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大学選手権セカンドステージ第3戦・立命館大学
2012/12/25
『安定感ある戦いでファイナルステージへ!』
12月23日(日・祝)・秩父宮ラグビー場○帝京大学(勝ち点21)48-12立命館大学(勝ち点15)●
《帝京大学》
[FW]①森川⇒竹井 ②泉 ③出渕⇒猿渡 ④小瀧 ⑤マニング ⑥イラウア⇒坂手 ⑦松永(浩) ⑧李⇒木下
[BK]⑨天野⇒流 ⑩中村 ⑪磯田 ⑫荒井(基) ⑬権 ⑭小野(寛) ⑮竹田⇒森谷
《立命館大学》※先発のみ
[FW]①西浦 ②庭井 ③沢居 ④落合 ⑤宇佐美 ⑥中村 ⑦萩原 ⑧嶋田
[BK]⑨井之上 ⑩井本 ⑪岩村 ⑫牧 ⑬市原 ⑭木村 ⑮高木
【前半】
大学選手権セカンドステージ第3戦の相手は立命館大学。ここまで2連勝で勝ち点も帝京と同じく16。この試合に勝ったチームがファイナルステージ進出となる。
前日の雨でグラウンド・コンディションはかなり悪い状態。特に、バックスタンド側の中央付近はぬかるみに近いほど荒れた状態だ。しかし、条件は両チームとも同じ。自分たちのやるべきことをしっかりやり切りたい。
先制したのは帝京。ゴール正面で得たPGをSO中村がきっちりと決める。しかし、直後、自らのペナルティで攻め込まれ、モールを押されて逆転を許す展開となった。攻撃に転じるが、立命館の出足の速いディフェンスでなかなか前進できない。
それでも、攻守にわたって粘り強く戦う帝京。全員が気持ちを切らすことなく、体を張り続ける。最前線で体を張るFW陣。PR森川、PR出渕らがボールを持って相手に当たっていくと、そのラックにLO小瀧、LOマニング、No8李らが圧力をかけ、ボールを確保する(試合全般を通じ、特に小瀧の意識の高いプレーには目を見張るものがあった)。さらにFL松永(浩)、FLイラウアらはBKラインに入り、クラッシュする。ここにBK陣が駆け寄り、ボールを確保。全員で、粘り強く戦う。
その粘りが28分に実を結ぶ。ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、最後は松永がトライし、逆転に成功。その後も足場の悪さと、立命館の前に出るディフェンスにやや苦しめられる場面もあるが、帝京の粘り強さは変わらない。
FB竹田は、最後尾から声を出し、冷静にチームをコントロールする。自らのプレーでも冷静さと強さを発揮。相手のキックに対して、深いハイパントはフェアキャッチ、エリアを取るべき場面ではロングキック。プレッシャーに来られれば内側にパス、プレッシャーがなければ自らカウンターアタックと、状況に応じてしっかりとした選択をしていく。もちろん、チャンスと見れば積極的にライン参加する。
「FBというポジションは全体を見ることができるので、できる限りみんなに声掛けをして、特に1、2年生が緊張せずにのびのびプレーできるように意識しています。」と語る竹田。リーダーシップも発揮する、たのもしい3年生に成長している。
集中力の高さは前半終了間際に最高の形で発揮される。CTB荒井(基)が深く蹴り込んだボールをWTB磯田が追いかける。これを立命館の選手が触ってタッチ。この時点ですでにホーンが鳴っていたが、磯田はSH流とうまくコミュニケーションして、クイック・スローイン。流がすぐに磯田に返して、そのままトライ。
「前半終了だ」と集中を切らしてもおかしくない場面だったが、レフェリーの笛が鳴るまでプレーは終わらないという基本を忘れず攻め続けた帝京の、意識の高さを物語るプレーだ。
帝京は前半40分を粘り強く戦い、20-7で折り返した。
【得点経過】
【3分】帝3-0立
ゴール正面で得たPGをSO中村が決める。
【7分】帝3-7立
ラインアウトからのモールを押し込まれてトライを許す。
【28分】帝8-7立
ラインアウトからモールを押し込み、最後はFL松永(浩)がトライ。
