PICK UP PLAYERS》
タックルとランで相手を翻弄CTB 黒川勝平(4年生)
KUROKAWA SHOHEI
1988年9月7日生まれ
経済学部経済学科
長崎南山高校出身
身長175cm/体重77kg/血液型A型
ニックネーム/クロ、得意なプレー/ラン、試合前に聴く音楽/10FEET、郷土自慢/カステラ(長崎県)
■今日の試合を振り返ってください。
「チームとしてはFWが押されるシーンがいくつかあって、BKでなんとかしようと話していました。そのFWもきつい時間帯にしっかり頑張ってくれて、東海大学さんの厳しい攻守を上回ったところがあったので、BKとしてはアタックもディフェンスも楽にやらせてもらえました」
■前半、大きくゲインするプレーを見せましたね。
「あれはいいパスをもらえたからです。トライまで行きたかったのですが、そうはさせてもらえませんでした」
■かたや、強烈なタックルを受けるシーンもありましたが。
「あれは自分のミスです。本当は飛ばすパスだったのを、間違えて取ってしまいました」
■今日はいつもよりBKへの展開が多かった気がしますが、意図していたことなのでしょうか。
「FWがしっかりと前に出てくれたので、その分、BKでの攻めが有効にできたと思います。相手のBKラインに穴があったので、そこを狙って攻めることができました」
■ディフェンスの穴というのは、やっていて見えたわけですね。
「はい。ギャップが見えたので、そこをつけばゲインできそうだと思って攻めました」
■今日の勝利で日本選手権の出場権も得ました。
「このチームのみんなと一日でも長く一緒にラグビーがしたいので、そのために一戦一戦勝っていきたいです」
■オフのときはどんな過ごし方をしているのでしょうか。
「買い物とか、映画を観に行ったりとかですね。最近はハリーポッターを観ました(笑)」
■卒業後の進路は。
「中国電力でラグビーを続けます」
■いよいよ次は決勝戦です。意気込みを聞かせてください。
「帝京ラグビーはタックルから。しっかり前に出るディフェンスをして、チーム一丸となってタックルしたいと思います。あと残り一つ、みなさんの声が大きな力になりますので、応援よろしくお願いします」
キレのあるアタックと鋭いディフェンスでBKの大きなアクセントの役割を果たしている。岩出監督が言う「今年のチームの味」を担う一人であることは間違いない。対抗戦では控えに回ることも多かったが、秘めたる能力が選手権に入って一気に開花した。決勝でもBK攻撃のカギを握る存在になりそうだ。
《NEXT MATCH PREVIEW》
【1月9日(日)大学選手権決勝 VS早稲田大学 国立競技場14時キックオフ】ついに決勝の舞台となった。相手は11月の対抗戦では敗れている早稲田大学。残りあと1試合。心を一つにして全てを懸ける選手たちを、我々も精一杯応援しよう。ENJOYそしてTEAM WORK。決戦の時は、もうそこまで迫ってきた。
(写真/志賀由佳)
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