REPORT

レポート

トップ
   
レポート
   
春季オープン戦・第2戦 流通経済大学戦

春季オープン戦・第2戦 流通経済大学戦

2011/05/17

後半の修正力で流経大を翻弄

5月15日(日)・帝京大百草グラウンド
○帝京大学 45対17 流通経済大学●



《出場メンバー》
1吉田→佐藤
2白→森川→白
3猿渡→出渕
4小瀧→マニング
5松田→今村
6木下
7杉永→斉藤
8斉藤→河口
9滑川→流
10小野
11権→ゴン
12南橋
13ゴン→朴
14池上→菅谷
15南藤

2011年度春シーズンの第2戦は、昨年度リーグ戦2位の流通経済大学戦。近年メキメキと力をつける強敵だが、今の自分たちの実力を見極めるには絶好の相手。ひるむことなく、これまでの練習の成果をしっかりと出したいところだ。

【前半戦】
強風の中、トスに勝った滑川ゲームキャプテンは風上かつ太陽を背にできるサイドを選択。前半から積極的に勝負に出ようという姿勢を示した。試合は序盤から お互いに激しい攻防となった。帝京は強い圧力とラックからの早い球出しで前進を図るものの、相手の素早いディフェンスに阻まれる。だが、帝京も相手の攻撃 をきっちりと止め、一進一退の時間帯が続く。



試合が動いたのは15分。徐々に真価を発揮し始めた帝京FWが、相手ゴール前でモールを形成すると、そのまま押し込んでトライ。BKで前進し、FWで取り切るという帝京ラグビーらしい形で先制した。難しい角度からのゴールも、SO小野が丁寧に決めて7-0とした。



その後は押し気味ながらも攻めきれない展開となる。小野、CTBゴンらの積極的な縦への仕掛け、さらにはWTB権やFB南藤らのスピード感十分の走りも、相手の堅いディフェンスに阻まれ決定的な場面までには至らない。



しかしながら、ゲームを支配しつつも得点に至らないという嫌な流れを断ち切ったのは、BKリーダー、CTB南橋の突破だった。敵陣10m付近でボールをも らうと、自ら縦へと仕掛ける。さらにディフェンスを次々とかわし、そのまま中央にトライ(14-0)。これで流れを引き寄せたかに思えたが、小さなミスか らカウンターをうけ、失点を許してしまう(14-5)。さらにハーフタイム直前には、攻め込んだボールをターンオーバーされ、つながれて失点。14-10 で前半を折り返すこととなった。

【後半戦】
ハーフタイムでは、前半の攻撃オプションの選択ミスを修正し、相手ディフェンスの陣形をよく見て、相手の弱いところを突いていこうという、指示がなされ た。この修正の成果は後半開始早々から発揮された。一人一人の動きもよくなり、開始2分にいきなりのトライで勢いを得ると、このあと、後半から途中出場の WTB菅谷が、的確なポジション取りと鋭い動きで相手ディフェンスを翻弄。立て続けの3連続トライで試合の趨勢を決めた。内に切れ込むカットインで抜き 去ったり、ディフェンスが手薄と見るや大外でロングパスをもらってそのまま走り切ったりと、まさに八面六臂の活躍を見せた。もちろん、後半はFWの強さも 発揮。相手ボールスクラムを押し込み、何度もターンオーバー。ピンチも一瞬でチャンスに変えることができた。



37分には、この日何度も見せたペナルティからのクイックスタートでトライを奪取。45-17で春シーズン2連勝を飾った。前半は押し気味ながらも加点で きず、逆に攻守の切り替えの遅れで失点してしまったが、後半はアタックのオプション選択の修正によって得点を重ねることができた。まだまだ荒削りではある が、相手の陣形を見極めて、弱いところにボールと人を運ぶという意図がよくわかるゲームだった。あとは試合を重ねることで、判断の共有化が図れていくに違 いない。昨年とはまた違った、帝京ラグビーの味が出始めたようだ。