【34分】帝15-7立
ラインアウトからモール、ラックとFWで押し込み、最後はNo8李がトライ。ゴール成功。
【40分】帝20-7立
ホーンが鳴るも、WTB磯田がSH流へクイック・スローイン。すぐに磯田へパスし、そのまま走ってトライ。
【後半】
ハーフタイム、岩出監督からは「粘り強くいこう。チャレンジするのは足場のいいところでやるようにして、足場の悪いところでは丁寧にいこう」とのアドバイスがあった。
前半はボールをつないでいく意識が高かったが、後半は積極的に縦を突いて前進を図っていく。特に縦への突破が目立ったのは、小瀧、マニングの両LO陣とCTB権。さらに、ボールを持っていない場面での小野(智)、磯田の両WTBの運動量には特筆すべきものがあった。No8李のFW陣への声掛けも、チームに奮起を促した。
また、いつものようにHO泉はこぼれ球への反応が速い。相手のちょっとした隙も見逃さず、マイボールにする。また、自陣でのターンオーバーから深くキックし、BK陣が追いかけ、トライにつなげるシーンも見られる。追いかけるプレーヤーも1人ではなく、3人、4人と組織で動いていく。全員の集中力と運動量が生んだトライだ。
途中出場のプレーヤーたちも、自分の仕事をきっちりとやり切る。FL坂手はボールキャリアとしても、タックラーとしてもその強さを見せつける。本職とは違うNo8の位置に入った木下も、スクラムでのボールキープや、スクラムのボールを拾ってすぐにSHにパスするいわゆる「8-9プレー」も難なくこなす。
結局、48-12で帝京が勝利をものにし、1月2日からのファイナルステージ進出を決めた。
次戦からはより白熱した戦いになることだろう。シーズンも大詰め、この仲間たちとともに戦える時間もけっして長くはない。その貴重な一瞬一瞬を大事にし、最後まで成長を続けたい。その先には必ず最高の喜びが待っている。
【得点経過】
【2分】帝27-7立
立命館のノックオンしたボールをSH流がキック。SO中村らが追いかける。中村が拾いラックに。流からCTB権がパスを受け前進。フェイントで相手ディフェンスをかわし、LO小瀧へパス。そのままトライ。ゴール成功。
【9分】帝34-7立
ラインアウトからBKへ展開。CTB権が縦を突き、突破してトライ。ゴール成功。
【18分】帝41-7立
ラックでLOマニングがボールにからんでターンオーバー。こぼれ球を拾ったPR森川がCTB権へパス。権が深くキックし、WTB磯田らが追いかける。立命館が拾うが、セービングに行った磯田がすぐさま起き上がってタックルに行く。そのタックルで立命館の選手のキックが伸びず、チェイスしてきた権の手に収まる。SH流へとパスし、トライ。ゴール成功。
【25分】帝41-12立
連続してつながれてトライを許す。
【33分】帝48-12立
相手ボールのラインアウトのこぼれ球にHO泉が反応してマイボールに。LO小瀧が前進。LOマニングに手渡ししてトライ。ゴール成功。
《 AFTER MATCH SAY 》
■岩出雅之監督「セカンドステージの最終ゲームとしてしっかり勝ち切ってファイナルステージへと進むこと、またそこでいい収穫を得て成長できる試合にしたいと思って臨みました。反省点はいろいろあると思いますが、まずはファイナルステージに進出し、ベスト4に入れたことを喜びたいと思います。短期決戦ということもあり、学生たちのいいところを引き出していけるような反省をして、次戦に向けた準備をしたいと思います。
今日は、前半はファイナルステージに向けて確認しておきたいこともあり、いくつかのチャレンジをするように言ったのですが、昨日の雨で足場が悪いこともあり、ハーフタイムに、後半は足場のいいところでだけチャレンジをしていこうという話をしました。また、特に前半、立命館大学さんがとてもハードな、いいディフェンスをされていました。その中でわれわれが得たものをしっかりと見つめて、次のステージでは立命館大学さんの分まで頑張って、いいゲームをしたいと思います。」
