REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
関東大学対抗戦A・第3戦 日本体育大学戦

関東大学対抗戦A・第3戦 日本体育大学戦

2012/10/11

『課題と成長を実感できた好ゲーム』


10月8日(月・祝)・熊谷ラグビー場
○帝京大学(3勝0敗) 78-5 日本体育大学●(0勝3敗)


《帝京大学》
[FW]①森川 ②坂手⇒猿渡 ③出渕⇒古賀 ④小瀧 ⑤マニング⇒今村 ⑥イラウア⇒大和田 ⑦松永(浩) ⑧李
[BK]⑨流⇒荒井(康) ⑩森谷⇒金田 ⑪南藤 ⑫荒井(基) ⑬権⇒徳富 ⑭小野(寛) ⑮竹田

《日本体育大学》※先発のみ
[FW]①城 ②西原 ③芳浦 ④石丸 ⑤菊原 ⑥餘野 ⑦藤田 ⑧大谷
[BK]⑨堀川 ⑩道下 ⑪藤原 ⑫栗原 ⑬田島 ⑭谷口 ⑮片山


  【前半】  
対抗戦第3戦は日本体育大学との一戦。泉キャプテン、CTB中村(亮)、WTB磯田らをケガで欠くメンバー構成となったことで、バイスキャプテンの小野をはじめとした4年生たちがいかにリーダーシップを発揮するか、そして出場する選手一人一人がいかに自立できるかが試されるゲームとなった。

試合開始直後は、堅さからかややミスが目立つ展開。ノックオンなどのハンドリングエラーで、なかなか決定機を作れない。攻め込んでのラインアウトも相手に取られてしまう。積極的に前に出てくる相手ディフェンスが、帝京の前進を阻む。

だが、けっして帝京に焦る様子はなかった。11分にSO森谷の仕掛けからチャンスを作ってCTB権がトライを奪うと、その後は着実に加点していく。

ミスとペナルティから攻め込まれるシーンもあったが、こぼれたボールを初出場のルーキーHO坂手が拾い上げて一気に前進。ピンチを一瞬にしてチャンスに変えるプレーでスタンドを沸かせる。さらに相手の前に出るディフェンスに対しては、SH流、SO森谷の仕掛け、あるいはFL松永(浩)らがチャンスと見るや後ろから走り込んで突破を図る。

ハンドリングミスはいくつか出るものの、セットプレーは安定し、スクラムでは38分にスクラムトライをあげるなど完全に制圧。33-0で前半を折り返した。

前半の40分は持ち前のFWの推進力を基に、SH流―SO森谷の若いHB団が伸び伸びとした動きでゲームを作っている印象であった。後半も引き続き、今後の成長につながるゲームを展開したいところだ。


  【得点経過】  
【11分】帝7-0日
ハーフウェイ付近からの帝京ボールのラインアウトをクリーンキャッチ。SH流からパスを受けたSO森谷が仕掛けて突破。大きく前進し、CTB権へとパス。そのまま走り切ってトライ。ゴール成功。

【15分】帝12-0日
帝京ボールのスクラムで、相手がコラプシングの反則。タッチキックでゴール前約10m付近の帝京ボールのラインアウトになる。きれいにキャッチし、モールを形成。そのままモールを押し込んで、HO坂手がトライ。

【28分】帝19-0日
帝京ボールのラインアウトからBKへ展開。SO森谷が仕掛けて抜け出し、CTB権へとパス。権が相手ディフェンスを振り切ってトライ。ゴール成功。

【31分】帝26-0日
相手のペナルティからSH流がクイックスタート。SO森谷へ渡り、ショートパントを蹴る。CTB権、CTB荒井(基)、WTB南藤の3人が追うが、ボールはイレギュラーなバウンドに。だが、うまく権が拾ってそのままトライ。ゴール成功。

【38分】帝33-0日
ゴール前5m付近で相手がオフサイドの反則。帝京はスクラムを選択する。そのままスクラムを押し切って、No8李がトライ。ゴール成功。

 


  【後半】  
後半も攻撃の手を緩めず加点を重ねる帝京。相手のディフェンスは相変わらず素早く前に出てくるので、インサイドCTBのところで接点になるケースが多くなる。CTB荒井(基)が当たるか、パスをするかの判断を瞬時に行うことになる。だが、荒井(基)―権のCTB陣もしっかりと連携を図る。相手の出足が速いため、荒井(基)からパスを受けるCTB権へのプレッシャーもきつくなるが、権はタップパスのようなすばやいパスをWTBへと送り、チャンスを作る。

