REPORT
レポート
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春季オープン戦・第5戦 明治大学戦
2011/06/05
課題と収穫を明確に意味ある敗戦
6月5日(日)・帝京大百草グラウンド●帝京大学A 5ー19 明治大学A○
《 出場メンバー 》
1 前田恵→猿渡
2 白→泉
3 西村→出渕
4 今村
5 マニング
6 小山田→杉永
7 天野→ゴン
8 中川→堤
9 滑川
10 森田
11 南藤→小野
12 橋口→荒井→橋口→荒井
13 太田→南藤
14 菅谷→伊藤拓→菅谷→伊藤拓→菅谷
15 竹田
春季オープン戦第5戦は、今季ここまで全勝の明治大学との対戦。春シーズンの明治は、東海、早稲田、同志社を破り、勢いに乗っている。帝京としては、現時 点での自分たちの進行具合を計るには格好の相手だ。この春に取り組んでいる、ボールと人を積極的に動かすラグビーをしっかりとやり切りたいところだ。
【前半戦】
この日の百草グラウンドの観戦席はぎっしりと埋まり、バックサイド側にまで人があふれている。この春一番の注目度の一戦は、開始早々から帝京ペースで進 む。FW、BK一体の攻撃で前に出ると相手の反則を誘い、キックで敵陣深く攻め込む。FL小山田の突破でさらに前進をはかり、反則を得ると迷わずスクラム を選択。安定したスクラムから出たボールを展開し、WTB菅谷のスピードで大きくゲイン。しかし、ここは相手ディフェンスに阻まれ、攻めきれない。
チャンスを活かしきれないと、今度は一転、苦しい展開に。パスミスから一気にゲインされ、自陣ゴール前で反則を取られてしまう。重量FW明治もスクラムを 選択。帝京はうまく組み切れず、スクラムでの反則を取られてしまうが、明治はそのたびに再度スクラムを選択する。ここは耐えどころとこらえる帝京FW。だ が最後はスクラムからこぼれたボールをSH下村に拾われ、タックルを掻い潜られてトライを許してしまう(0-7)。
春から積んできたトレーニングや遠征2試合を含む練習試合の疲れもあり、やや動きの固い帝京フィフティーン。CTB橋口、SO森田らも懸命なタックルを見せるが、リズムを完全に掌握しきるには至らない。
橋口に加え、2年目を迎え積極的なアタックに拍車がかかったFB竹田らが前進し、ラックからの素早い球出しで展開をはかるが、ラックに人数をかけない相手 ディフェンスは常に横に広がって待ち構えている。展開によって数的有利を作りたい帝京だったが、逆に味方がラックに巻き込まれ、人数が足りなくなる。この 状態でボールを奪われると、一気にピンチになるが、森田、WTB伊藤(拓)らの好タックルなど、帝京のディフェンスも堅い守りで防ぐ。
攻め込まれた位置でPR西村、HO白らが踏ん張り、渾身のビッグスクラムでターンオーバーを見せるなど、相手の攻撃にしっかり耐えるものの、攻撃では相手のディフェンスに阻まれ、攻めきれない。結局前半は0-7で折り返すこととなった。
【後半戦】
ハーフタイム。岩出監督から「春だから勝敗は関係ない、より冷静に、激しくいこう」と声がかかる。さらに「敵は明治ではなく、自分たち。もっと自分たちから攻めていこう」と冷静にさとす。
後半戦が再開される。その声に応えるかのように、帝京は原点に戻り積極果敢に連続展開を試みる。だがあと一歩で(レフェリングの解釈の違いもあり)密集で反則を取られて、チャンスを逸してしまう。
その後ペナルティから攻め込まれて、ラインアウト・モールを組まれるが、ここはしっかりと耐えてターンオーバー。ピンチを脱する。このあたりから、BK展 開とともに森田がキックを効果的に使い始める。好タッチキックで深く攻め込む。相手ラインアウトで再三のゲットを見せたLOマニング、幅広い動きを見せた NO8中川、後半出場のCTB荒井の粘り強いプレーで、やや優位に後半戦を進める。
迎えた32分。帝京は連続攻撃から森田が仕掛けると、前に出る相手ディフェンスの裏へ絶妙のゴロパント。するとフィニッシャーWTB菅谷が猛ダッシュ。転がるボールをゴール前で拾うとそのままインゴールへ。ようやくこの試合初のトライを決める(5-19)。
これで勢いを取り戻した帝京はその後も積極的な展開を見せるも、そのままノーサイド。今シーズン、学生相手では初の敗戦となったが、今後取り組むべき課題 を確認できたと同時に、特にPR前田、LO今村、FL天野、中川、CTB太田、WTB南藤ら、今季からAチームに名を列ね始めた(テスト段階の)選手に とっては貴重な経験になったに違いない。土台作り、そしてまだまだ仕込みの段階のチームにとっては、多くの収穫を得ることができるゲームとなった。
《試合後のインタビュー》
□岩出雅之監督
「今日はたくさんの方々にご観戦いただきありがとうございました。今日のゲームは、『明治さんがしぶとく、帝京はまだまだ』という内容でした。ただ、もう 一度、きちっと気を引き締めてやり直すためのモチベーションを高めることができるという意味で、いい収穫をいただいたと思っています。結果は結果として しっかりと受け止めなければなりませんが、学生には敗戦に対してネガティブになることなく、今後の練習に対して自分に厳しく前向きに取り組んで行ってほし いと思います。
今日は反則が多くなってしまい、最後まで自分たちのリズムを作ることができませんでしたが、これからもう少し経験値を増やしていって、対応できるようになっていければ大丈夫でしょう。
学生たちには『もう一皮むけないといけない』という要素があることを感じ取ってくれればと思っています。その要素にはプレーの厳しさもありますし、全力を 出し切るということもありますし、流れの中での状況判断といったこともあるでしょう。そういったさまざまな要素について、われわれもアドバイスしますが、 学生自身が自ら気づいてほしいと思っています。そうした気づきによって成長する姿をみなさまにお見せできるよう努力していきますので、これからも応援よろ しくお願いいたします」