《試合後のインタビュー》

□岩出雅之監督
「今日もたくさんの方々に足を運んでいただき、大きなご声援をいただきました。ありがとうございます。現在は基礎的なことを確実にできるようにする練習が 中心ですが、学生たちはみな、非常に高いモチベーションをもって日々の練習に取り組んでいます。今日は『思い切りよく、丁寧に』というテーマで臨みまし た。『思い切りよく』と『丁寧に』を両立させるのは、なかなか簡単にはいきません。思い切ったプレーをしても、雑になってボールを取られてしまっては意味 がありませんし、丁寧にいきすぎて、プレーが小さくまとまりすぎてしまってもいけません。そういう意味では、できていたところとできていなかったところの 両方がありましたが、どちらもいい経験として次への成長へとつなげていってくれることでしょう。皆さまにも、この日のワンプレーではなく、一人一人の成長 を長い目で見守っていただけたら幸いです。」

□ゲームキャプテン・SH滑川剛人(4年)



「今日は『思い切りよく、丁寧に』ということを意識して取り組んだのですが、一つ一つのプレーをしっかりとやって、雑なプレーをしないようにしなければい けないという反省点がありました。上級生がもっと強く意識してやっていかないといけません。トライを取られた場面もすべて自分たちのミスからなので、チー ムとしてアタックとディフェンスの切り替えをしっかりしていれば止められたと思っています。今後は一人一人が自主的に状況判断ができて、全員が意図を共有 して動けるチームにしていきたいです。それができれば、日本一という結果は自然についてくると思っているので、その部分で一試合一試合、確実に進歩してい けるチームにしていきたいと思っています」

□大きな相手にも果敢なタックルで倒した・FL河口駿(1年)
「今日は後半からのスタートでしたが、Aチーム初出場でめちゃくちゃ緊張しました。でも、周りの先輩方が引っ張ってくださって、途中からは緊張も消えて、 しっかりプレーできたと思います。流通経済大学さんは体が大きくてごつかったですが、それに負けないようにしっかり体をぶつけていって、いいタックルがで きまし た。自分はFLなので、タックルが命。もっともっといいタックルができるように、しっかりと体づくりをして、タックルで自分をアピールできるように頑張り たいと思います」

□積極的なチャレンジでチームを引っ張った・SO小野寛智(3年)
「前半、相手のディフェンスがかなり前に出てきて、それに対してどうアタックするかというところで、相手のプレッシャーを過度に感じてしまって、焦りが出 てしまいました。次はもっと冷静に判断できるようにしたいと思います。また、キックミスもあり、もっとプレーの精度を上げていかなければいけないと痛感し ています。BK全体としては、ハンドリングスキルなどは向上していると思うので、あとは相手の出方に対する対応力をさらに上げていきたいと思っています」

□苦しい局面も体を張って打開した・BKリーダー・CTB南橋直哉(4年)



「今日は、いいところも悪いところも出た試合でした。ディフェンスの部分では、攻めていったときにターンオーバーされて失点したので、まずは簡単にターン オーバーされるようなミスをなくして、その上でオフェンスからディフェンスへの切り替えをきちんとやれるようにしたいです。今年は、全員がしっかりと判断 してスペースに走り込んでいくことを意識してやっていますが、その結果として、ボールがよ く動くようになっていると思います。意図をもってボールを動かして、去年を超えるチームになっていきたいです。自分個人としてはBKリーダーとして、チー ムがピンチの場面でもプレーで体を張ってチームを引っ張っていきたいです。そして、日々の練習や私生活の面でもそうした姿勢を見せていけるようにしたいと 思っています」

□好判断と俊足で3連続トライを奪取した・WTB菅谷優(3年・ゲームMVP)