19分には、今シーズンの対抗戦初失点を喫するが、インゴールではこの日のゲームキャプテンWTB小野(寛)がきっちりとチームを引き締める。「次に同じシチュエーションになったら、しっかり確認しあい、止めきろう!」と声がかかる。実際、このあと何度か似たシーンを迎えることになるが、しっかりと守り切る。

後半から出場の選手たちも活躍。中でもSH荒井(康)、SO金田の1年生HB団は思い切りの良い動きを魅せる。33分、相手ボールをターンオーバーすると、荒井(康)がすばやく拾って自ら前に出てそのままトライ。44分にはBKで左右に揺さぶる連続展開から、最後は金田がディフェンスが手薄になった大外WTB小野(寛)へと長いパスを送りトライを演出した。

状況を見て、すばやく的確に判断するという点において、前後半ともに若いHB団がしっかりと役目を果たしていたのが印象的であった。また、この日は磯田ら快足WTBを欠く布陣ながら、いつもどおり積極的にBKへと展開して、相手ディフェンスの手薄なところを見つけてそこにボールを送るという攻撃を続けた。スピードよりも、むしろ判断と力強さでBKが前に出るという形を見せた。

もちろん、その前提としてFWの力強さがある。セットプレーの安定と接点での強さで相手にプレッシャーを与え、BK陣が働きやすい環境を作った。FL松永はもちろんのこと、LO小瀧、NO8李らが下働きを厭わないプレーでチームを引き締め、そして、機を見てFW陣で前進。まさにFW、BK一体の帝京らしい攻撃を披露し続けた。

キャプテン不在の中でも一人一人の自覚と責任感が見られ、さらに下級生たちが経験値の獲得だけでなく、戦力としてしっかりと機能したゲームだった。

次は対抗戦の第一関門・慶應義塾大学との一戦を迎える。一歩ずつ、着実に階段を上っていく今季のチームの、ステップアップとなる一戦となるに違いない。


  【得点経過】  
【2分】帝40-0日
SO森谷の好タッチキックで22mラインの奥まで攻め込んでの帝京ボールのラインアウト。モールを形成し前進。モールが崩れるが、コラプシングのアドバンテージを得る。ラック状態から再度FWで前進し、最後はNo8李が抜け出してトライ。ゴール成功。

【6分】帝45-0日
相手ボールのラインアウトをキャッチ。FL大和田が大きく前進。FB竹田-CTB権と渡りラックに。SH流-SO森谷と渡り、森谷がディフェンスの手薄な大外へロングパス。No8李が受け取り、トライ。

【15分】帝52-0日
相手のキックのボールをWTB小野(寛)がカウンターアタック。キレのあるステップで抜け出し、前進。つかまってラックになるも、SH流のすばやいパスアウトでSO森谷へと渡り、そのまま走り切ってトライ。ゴール成功。

【19分】帝52-5日
自陣5mで相手ボールのラインアウト。モールを形成される。押し返したかのように見えたが、すれ違う形で前に出られ、止め切れずにトライを奪われる。

【25分】帝57-5日
相手の攻撃をLO小瀧がボールに絡みながら止める。モール・アンプレイアブルとなり、ハーフウェイと敵陣10mラインとの中間付近で帝京ボールのスクラム。SH流が仕掛けて前進。つかまるもすぐに左へBK展開。WTB南藤へと渡り、トライ。

【33分】帝64-5日
敵陣22mラインのやや手前で相手ボールのスクラム。ラックでターンオーバーし、SH荒井(康)が拾い、抜け出してトライ。ゴール成功。

【38分】帝71-5日
相手ボールのスクラムを押してターンオーバー。LO小瀧が抜け出し、前進。ラックになるも、SH荒井(康)-SO金田-CTB荒井(基)と渡って、荒井(基)が前進。タックルされるが、倒れずに立ってFB竹田につなぐ。そのまま竹田がトライ。ゴール成功。

【44分】帝78-5日
自陣10m付近でのマイボール・スクラムから展開。左右に揺さぶりながらラックを連取し、前進。最後はSO金田がディフェンスが手薄になった外へと大きくパス。WTB小野(寛)へと渡ってトライ。ゴール成功。


 
 

《AFTER MATCH SAY》

■岩出雅之監督
「対抗戦3戦目ということで、選手たちはプレーの質がよくなっているのと同時にいろいろな欲も出てくる時期なので、今日はその欲をいい形で出してほしいと思いながら送り出しました。ゲーム内容は、『手放しでよかった』とは言えませんが、今日の内容うんぬんというよりは、次からの糧にしたいと思います。次戦以降、より厳しい相手との対戦の中で、これまで以上に気持ちの部分に火がついてくれるだろうと思っています。
最後になりましたが、日本体育大学の選手、関係者の皆様、今日はありがとうございました。」

