REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
2013関東春季大会 第2戦・筑波大学戦

2013関東春季大会 第2戦・筑波大学戦

2013/05/13

「2013関東春季大会 第2戦・対筑波大学戦」
 
5月12日(日)・百草グラウンド
○帝京大学 48-17 筑波大学●

《帝京大学》
[FW]
①森川 ②前田⇒竹井 ③東恩納⇒高田 ④飯野⇒筬島 ⑤町野 ⑥イラウア ⑦杉永⇒大和田 ⑧李
[BK]
⑨流 ⑩朴⇒前原 ⑪磯田 ⑫野田 ⑬権⇒塚本 ⑭久田 ⑮竹田⇒森谷
 
《筑波大学》※先発のみ
[FW]
①加藤 ②村川 ③大川 ④藤田 ⑤目崎 ⑥窪田 ⑦元田 ⑧山本
[BK]
⑨吉沢 ⑩松下(彰) ⑪久内 ⑫竹田 ⑬下釜 ⑭高橋 ⑮山下

【前半】【得点経過】
【3分】帝7-0筑
スクラムでの相手の反則から、No8李がクイック・リスタートで前進。
つかまるも、PR森川に渡して、森川がそのままトライ。ゴール成功。
 
【8分】帝14-0流
FWでつないで前進。最後はFLイラウアがトライ。ゴール成功。
 
【7分】帝7-5筑
マイボール・ラインアウトを奪われ、展開されて、走り切られてトライを奪われる。
 
【10分】帝7-12筑
相手ボールのスクラムから展開され、走られてトライを奪われる。
 
【20分】帝14-12筑
相手のこぼしたボールをCTB権が拾って、そのままトライ。
ゴール成功。
 
【27分】帝19-12筑
相手のハイパントをWTB磯田がキャッチし、前進。FB森谷-WTB久田と渡ってトライ。
 
【30分】帝26-12筑
キックオフのボールをNo8李がキャッチし、展開。
CTB野田が大きく前進し、WTB磯田へと渡り、磯田が走り切ってトライ。
ゴール成功。
 

 【後半】【得点経過】
【5分】帝31-12筑
相手ボールをターンオーバー。CTB前原が前進し、WTB磯田へつないでトライ。
 
【9分】帝38-12筑
FW、BKでつなぎ、FL杉永が抜け出す。そのまま、走り切ってトライ。ゴール成功。
 
【16分】帝38-17筑
自陣ゴール前での相手ボールのラインアウト。モールを押されて、トライを奪われる。
 
【21分】帝43-17筑
スクラムを10m近く押し切り、No8李が押さえて、スクラムトライ。
 
【32分】帝48-17筑
ペナルティからクイック・リスタート。CTB前原へと渡って、そのまま走り込んでトライ。
 

《  BRIEF REVIEW  》

昨年度の大学選手権決勝の顔合わせとあって、大勢の観客、報道陣が詰めかける中、帝京が、今年自分たちが目指すラグビーをしっかりと表現して快勝した。全員が「立ってボールをつなぐ」意識をもって攻め、そのための必須条件でもある「接点の制圧」にも高い意識でプレー。PR森川、LO町野、FL杉永らの走りや野田、権の両CTBのタックルなどが光ったが、なにより全員が常に走り続け、仲間のサポートに駆け寄る形が徹底されつつある。今後、さらに精度を高めていくことで、よりいっそうの成長が期待できるだろう。
 

《  AFTER MATCH SAY  》
 
■岩出雅之監督
「今シーズンの2戦目ですが、要所要所で厳しさの出た、いいゲームだったと思います。細かいところは、まだまだこれから整備していく部分が多々ありますが、それも学生たち自身が意識し出すことで変わっていくと思います。今シーズンは、『打倒トップリーグ』という目標を達成するためにも、立ってプレーする『スタンディング・ラグビー』を掲げていますが、ともすると体に染みついている『倒れてつなぐラグビー』が顔を出してきます。頭で分かっていても、まだ体に染み込むほどには理解できていないからでしょう。これは、少しずつ、時間をかけて根元から変えていくしかありません。相手と戦うと同時に、自分たちと戦うこと、自分たちの目標に向かって成長していくことを意識してやっていきたいと思います。人に言われたことをやるのではなく、学生たちが本当に自分自身で大事だと思えることをやれるように、我々指導者も焦らずに進んでいきたいと思っています。」
 
