REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
関東大学対抗戦・第5戦

関東大学対抗戦・第5戦

2010/11/03

手応えと悔しさを胸に…。2ndフェーズ・スタート!

11月3日(水・祝)・秩父宮ラグビー場
●帝京大学14対33早稲田大学○
〔通算成績4勝1敗〕

《出場メンバー》
①吉田(康)⇒小幡 ②森(太) ③坪井⇒出渕 ④菅原⇒木下 ⑤ボンド ⑥ツイ ⑦吉田(光) ⑧柴田 ⑨滑川 ⑩中村(亮) ⑪富永 ⑫南橋 ⑬森田⇒橋口 ⑭小野⇒伊藤(拓) ⑮竹田(宜)

いよいよ宿敵・早稲田大学との一戦。ここ数年、互いに何度となく死闘を繰り広げてきた強敵だが、自分たちのラグビーをしっかりとやりきることで、今後のシーズンのジャンプアップとなる試合にしたいところ。

【前半戦】
1年生・中村(亮)がSOで先発出場。試合前、先輩たちからは「細かいことは気にせず、自分のプレーを思い切ってやれ」と声がかかる。岩出監督からは「自分のために頑張るのも大事だけど、仲間のために頑張るのもいいものだよ」「厳しい試合を楽しんできなさい」という言葉で送りだされた。

キックオフ。2万人の大観衆で埋まった秩父宮の独特の雰囲気が影響したのか、ミスからピンチを招くが、堅い守りで相手の前進を許さない。冷静にタッチキックでエリアを回復させながら、チャンスを待った。
まさに意地と意地とがぶつかり合う緊迫した攻防が続く。FLツイの突進、PR吉田(康)・坪井、LO菅原の粘り強いDF、またセットスクラムにおいても相手ボールスクラムを押し込んでのターンオーバーなど、魂のこもったプレーを再三にわたって披露。次第に流れは帝京へ。

関東大学対抗戦・第5戦

SO中村(亮)の好タッチキックで敵陣深く攻め込むと、チャンス到来。25分、ラインアウトからモールで押し込み、最後はFL吉田(光)が持ち込んで先制トライを奪う(7-0)。観客から自然に沸き起こった『帝京コール』にも乗せられた一体感のあるトライであった。

これで波に乗ったかのように帝京ペースで攻める時間帯が続くが、最後の仕留めるところまで至らず、もどかしい展開が続く。ボールキャリアが孤立し、反則でチャンスを活かせない。33分には逆に早稲田にボールを動かされ、トライを許してしまう(7-7)。その後も攻め込むものの、あと一歩のところでゴールラインまで届かない。7対7の同点で前半を終了した。

【後半戦】
前半は緊迫した互角の戦いを演じた帝京と早稲田。この緊張感、集中力をどこまで維持し続けられるか。熱い魂をもちつつ、冷静なプレーができるかが勝負の分かれ目となりそうだ。
後半も互角の展開。攻め込まれても、LOボンドがモールの中で相手ボールを奪い取るなど、一進一退が続く。攻められてもタッチキックで徐々に陣地を挽回する帝京。

5分。鋭いディフェンスで相手ボールをターンオーバーすると、敵陣深くへの好タッチキック。「よしチャンスだ」と誰もが思った一瞬の空白。相手はそれを見逃さなかった。クイックスローインから大外まで展開されると、ディフェンスが崩され、トライを献上(7-14)。

だが帝京も負けじと反撃にでる。相手キックをキャッチすると、連続展開。吉田(光)からボールを受けたCTB南橋はWTB富永へパスすると、すぐに外へとフォローへ走る。ディフェンスを引き付けた富永から再びパスを受けると、そのままインゴールへと飛び込んだ(14-14)。

関東大学対抗戦・第5戦

予想通りの白熱した好試合となった。帝京は前半から積極的にボールを動かし見事なまでにゲインを切るケースが目に付くが、ここから先はFW勝負にこだわるべきか? 熱く、だが冷静に帝京フィフティーンは戦況を窺う。だが、帝京は攻め込んではあと半歩のところでミスを犯し取り切れない。相手ゴール前ラインアウト、吉田(康)からHO森(太)へボールを戻して飛び込むが、トライには至らない。