■ゲームキャプテン・WTB小野寛智(4年)
「今日は泉キャプテンが不在ということで、一人一人がリーダーシップをとって、どれだけ自分で気持ちを上げていけるか、また相手に対してどれだけ挑戦していけるかということをみんなに言って試合に臨みました。一人一人がもっと厳しくやるべきこと、自分たちが目指している目標に向かって、挑戦していかなければならないことが今日の試合でよりはっきりしたのと思うので、反省すべき点はきちんと反省して、次の試合に生かしていきたいです。シーズンが深まっていく中で、一つ一つのチャンスを大切にし、勝利へとつなげていけるように、これからも日々の練習に励んでいきたいと思います。」

■好タイミングで斜めに切れ込むプレーを再三見せた・FL松永浩平(4年)
「今日はミスが出てもいらいらしたりせずに、セルフコントロールをして、気持ちの部分で試合の流れをいかに変えられるか、ということを意識していました。これは一人でできることではないので、泉がいない中、一人一人がリーダーシップを取ってどこまでまとまれるか、頑張れるかという話を試合前にもしていました。声を出すという部分はよかったのですが、少しミスが出てしまい、流れに乗り切れなかったところは反省点です。次はまずミスをしないこと、厳しいプレーをすることが課題になると思います。」

■すばやい球出しで何度もチャンスをつくった・SH流大(2年)
「スクラムで相手のSHを止める場面が何度か作れましたが、あれはFWが頑張ってくれたおかげなので、自分としては当たり前のことをやっただけだと思っています。今日は自分としては、ラインをコントロールする際の判断と、自分自身のタックルをテーマにして臨んだのですが、もっと自分からタックルに行ったり、FWが頑張っている中で自分ももっと前に行くプレーをしたかったです。持ち味であるテンポを生かしつつ、タックルでチームを鼓舞するとともに、冷静にゲームをコントロールできるSHになっていきたいと思います。」

■久々の対抗戦出場も冷静なプレーでチームを牽引・WTB南藤辰馬(4年)
「今日は久々のAチームの試合でしたが、特に緊張することもなく、平常心で臨むことができました。自分ではどういうプレーを期待されているかわかっているつもりなので、常にそれを意識して、考えてプレーしています。次からは対戦相手もさらに厳しくなっていくので、一つのミスが勝敗を分けかねません。ミスをしないように練習から厳しく取り組んで、目標に向かって進んでいきたいと思います。」

■BK陣の成長に手応えを感じた・FB竹田宜純(3年)
「ミスもあったのですが、前を見てのコミュニケーションだったり、あいているところにボールを運ぶといった、いまやろうとしていることができたと思えるゲームでした。もちろん、修正ポイントはあるのですが、やろうとしていることができたというところは成長できているように感じています。次からはもっとタイトな試合になるので、一つのミスが勝敗を分けます。さらにベーシックスキルを上げて、一つ一つのプレーを大切にやっていきたいと思います。」

■後半スクラムを押し込み何度もターンオーバーに成功・PR猿渡康雄(4年)
「今シーズン初の対抗戦出場でしたが、自分ができる仕事をしっかりやろうと思って臨みました。また、FW第一列は若いメンバーも多いので、4年生として自分がいかに引っ張っていくか、そして後半のインパクトプレーヤーとしてどういうプレーを心掛ければいいかを考えてゲームに入りました。スクラムでしっかりとプレッシャーを掛けられたところはよかったと思います。いただいたチャンスをしっかりと生かせるように、また次への成長に生かせるように、一つ一つのプレーに対して手を抜いたりせず、全力でやったつもりです。今後も4年生としてチームを引っ張る存在になっていきたいと思います。」

■前に出るプレーで何度もスタンドを沸かせた・FL大和田立(3年)
「今日は『次の試合に向けて成長できるゲームをしよう』というテーマで臨みました。これまでやってきたことをどれだけ出せるか、そして次に向けて進化、ステップアップできるような試合にしようと思っていました。何度か前に出るシーンを作れたのはよかったのです。次に向けて、まずは自分のやるべきことをやって、さらに上級生としてチームを引っ張れる存在、そしてゲームではチャンスメーカーとなれる存在になっていきたいと思います。」