■キャプテン・HO泉敬(4年)
「今日は立命館大学さんの非常に粘り強いディフェンス、力強いアタックがあり、また場面によって自分たちの軽いプレーもあって、前半は思うようなプレーができませんでした。ただ、そこをしっかり我慢強くプレーできたのは収穫になりました。チームはFW、BKのコミュニケーションもよくなっていますし、一人一人も正確なプレーができるようになっているので、とてもよい雰囲気です。ですが、これで完成しているというわけではないので、残りの試合に向けた準備をしっかりしていきたいと思います。準決勝進出が決まりましたが、満足することなく、ここからが勝負だという気持ちで次戦に臨みたいと思います。どんな相手と対戦しても、自分たちがやるべきことは同じなので、それをやり切れるようにいい準備をして、チーム全員で戦っていく気持ちでやっていきたいと思います。」
■FW攻撃にもBKライン攻撃にも参加した・FL松永浩平(4年)
「今日よかった点は、一人一人が粘り強く、タフにプレーできたところだと思います。反省点は、特にボールキャリアのコンタクトの部分や反則が多くなってしまったところです。前半、まずはFWを前面に出していこうとしたのですが、立命館大学さんの厳しいディフェンスをなかなか突破できませんでした。それでも、粘り強く戦えたのはよかったと思います。チームには全員で戦おうという意識がありますが、今後もっともっとその意識を高めていかなければいけないので、お互いに声を掛け合って、チーム力をさらに上げていきたいです。次戦もこれまでやってきたことをしっかりやり切ることを意識して、成長できるような試合にしたいと思います。」
■集中力の高いプレーで流れを引き寄せた・WTB磯田泰成(2年)
「立命館大学さんの激しいディフェンスでプレッシャーを受けましたが、後半はブレイクダウンでこちらも人数をかけていくことで跳ね返して、そこからは自分たちのプレーができるようになりました。前半最後のクイック・スローインは、ホーンがすでに鳴っていたので、クイックじゃないと前半終了になると思って、早く入れました。SH流とコミュニケーションできたので、うまく入れることができました。最後まで集中力を切らさないというのは、いつも意識していることなので、そうしたプレーができたことは自信につながります。ただ、後半にトライを取られたシーンは自分のタックルミスからだったので、そこは反省です。ここからはそうしたワンプレーが勝敗を左右しかねないので、しっかり改善したいと思います。」
■再三の縦突破でチャンスを生み出した・CTB権裕人(2年)
「前半は立命館大学さんの激しいタックルと、レフェリーとのコミュニケーションの部分で苦しんだところもありましたが、試合が進んでいく中でしっかりと修正できましたし、チーム一丸となってつかんだ勝利だったと思います。後半は自分の前があくシーンがあり、縦を突いて、自分の強みが出せたのではないかと思います。次戦は自分自身初の国立での試合になるのですが、自分のできることをひたむきに、がむしゃらに、泥臭くやっていきたいと思います。」
■ボールのないところでも献身的に走り続けた・WTB小野智寛(4年)
「今日は苦しみながらも、我慢強く前に進みながら、自分たちの形を出し、やるべきことができました。後半、1トライ取られましたが、そこで自分たちの気持ちを引き締めて、もっと前向きにどんどんチャレンジしていこうと言って戦うことができました。ただ、課題としては、ダウンボールやコンタクトでの基本プレー、きっちりつなぐプレーができていないところがありました。これができないと、次のいろいろなプレーにつながっていかないので、そこは徹底して練習から意識していかなければいけないと思いました。今日の試合で出た、よかった面、よくなかった面の両方をよく確認して、また、チームが一つにまとまって、全員で全力で戦っていくことをみんなに意識づけて次戦に臨みたいと思います。」