■ゲームキャプテン・No8李聖彰(4年)
「今日は、『接点の部分でどんどん圧倒していこう』ということをチームのテーマとして臨みました。前半の最初の方は、自分たちでバタバタしてしまい、いいプレーもありつつも、落ち着いてプレーできずに、よくないプレーも出てしまいました。後半はかなり修正できたので、そこはよかったです。まだまだ修正していかなければいけない点がたくさんあるのですが、そこはこれからよくなっていくと思います。『常に立ってプレーしよう』という部分では、ゲインできているときにはいい形でできるのですが、相手のディフェンスが厳しくてゲインを切れない場面で、今日は少し甘さが出ていたように思いました。フェイズを重ねてしんどくなっていくにつれて、ボールキャリアを孤立させてしまうシーンもあったので、そこはもう少し精度を上げて、FWのフィットネスとか一人一人のコンタクトでの意識を改善できれば、もっといい形で自分たちの目指すラグビーを表現できると思います。来週は社会人チームとの対戦になりますが、これまでやってきたことをどれだけ出せるかに集中してやり切りたいと思います。」
 
■体を張ったプレー連発も、さらに高いレベルでの成長を誓う・LO町野泰司(3年)
「今日はいい面も課題もたくさん見つかったゲームでした。アタック面ではヒットしたときにすぐに後ろを向いてしまったり、正面で当たったりせず、体の向きを意識していい当たりをすること、ディフェンス面ではもっと低いタックルをすることと、コミュニケーションをしっかり取ることなどが課題として見えました。また、体力面でもまだまだ足りないことを実感したので、フィットネスを上げていきたいです。これらは自分をもっと高いレベルにまで成長させるためのものなので、しっかりとやっていきたいです。個人的には去年の卒業生の松永浩平さんのようなプレーを目指しているので、そうなれるように努力していきたいです。」
 
■強く前進することを意識し、ゲームをコントロール・SO朴成基(3年)
「今日は、チームとしてはアタックでもディフェンスでもしっかり前に出ようという意識で臨みました。うまくいったところもありましたが、逆にまだまだ甘かったところもあって、課題がよく見えた試合でした。今日出た課題を修正して、次に臨みたいと思います。チームとして『立ってプレーする』というテーマでやっている中で、SOとしてFWで行く場面とBKで行く場面、味方を生かす場面と自分が勝負する場面をうまく見極めることを意識していますが、今日の前半はFW中心に行きすぎてしまい、BKは横に振るばかりになってしまいました。BKをもっと縦に使うことも意識して、FW、BKをバランスよく、上手に生かせるプレーを心掛けたいと思います。」

《  PICK UP PLAYERS  》
 
ディフェンスに加え、アタックでの自信も高める
FL 杉永亮太(3年)
RYOTA SUGINAGA
1992年6月29日生まれ
経済学部経済学科
長崎南山高校出身
身長184㎝/体重92㎏
 
■今日のゲームはどんな意識で臨んだのでしょうか。
「自分の課題として、タックルしてジャッカル(密集などで相手のボールを奪い取るプレー)するということを掲げて臨みました。ゲームの中でディフェンスするシーンが少なかったので、ジャッカルはできませんでしたが、その分、アタックの部分でしっかり前を見て、あいているスペースを見つけて、トライにつなげることができたので、そこはよかったと思います。」
 
■トライシーンの直後、もう一つ、トライ寸前という惜しいプレーがありました。
「あそこもトライまでつなげたかったです。ちょっと悔しいです。」
 
■先週に続き、今日もしっかりとしたプレーができていたのではないでしょうか。
「はい。チーム内でみんなの意識が変わっていますし、ゲームでもボールキャリアがすぐに倒れないで、しっかりドライブし続けていて、周りもしっかりサポートする意識が高まっています。セカンド・プレーヤーも、ただサポートにつくだけでなく、しっかりドライブし続けていますし。ラックを作らずに継続していく意識がプレーに表現できていると思います。」
 
■自身の一番のアピールポイントはどこでしょうか。
「やはり、タックルとジャッカルですね。」
 
■準備段階で心掛けていることはありますか。
「試合で表現したい目標を、練習の段階からしっかり意識してやるようにしています。教えてもらっただけではまだ頭で『分かった』だけで『解』になっていないので、頭で考えたことを試合中に実際にできるか、できたとしてもさらにどこまで向上できるかという考えでやっています。」
 