関東大学対抗戦・第5戦

終了時間の迫った39分、ゴール前まで迫るもパスカットされ、そのまま走り切られてしまう。だがインゴールの帝京フィフティーンに、誰一人下を向く者はいない。結局14対33でノーサイドとなったが、試合直後岩出監督はハイタッチで激闘を繰り広げた選手たちを迎え入れた。選手たちのその視線の先は、すでに次戦、そして必ず訪れるであろう宿敵との再戦に向いているのが、ヒシヒシと感じ取れた。

《試合後のコメント》
□岩出雅之監督

「まず、今日は早稲田大学さんの果敢なすばらしいプレーに敬意を表したいと思います。選手たちは相当な悔しさが残ったと思いますが、この悔しさを今後どう活かして、これからどのように努力を積み重ねていくかが大事になってきます。今日の試合はこれまで以上に、自分たちの力がよくわかる、今後の軸となるプレーの基準がよくわかる試合になりました。よかった部分、悪かった部分、両方ありましたので、それぞれよく確認してこれからの成長に活かしていきたと思います。
ディフェンスのほころびの部分は、イメージ力と意思力からなる予測力が足りなかったのだと思います。そこは今後しっかりとイメージを共有し、意思疎通をして、予測する力を強化していきたいです。私はシーズンを3つのフェーズで考えています。前回の試合までが1stフェーズ、今日の試合から早明慶と厳しい試合が続くのが2ndフェーズです。ここで厳しさを体験し、その体験を大学選手権という3rdフェーズに活かせるようにしたいと思っています。今日の悔しさを大きな力に還元できるように、また明日から頑張っていきます。今日は大勢の方にご観戦いただき、ありがとうございました」

□キャプテン・吉田光治郎(4年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「今日はディフェンス面で甘さが出てしまいました。でも、力負けしていたわけではないので、タックルでのバインドともっと前に出るディフェンスができていれば、まったく違った展開になっていたと思います。攻撃面ではよかったところが多々ありました。ただ、ゴール前で取り切れなかったところがいくつもあったので、そこをこれから重点的に修正していきたいです。特に後半、厳しい局面が続きましたが、みんなには『こういう試合を求めていたんだろう。しっかり前を向いて、苦しい試合を楽しもう』と声をかけました。下級生はすごくいい経験になったと思いますし、今日はみんなでしっかり反省して、早稲田とは大学選手権でもう一度当たって勝ちます」

□巧みなスクラムとDFでFWを引き締めた・PR 吉田康平(3年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「特にパワーでも負けていませんでしたし、セットスクラムも安定し夏合宿で戦った時よりもプレッシャーをかけられたので、感触は全然悪くなかったです。ただ、最後までFWで押し切ることができなかったのが、結果的に向こうに流れを渡してしまった原因です。
個人的には今シーズンここまで、去年、一昨年の状態と比べてあまり上積みできていないので、もっともっとパワーを着けてパフォーマンスを上げていきたいです」

□パワープレーでスクラムを牽引した・HO 森太志(4年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「もっと愚直にDFできれば良かったんですけど…。30点取られるラグビーは自分たちのラグビーではないので。今日はテーマとしてポジショニングの速さを心がけていたのですが、スペースを与えてしまったのが敗因です。でもいい部分もたくさんありましたし、次は絶対にやり返します!」

□粘り強いDFでプレッシャーをかけ続けた・LO 菅原貴広(4年生)
「今年のチームとしてのテーマは“進化”で、BKでも取れるチームがその進化にあたる部分と考えていますが、今日はBKの進化の片鱗が出せたので、そこは良かったです。ただ、そこから先、攻め込んでからのターンオーバーがあったので、今後そこを改善していけば問題ないと思います。
正直、相手に対して負けているイメージはまったくありません。試合が終わったあとのみんなの表情からも、それは感じました。ただ現時点で結果として負けたのは事実ですし、この悔しさを絶対に忘れず、ここからは登って行くだけです」