■自分のやるべきことにフォーカスしチームに貢献・CTB徳富大樹(4年)
「とにかくタックルだけだと思っていたので、厳しいタックルをしようと考えて試合に臨みました。タックルの回数はけっこう行けたと思います。自分はCTB、WTB、FBといったいろいろなポジションをやらせていただいていますが、タックルに関してはどのポジションでも変わらないので、違和感なくやれています。今日はタックルのバインドの部分に加え、キックチェイスの確認などの反省点も出ましたので、次に向けてそこも修正していきたいと思います。」


《PICK UP PLAYERS!》

走れるHOとして急成長中!
HO 坂手淳史(1年生)
SAKATE ATSUSHI

1993年6月21日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
京都成章高校出身
身長180㎝/体重98㎏

■対抗戦初出場でしたが、どんな気持ちで試合に臨んだのでしょうか。
「特に緊張はしなかったです。やっとチャンスをいただけたという気持ちで、自分のやるべきことをやろうと思っていたので、初出場ということもプラスに考えることができました。」

■試合を振り返っての感想を聞かせてください。
「自分の持っている力を100%出せたとは言えないゲームでした。納得できていない、ちょっと悔しさの残るゲームになってしまいました。自分の持ち味はタックルなのですが、もっともっと出せたはずなので、そこは納得していません。」

■そんなゲームでも納得できる部分もあったのではないでしょうか。
「ラインアウトのスローイングは自分の中では大きな課題なのですが、前半の入りのところ以外はほぼ納得のいくスローイングができました。前半の最初は気持ちの弱さが出てしまっていいところに投げられなかったので、そこは反省です。スキルは成長できていても、心の部分でプレーが安定しないというのは、自分はまだまだ甘いなと思いました。」

■入学してから取り組んだHOというポジションですが、対抗戦のゲームを経験してどう感じましたか。
「泉キャプテンの代役ということではなく、自分のできるプレーをしようと考えてやりました。スクラムに関しては問題なくできたと思いますが、ラインアウトでは前半の中盤くらいからは自分のペースで投げられるようになって、気持ちも楽になったのですが、それが最初からできるようにしたいです。」

■その気持ちの部分は今日の経験を次に生かせそうですね。
「はい。いい経験をさせていただいたと思います。」

■自分自身の最大のアピールポイントはどこですか。
「ディフェンスです。FW第一列ではHOが一番走るポジションですが、そのHOの中でも自分はさらに走れるプレーヤーだと思っていますし、その走る中での一発一発のタックル力は誰にも負けないと自負しています。」

■そこはFW第三列をやっていた強みですね。
「そうですね。第三列出身なので、どれだけ走れるかが自分の強みだと思っています。第三列の動きができるHOですね。この部分が出せれば、試合でもチームに貢献できると思うので、しっかり走りたいと思います。」

■いま一番強化している部分はどこですか。
「セットプレーです。スクラム、ラインアウト、キックオフの3つのうち、特にスクラムとラインアウトはHOとしての最重要ポイントなので、そこを一番強化しています。

■次戦以降への意気込みを聞かせてください。
「次は今日よりも必ずいいプレーができるように練習して、泉キャプテンが抜けたときに自分がそこをしっかりと埋められるか、またキャプテンが戻ってきたときでも自分がキャプテンを越えるつもりで挑戦していきたいと思います。」

HOに転向してまだ間もないため発展途上ではあるが、「走力」という自身の強みをしっかりと把握し、それを発揮しようとする姿勢は今後の大きな成長を期待させてくれる。どっしりとした物腰。話し相手の眼をしっかり見据えて対応する立ち振る舞いは、それがそのままプレーにも現れているように感じる。岩出監督は「まだまだ先行投資の段階ですが、必ずや将来のエースになってくれるでしょう」と語るように、長い目でその成長を見守っていきたい。

 

《NEXT MATCH!》

関東大学対抗戦第4戦 対慶應義塾大学(http://www.kurfc.com/
10月21日(日) 秩父宮ラグビー場 14時キックオフ

過去の対戦成績:関東大学対抗戦14試合5勝8敗1分(大学選手権3勝0敗)
[慶應義塾大学の直近5戦]
8月19日 ●12対38早稲田大○(夏季練習試合)
8月23日 ○33対12関西学院大●(夏季練習試合)
8月28日 ●26対45東海大○(夏季練習試合)
9月16日 ●12対34筑波大○(関東大学対抗戦)
10月7日 ○36対15立教大●(関東大学対抗戦)

 

(文/木村俊太、写真/志賀由佳)

特集一覧