■個人として、どんな目標を立てていますか。
「目標は『タックルとジャッカル』なのですが、その成功率を高めてチームに貢献できるようにしたいです。また、アタックもだいぶ自信がついてきたので、ディフェンス、アタック両面でチームに貢献できるように頑張りたいです。
 
■では、今後への意気込みを聞かせてください。
「今はチャンスをいただいているのですが、このチャンスを絶対に生かして、Aチームで試合に出続けられるように頑張ります。ラグビー以外の部分でも人として成長したいですし、下級生を引っ張っていけるようなリーダーシップを発揮できるようになりたいです。」
 
昨年度は不動の7番松永浩平がチームを引き締めたが、その後釜としてかかる期待は大きい。タイプはやや異なるが、そのポテンシャルは岩出監督も評価する素材に違いない。この日も後半9分、判断力と脚力を発揮し、トライを奪った。本人はディフェンスに自信をもっているというが、アタック面での思い切りもよく、足も速い。本人は自身の性格を『マイペース』と評するが、3年目に突入しいよいよ眼の色が変わってきたようだ。今後、さらにプレーの精度を高め、フィットネスを向上させていくことで、不動のFLへと成長する可能性を秘めている。

《  COLUMN  》
 
―「変わるもの」と「変わらないもの」―
 
今年の帝京は、特にアタック面でのプレースタイルが大きく変化しつつあります。「できる限りラックにせず、立ってボールをつないでいこう」「やむをえずラックになったら、サポートプレーヤーが相手を弾き飛ばして、すばやいボール出しをしよう」というスタイルです。
 
 現段階ではユニットでのスクラムやラインアウトにはほとんど手をつけておらず、ほぼこの点のみにフォーカスしているとはいえ、その成長ぶりには驚くべきものがあります。
 
 岩出監督はこんなふうにおっしゃいます。
 
「例えばですが…ディズニーランドって、ずっと同じように変わらないイメージがあるかもしれませんが、実はいろいろなアトラクションが入れ替わっているみたいなんです。変化することによって、成長を続けている場所のようです。われわれのチームも常に変化し、成長を続けたいと思っています。」
 
調べてみると、岩出監督の言うとおりで、ディズニーランドのアトラクションはかなり頻繁にクローズとオープンを繰り返しています。毎年のように、新しいアトラクションが次々とできていました。あのディズニーランドが人気にあぐらをかくことなく、常に変化し、成長することを続けてきたのです。
 
さらに監督は、「でも、変えてはいけないものもあり、アイデンティティまで変わってしまう、そういったものは絶対に変えてはいけない。」、そう、付け加えました。
 
今日の試合、アタック面の変化に注目が集まりがちですが、実は全員がしっかりと地道にやり続けたことがありました。相手の攻撃を止める激しいタックルです。
 
CTB野田、CTB権らタックラーとして知られる選手はもちろん、PR森川、PR東恩納、HO前田らFW第一列がしっかりと相手を止め、SH流、SO朴、WTB久田らBK陣も、タレントぞろいの相手に対して果敢にタックルに入りました。もちろん、ここで名前を挙げていない選手たちも、サポートプレーも含め、まさに全員でタックルし続けたのです。
 
10日の金曜日、練習の最後に「5分間タックル」がありました。タックルバッグ目がけて思い切りタックルし、そのあと、転がるボールを追いかけてセービングをします。これを5分間やり続けるのです。練習の最後ですから、かなり疲労もたまっているはずです。しかし、全員、タックルバッグに全力で突き刺さり、グラウンドには「どすん、どすん」という大きな音が響きます。
 
岩出監督がふっとつぶやきます。
 
「これなんか、まさに『ミッキーマウス』やね。」
 
そして、今日の試合前の円陣で、岩出監督はこう言って選手たちを送り出したのです。
 
「まずは、ディフェンスからやろう!」
 
帝京ラグビー部のアイデンティティを忘れず、その上で成長を見せていこうという意味に聞こえました。そして、選手たちがそれを存分に表現したゲームだったのです。
 

《  NEXT MATCH  》
 
佐賀招待ラグビー 対コカ・コーラウエストレッドスパークス
5月18日(土)佐賀県総合陸上競技場
18時キックオフ

(文・木村俊太/写真・川本聖哉)

特集一覧