□高い意識で何度もチャンスを演出した・CTB 南橋直哉(3年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「チームとしてはタックルでのバインド部分が甘く、相手が立っている意識が高くて、前に出られてしまいました。一方で、アタック面ではFW、BKがリンクした攻撃ができていたところもあったので、次につながると思います。自分のトライのシーンはフォローする意識を高く持てたので、外でボールをもらえました。
次戦まで2週間以上あるので、今日できなかったディフェンス面などを修正して臨みたいと思います」

□体を張ったプレーで攻撃の起点となった・CTB 森田佳寿(4年生)
「接点では負けていませんでしたし、やろうとしていたこともそこそこできていたので、この結果に悲観することはまったくないですね。自分自身でも思い切ったランニングができましたし、手応えも感じています。イレギュラーなシーンへの対応の速さの部分で負けていたり、早稲田の早い展開に受けに回ってしまったところはありますが、まだまだこれからの積み重ねが可能なので、自分たちの形をしっかり作って、大学選手権でリベンジします」

□この試合もキックチェイスに奔走した・WTB 富永浩史(4年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「タックルでのバインドの甘さとアタックで取り切れなかったことで流れが作れませんでした。でも、1人目がしっかりバインドして、2人目、3人目と殺到できれば行けていたと思います。やはりディフェンスあっての帝京なので、次戦ではディフェンスから流れを作っていきたいと思います」

□思い切りの良いランを見せた・FB 竹田宜純(1年生)
関東大学対抗戦・第5戦
「とにかく悔しいです。ただ、強いチームとこういう大きな舞台で戦えたことはいい経験になりました。今日は大観衆の中、最初は緊張しました。早稲田とはまた大学選手権で当たる可能性もあるので、次は絶対に勝ちます」

《PICK UP PLAYERS》

光るセンスと強心臓のフレッシュマン
SO 中村亮土


関東大学対抗戦・第5戦

NAKAMURA RYOTO
1991年6月3日生まれ
経済学部経営学科
鹿児島実業高校出身
身長177cm/体重87kg/血液型O型
ニックネーム/りょうと、得意なプレー/キック、試合前に聴く音楽/長渕剛、郷土自慢/さくら島(鹿児島県)

■対抗戦での初先発でしたが試合を終えた感想は。
「緊張より楽しみのほうが大きかったです。思いっ切りやれました」

■大観衆の中でのプレーでしたが。
「こういう大観衆の中、プレッシャーのかかる試合を経験できたので、もうどんな場面でやることになっても緊張しないでできると思います」

■試合を振り返ってよかったところ、よくなかったところはどんなところでしたか。
「早稲田に対してそこそこやれたというのはよかったです。ただパスやキックの精度の部分とか、タックルが高かったところなどは反省点です。特に緊迫した場面でのパスの精度を上げていけなければいけないと感じました」

■対面は山中選手でしたが、戦ってみてどうでしたか。
「日本代表ということで実力はかなり違うと思いますが、名前負けだけはしないようにと思い切っていきました。タックルで止めた場面もあったので、よかったです」

■先輩たちからはどんなことを言われていましたか。
「『とにかく思い切ってやれ』と。練習のときから僕が自分のプレーを思い切ってできるようにといろいろと気を遣っていただいています。そのおかげで今日も普通どおりにプレーできました。先輩方には感謝したいです」

■最後に自分のこんなプレーを見てほしいというところを教えてください。
「タックルとキックです。もっと精度を上げていかなければいけないですが。帝京のユニフォームを着るからには、しっかりとチームに貢献できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」

1年生ということでまだまだ荒削りなところはあるものの、そのラグビーセンスは誰もが認める逸材。チームにフィットし、組織的な部分でも機能してくればこの上なく大きな戦力になる。オフにはボーリングや自室でのDVD観賞などに講じるなどすでに都会での生活にも慣れた様子。
大舞台でも動じない強心臓が魅力のニューフェースは、今後相手にとっては脅威のSOになれそうだ。

《NEXT MATCH PREVIEW》

【11月21日(日)関東大学対抗戦第6戦 VS明治大学 秩父宮ラグビー場14時キックオフ】
次戦は今シーズン5戦全勝の明治大学との対戦。強力FWでならす明治だが、FW対決なら望むところ。帝京の意地が爆発する必見の好ゲームとなる。

(写真/志賀由佳)

特集一覧