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関東大学対抗戦・第7戦

関東大学対抗戦・第7戦

2010/12/04

対抗戦最終戦、3連敗の中に垣い間見た選手権への礎

12月4日(土)・秩父宮ラグビー場
●帝京大学20対35慶應義塾大学○
〔対抗戦・通算成績4勝3敗〕

《出場メンバー》
①吉田(康)②森(太)③西村⇒坪井④李⇒菅原⑤ボンド⑥ツイ⑦吉田(光)⑧柴田⑨滑川⑩森田⑪小野⑫南橋⇒渡辺(郷)⑬橋口⑭菅谷⑮竹田(宜)

対抗戦最終戦は調子を上げてきた慶應義塾大学との対戦。展開ラグビーを得意とするチーム相手だが、しっかりとディフェンスで止めて、帝京の強みであるFW、BK一体となった縦への攻撃で対抗したい。この日は赤く染まった帝京ファンへの期待に応えられるか。結果はもとより、選手権に向けた礎なる戦いを披露したいところ。

【前半戦】
試合前のアップから、すさまじいほどの気合いがほとばしる帝京フィフティーン。この気合いを冷静にコントロールして、結果につなげたいところ。PR西村、LO李、CTB橋口ら新顔が行けるところまで突っ走り、後半投入が予想される坪井、菅原らにいかにいい形でつなげる展開に持ち込めるか。

いよいよキックオフ。帝京はボールの処理ミスからいきなり攻め込まれてしまうが、厳しいタックルとモールへの早い寄りなどで前進を許さない。だが、緊張と気合いの入り混じる中、お互いにボールが手につかず、攻めきれない。

関東大学対抗戦・第7戦

帝京はWTBに入った小野・菅谷の突破などで攻め込むが、あと一歩攻めきれず、一進一退の攻防が続く。15分には、SH滑川の大外への飛ばしパスでチャンスをつくるが、トライには結びつかない。
すると時間の経過とともに今度は、一転ピンチの展開に。慶應の攻めにラインブレイクされ、展開される場面が散見する。だが帝京も必死のディフェンスで防ぐ。FL吉田主将、CTB南橋を中心に、ケガで欠場のWTB富永らの分も奮闘する。バックスタンドからはいつもにも増して、帝京コールが盛んに寄せられる。
…だが、必死に食らい付くも一瞬のアンラッキーも重なり2トライを献上(0-14)。

それでもすぐさま反撃に出る帝京。ここからは強みのFWを前面に出し始める。LOボンド、FLツイの突進でチャンスをつくる。だが、あと一歩のところでの反則で攻めきれない。
やや焦りもあったか、結局、0-14で前半を折り返す。

【後半戦】
攻め込みながらも取り切れず、逆にディフェンスを突破されて2トライを奪われてしまった前半。だが内容はさほど悪くない。大学選手権を見据える意味でも、後半は固いディフェンスとトライを取り切る仕留めの精度を上げていきたいところ。

後半が開始される。直後、相手ペナルティで22mから、CTBに移った森田がPGを決め、3点を返す。森田はさらにPGを決め、6対21となる。ここで踏ん張って、流れを引き戻したい帝京。キックオフボールをうまく展開し、数的優位をつくるチャンス。だが、インターセプトとターンオーバーで6-35とされてしまう。

選手たちの表情は…。キャプテンを中心にまだまだあきらめていない。まだ、後半16分。残り時間は十分にある。ここからは原点回帰。帝京の強み、FW、BK一体となってつなぐ、縦への突進を見せる。相手ゴール前でラインアウトを得ると、得意のモールで押し込む。一度はキャリーバックとなるも、スクラムからモールを形成。再度、押し込み、最後はツイがこの試合初めてのトライを奪う(13-35)。

関東大学対抗戦・第7戦

さらに縦への意識が強まる帝京。菅谷の突破で前進すると、ゴール前ではFW勝負。またしても、グラウンディングできずにキャリーバックとなるが、PR坪井を中心にスクラムでしっかりと押し込み、ツイが連続トライ!(20-35)。
だがここでノーサイド。

早慶明といった伝統校を相手にまさかの3連敗。だが、安易に過去の例を持ち出すのは良くないが、昨年度も同じく対抗戦4位。堀江主将を擁した3年前の対抗戦も早慶明に苦杯を喫し、そこから這い上がっていった。

そしてそんな例を出すまでもなく、少しずつではあるが、選手たちの表情から日増しに感じ取れるのは、選手権に向けた雪辱へ想いである。言うまでもなく、この悔しさは帝京ラグビー部員たちが、誰よりも身に染みて感じている。