「MVPは初めてで、めちゃくちゃうれしいです。(トライ後、監督に声をかけられていたが)監督に笑顔で『ナイストライ』と言ってもらえたので、本当にう れしかったです。『次はタックルも行けよ』とも言われました。結局、タックル機会はなかったんですが(笑)。最初に抜けたシーンは滑川さんとのサインプ レーで、前半、外から相手のディフェンスを見ていて、あそこに走り込めば行けると思ってやって みたら、そのとおりに抜けることができました。前回は、ライン際でタッチに出てしまって、試合後、監督に怒られてしまったので、今日は絶対にタッチに出な いようにしようと思って試合に臨みました。一回もタッチに出ずに終われてよかったです。自分ももう3年生なので、今後も上級生らしいプレーをして、みんな を引っ張っていきたいです。そして、またMVPを取れるように頑張っていきたいです」


《PICK UP PLAYERS》
難しい角度からのゴールキックも冷静に決めた
SO 朴成基(1年)




SONGI PAK
大阪朝鮮高校卒業

■今日の試合を振り返ってどうでしたか。
「点差の少ない、接戦状態の後半から出させてもらったので、なんとかいい流れを作りたいと思っていました。自分は無我夢中でしたが、チームとしていい流れができてよかったです」

■帝京大学のラグビーにはどんなイメージをもっていましたか。
「SOが中心にゲームをリードしているイメージがありました」

■そのSOとしてAチームで出場してみた手応えは。
「今は滑川さんと南橋さんに挟まれてリードしてもらっているような形なので、これからもっと頑張って、自分からリードできる存在になりたいと思っています」

■今日の動きはとてもよかったと思いますが。
「ありがとうございます(笑)。ゴールデンウィーク前に比べたら、少しずつよくなっているのですが、もっともっと高いレベルを要求されると思っていますので、ここで満足せず、日々の練習を頑張っていきたいと思います」

■チームの雰囲気はどうですか。
「先輩方がとてもやさしくて、寮の雰囲気も良くて楽しいです。オンとオフの切り替えがすごくきっちりしていて、オフのときにはとてもやさし くて楽しい先輩方も、グラウンドに入ったとたん、スイッチが切り変わって、とても厳しく指導してくださるので、ありがたいですしとても勉強になります」

■最後に自分のここを見てほしいというプレーを教えてください。
「ラグビーを始めた頃からキックが得意だったので、まずはキック、そしてパスを見てほしいですね。それと、ランニングや仕掛けの部分が自分の課題ですので、これからはその部分を積極的に意識してやっていきますので、そこも注目して見ていただけたらと思います」

自らキックには自信があるというように、かなり難しい角度からのゴールキックも難なく決めるキック力の持ち主。また自身の課題もしっかりと把握していて、 その克服への取り組みも積極的、加えて物おじしない強い精神力も魅力だ。ポジション争いの熾烈なSOに、1年生ながら参戦。経験豊富な先輩たちをも脅かす ほどの楽しみな逸材だ。今後の成長次第でチーム力全体を左右する存在になるかもしれない。


《この日行われたその他の試合》

○帝京大学B 50-12 流通経済大学B●

1 前田恵→高田
2 亀元→田中
3 辻井→東恩納
4 松永真
5 藤崎→中川→大出→中川
6 伊藤哲
7 松永浩→藤田→成合
8 小山田
9 天野→塚本→小平→塚本
10 渡辺→平井
11 柳→安部
12 太田
13 木村→安田
14 吉原→木崎
15 徳富→磯田


《NEXT MATCH PREVIEW》

【5月22日(日)VS慶應義塾大学 小瀬スポーツ公園陸上競技場 14時キックオフ】
春季オープン戦の第3戦は、山梨招待試合、慶應義塾大学戦。まだまだ勝敗を意識する時期ではないが、昨年度の対抗戦で敗れているライバル・慶應義塾大学戦 となれば、俄然気持ちも盛り上がるに違いない。お互いの意地とプライドのぶつかり合いの中で、いかに冷静に自分たちの基本プレーができるかがカギとなろ う。

(文/木村俊太、写真/志賀由佳) 

特集一覧