■最後尾から声を出し、的確な判断でチャンスメイクした・FB竹田宜純(3年)
「前半は我慢の時間帯も長かったのですが、そこを耐えて、いい形でトライを奪えたのはよかったと思います。ただ、ペナルティが多かった点は反省です。また、個人的にはベーシックスキル、特に細かいパスのスキルの部分でまだまだ成長できる部分が見つかったので、そこを修正していこうと思えた点は収穫だと思います。チームとしてはFWがゴール前で取り切ってくれたことが大きかったです。安心感が出ますし、FWで前に出るとチームに勢いがつきます。FBはコミュニケーションが重要なポジションなので、常にそれを意識しています。次も、自分たちのやってきたことを出し切って勝ちたいと思います。」
《 PICK UP PLAYERS 》
「4年生が体を張る姿を下級生に見せ続けたい」No8 木下修一
KINOSHITA SHUICHI
1990年7月9日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
佐賀工業高校出身
身長185㎝/体重97㎏
■今日のゲームを振り返って感想を聞かせてください。
「今日は自分の課題が見つかった試合でした。その課題を次週の練習で克服していきたいです。」
■どのような課題が見つかったのでしょうか。
「ディフェンスです。甘いプレーがあったので、そこはもう一度しっかり練習して、修正したいと思います。」
■最前線で体を張り続けていたように見えました。いいプレーもあったのではないでしょうか。
「ラックで体を当てていくなど、できていたプレーもありましたが、自分としてはやはり課題の部分が気になります。ディフェンスをもっとしっかり頑張りたいです。」
■福岡工業大学戦に続いての出場ですが、最も期待されている部分はどこだと思いますか。
「それはアタックの部分だと思っています。アタックでしっかりチームに貢献できるようにと思って試合に臨みました。ただ、アタックだけでなく、ディフェンスもしっかりできる選手になりたいので、もっと練習していきたいです。」
■今日はNo8としての出場でした。特にスクラムなどで気をつけていたことはありますか。
「久しぶりのNo8でしたが、しっかり集中して、やるべきことをやろうと思っていました。スクラムではFLとコミュニケーションを取って、いいスクラムを組めたと思います。」
■4年生として意識していることはありますか。
「普段の練習で4年生が体を張る姿を下級生に見せることで、チームにいい雰囲気を作っていきたいと思っています。」
■では、ファイナルステージへの意気込みを聞かせてください。
「大きな目標に向かって、まずは次の試合にしっかり勝って、決勝に進みたいと思います。」
プレーの激しさとは違って、インタビューには朴訥とした口調で坦々と答えてくれる。自らはディフェンスの強化を課題にあげるが、それもさらなる成長を貪欲に求めるがゆえ。もともともっている力強いアタック力に、ディフェンス力が加われば鬼に金棒。ファイナルステージのキーマンとなる可能性も十分だ。
《 NEXT MATCH!》
大学選手権ファイナルステージ準決勝 対早稲田大学(http://www.wasedarugby.com/)1月2日(水)国立競技場 12時15分キックオフ
過去の対戦成績:関東大学対抗戦7勝27敗(大学選手権2勝2敗)
[早稲田大学の直近5戦]
11月23日 ○31-10 慶應大●(関東大学対抗戦)
12月 2日 ●32-33 明治大○(関東大学対抗戦)
12月 9日 ○46-14 天理大●(大学選手権セカンドステージ)
12月16日 ○45-24 流経大●(大学選手権セカンドステージ)
12月23日 ○61- 8 大体大●(大学選手権セカンドステージ)
(文・木村俊太/写真・志賀由佳)
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