選手権が目の前にやってきた。4年生を中心に、さらなる結束力を強め、いよいよ最後の航海に臨んで行くこととなる。

《試合後のコメント》
□岩出雅之監督

「選手たちは最後までよく頑張ったなというのが一番の印象です。慶應大学さんの自陣からの展開に関しては、しっかりと準備したつもりだったのですが、うまく攻められてしまいました。後半の頑張りをフルタイムで発揮できるように、普段の練習の中でもう一度、選手と一緒にしっかりと頭を整理して進んでいきたいと思います。

ディフェンスに関しては、個人的なミスの範疇が多かったように思います。普段から練習しているのですが、もう少し足を止めないで、前に出るディフェンスができれば良かったのですが。

後半、どこで攻めるかということについて意思統一をしたのですが、少し噛み合わないところがありました。ただ、それ以外は強みの部分を学生たちも実感できたと思いますし、スタミナ面をうまくキープしながら攻めるリズムを再認識できたのではないかと思います。

対抗戦で3敗して得たものは“悔しさ”です。昨年のチームもいろいろな悔しい思いをバネにして強くなりました。今日の試合前、ハーフタイム、試合後の学生たちの顔を見ると、試合内容は別として、やっと厳しさというものを実感したなという表情でした。土台となる気概の部分は大丈夫なので、戦略的な部分をもう少ししっかりと定着させられれば、大学選手権での目標に近づくことができると思っています。ここから本当の意味でのスタートとして、チャレンジャー精神をもって、大学選手権に臨みたいと思います」

□キャプテン・FL 吉田光治郎(4年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「慶應大のひたむきさに負けないように、自分たちも泥臭く行こうというテーマで臨んだのですが、ディフェンスの甘さから前半2トライされて、自分たちはゴール前に行っても取り切れないという展開になってしまいました。そこで1本でも取っていれば、流れも違ったのではないかと思います。
後半20分以降は、自分たちのラグビーはこれだというものが見えたので、そうした特長を活かしたラグビーができるように、大学選手権に向けて頑張っていきたいと思います」

□縦突進と献身的なDFが光った・LO ティモシー・ボンド(3年生)
「ディフェンスする時間が多かったのですが、長い時間それに耐えていいタックルとしぶといディフェンスができたと思います。慶應はチームがまとまっていて、よく走るいいチームでした。最初の20分でたたみかけられてしまって残念です。個人としてはボールを持った時の動きといったベーシックな部分をもっと改善していきたいです。この負けの原因をしっかりと見つめ直して、修正していきます」

□決定力を発揮し2トライ・FL ヘンドリック・ツイ(4年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「慶應は明確な意図をもってしっかりとした戦略を立てていて、春や夏に比べていいチームになっていました。彼らはボールキープがうまく、こちらがディフェンスする時間が長く、タックルする回数も多くなり、体力を使わされてしまいました。
後半、ボールをキープし、トライを取ることができたので、そこに関しては良かったです。この敗戦を糧に、大学選手権でいいプレーができるように2週間しっかりと準備していきたいです」

□鋭い突破が光った・NO8 柴田一昂(4年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「後半、FWの強さを見せることができたのは収穫です。個人としては甘いプレーでゲームを動かしてしまった点は反省しています。踏み込んでタックルして、バインドをしっかりすることでディフェンスを改善しなければならないと思います。すごく悔しさもありますが、気持ちでブレずとにかく最終の目標である日本一に向かって進んでいきます」

□冷静にゲームをコントロールした・SO 森田佳寿(3年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「試合に入るムードはアップからすごく良かっのですが、慶應の速い展開に対してまずファーストタックルが悪くて、ブレイクダウンで圧力をかけられずにどんどん慶應のペースになってしまいました。
前半にいくつかあったチャンスを得点にできなかったことも、ペースをつかめなかった原因です。慶應にいいテンポでボールを出されたことで、ポジショニングが遅くなって、ディフェンスに穴ができてしまいました。後半、自分たちの形が出て2つトライを取れたのは、大学選手権に向けての自信になりました」

□鋭い出足でBK攻撃の起点となった・CTB 橋口功(3年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「今季初先発でしたが、緊張よりもいままでやってきたことを出し切ろうと、思い切ってやるつもりで臨めました。慶應は接点での粘り強さがすごかったです。でも後半、負けじと前に出られたと思うので、これからももっと激しく行ければ大丈夫です。
敗因は、個人のタックルミスから慶應に速い展開をされてしまったところ。今日はみんな気持ちがすごく入っていて、そこでは負けていないので、練習からもっと横とのコミュニケーションを取っていくことで、ディフェンス力を強化できると思います。大学選手権に向けてあと2週間、自分たちのやりたいことが出せるように思いっ切り練習して、それを試合に出したいと思います」

□大きなゲインでチャンスをつくった・WTB 小野寛智(2年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「ウイングとしてチャンスでトライを取り切れなかったところ、ボールをしっかりキープできなかったところは反省点です。ただ、しっかりバックスリーでコミュニケーションできて、チャンスで大きくゲインできた場面もあったので、そこはよかったです。
どのポジションに入っても、自分の力を出し切ろうと思ってやっています。ディフェンス面では、個人個人のタックルはもちろん、ラインのコミュニケーションの部分が大事になってくると思います。大学選手権ではチャレンジャーとしての気持ちを忘れずに、厳しいプレーをしていきたいです」

□途中出場で流れを変えた・PR 坪井秀龍(4年生)

関東大学対抗戦・第7戦

「後半、自分のインパクト・プレーでチームが乗っていければと思って行きました。あきらめないという気持ちでやれたので、最後まで足が動いたと思います。次からは負けられない試合になりますが、今日の悔しい思いを忘れずしっかり戦って、必ず日本一になりたいと思います」

□久々の戦列復帰・SO 渡辺郷(2年生)
「試合前からいつでも出られるように自分をコントロールして臨みました。ケガをしていた時期はかえって試合を外から客観的に見ることができたので、ブランクは感じなかったのですが、自分の考えがまとまっていないことによるゲームメイクの部分とスキル不足が課題として出てしまいました。
今はチームに自分が動かしてもらっている感じなので、自分がチームを動かせて、確実に勝利をつかめるようなゲームメイクができるように、もっともっと自分に厳しく、毎日の練習に励んでいきたいです」

《PICK UP PLAYERS》

今季初先発で存在感をアピール
LO 李聖彰(1年生)


関東大学対抗戦・第7戦

LEE SONGCHANG
1991年8月24日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
東京朝鮮高校出身
身長187㎝/体重98㎏/血液型B型
ニックネーム/ソンチャン、得意なプレー/フォロープレー、試合前に聴く音楽/ゆず「栄光への架け橋」、郷土自慢/首都・人がいっぱい(東京都)

■今日の試合の感想を聞かせてください。
「FWは負けてなかったと思いますが、相手の早い展開にやや後手に回ってしまいました。自分としてもタックルをはずされる場面があったので、ディフェンス面は反省です」

■どんな戦術をイメージして臨んだのでしょうか。
「相手の攻撃に対しては、接点で戦って球出しを遅らせようとしたのですが、フェイズが重なって行く中でだんだん精度が低くなってしまいました」

■スクラムはどうでしたか。
「スクラムでは負けていませんでしたが、相手がスクラムごとに組み方を変えてきたので、そこが難しかったです」

■FWとして、今日よかった点、あるいは反省点はどこでしょうか。
「スクラムも後半は修正できましたし、ブレイクダウンでモールに入り過ぎないようにするという部分も修正できたので、そこはよかったと思います。反省点としては、ラインアウトでのミスがあったので、もっと精度を上げていきたいです」

■慶應と戦ってみての印象は。
「接点では負けていませんでしたが、展開が早くて、走力で上回られてしまったと思います」

■最後に今後に向けて一言。
「もっとタックルを厳しく改善していきたいです。大学選手権に向けてもっともっと練習して、スタメンで使ってもらえるように努力していきます」

初先発も体の強さ、身体能力の高さでFWを牽引。1年生ながら、大器の片鱗をしっかりと見せてくれた。ひとたびピッチを離れると、とても柔和な好青年で周囲からも“ソンチャン”と可愛がられている。
まさに“献身的な”プレーが光るソンチャン。今後は経験を積んで行くことで、さらなる成長が期待できる。LOのポジション争いは熾烈だが、レギュラー陣を脅かす存在になりそうだ。


《NEXT MATCH PREVIEW》

【12月19日(日)大学選手権1回戦 対戦相手・会場未定】
次戦はいよいよ大学選手権1回戦。対戦相手・試合会場は12月6日に決定するが、相手がどこであれ、決意は固まっている。負ければ終わりのトーナメント戦。残された日々を悔いなく過ごし、毎日の練習を常に最高のものにして、その成果を一戦一戦にぶつけていきたい。

(写真/志賀由佳)

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