□キャプテン・SO森田佳寿(4年)
「今日は先週、先々週と雨であまりできなかった、ボールを動かしてフェーズを重ねて走り勝って得点するというテーマに取り組みました。しかし、明治さんが ブレイクダウンにあまり人数をかけてこなくて横に広がるディフェンスをしてきたことと、うちのFWが走れていなかったことで、逆にフェーズを重ねることで 自分たちの人数が減っていくという形になってしまいました。
うちのラインアウトの高さでプレシャーをかけられる部分で、少しキッキングゲームも狙うこともしましたが、当初意図していた形で攻め込めませんでした。ま ずはセットプレーでいいボールを出すこと。それと、ゲインラインを切れないために、相手の横に広がるディフェンスが機能してしまったので、ボールをもった ら倒れずにしっかり前に出ること。そして、ディフェンスが開くことに対してのブレイクダウン周辺への仕掛けなどができていれば、違った展開になっていたと 思います。
明治さんとは夏にもやる予定ですし、秋には必ず当たる相手なので、この悔しい気持ちを忘れずに日々の練習に取り組んでいきたいと思います」
□久しぶりの先発でFW陣を引っ張る・PR西村尚記(4年)
「今日は明治さんが相手ということで、セットプレーで負けないようにしっかりやろうと思って臨みました。いい局面もありましたが、特に前半ですが、もっと激しく行けたはずのところで相手のスクラムに付き合ってしまい、いいスクラムが組めなかった点は反省です。
FWリーダーとしてみんなにポジティブな声をかけていこうと思ってやっていますが、そこはしっかりできたと思います。FWリーダーという立場に恥じないようにチームをまとめて、帝京の強いFWをしっかりと作っていけるように努力していきます」
□タックル力を買われてFLに抜擢・FL天野寿紀(3年)
「自分の得意なプレーはタックルなので、タックルと思い切りのよさでFWを元気づけたいと思って臨みました。また、SHとしての経験を活かして、気の利い たプレーができることを目指してやっています。まだまだ体づくりの部分から足りないので、しっかり体づくりをやっていきたいです」
□再三の縦突進を見せた・CTB橋口功(4年)
「ケガで欠場した南橋の分まで、自分がCTBの核となってリードしていこうという気持ちで今日のゲームに取り組みました。思い切り攻められた場面もあった のですが、明治さんのしつこいディフェンスに対して、接点でもっとドライブをかけて前に出ていきたかったのですが、それができなかったところは反省点で す。もう少し粘ってゲインをはかれたら、FWもBKももっと前に出て圧力をかけられたのではないかと思います。
ディフェンスではいいタックルが何本かあったのですが、そこでターンオーバーできずに逆にペナルティを取られてしまったので、きっちり立ってプレーする意 識を強くもつ必要性を感じました。BKの核として活躍できるように、しっかり練習してさらにレベルアップしていきたいです」
□突破力でCTBからFLへ・FLゴン・ジョンヒョク(4年)
「いつものCTBと違ってFLとしては初出場だったので緊張しましたが、強かった去年の第三列をイメージして、そのくらい高いところを基準にして思い切っ ていこうと思って臨みました。試合中CTBのような動きをしてしまったり、タックルも受け身になってしまうところもありましたが、それらを直せるように もっと意識して練習したいと思います。今日は反則が多かったのですが、そこを修正していければ、次は絶対にもっといい試合ができると思います」
□速さに強さが加わり好タックルを連発・WTB伊藤拓巳(4年)
「久しぶりのAチームでしたが、帝京の代表というプライドをもって試合に臨みました。自分のやるべきことはタックルとボールをもらったときに前に出て、ト ライを取りきることだと思っていますが、今日は細かいミスも出てしまったので、次はそうしたミスが出ないようにしたいです。
ボールをもらったら味方が少なくてもしっかりと立って、ボールをキープし続けられるような強い選手になりたいのですが、そのためにスピードだけでなく力強 さを身につけて、チームに信頼してもらえるようなプレーを毎試合継続できるように自分のレベルを上げていきたいと思っています」
《PICK UP PLAYERS》
ワークレートの高さでFW第三列の核になるNo8 中川嘉倫(3年)
NAKAGAWA YOSHINORI
1990年8月5日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
御所工業高校出身
身長170cm/体重81㎏/血液型A型
■Aチーム初先発でしたが、今日の試合はどんなテーマで臨んだのでしょうか。
「初先発ということで、とにかく思い切って行こうと思って臨みました」
■思い切って行けたのではないですか。
「行けた場面もありましたが、走り込んでボールをもらうプレーでポジショニングが浅くなってしまって、スピードに乗り切れなかったところは反省です。もっと縦に行く回数も多くできたと思いますし、今日は反省点が多かったです」
■明治大学と戦ってみた印象は。
「同学年の選手も多くて、負けられないと思っていました。ただ、相手がどうこうというよりは自分のディフェンス力をもっと上げなければいけないと思いまし た。もっとしっかり体づくりをして、プレーの面でももっともっと努力して、次にやったときには自分のいいプレーで勝てるように頑張りたいです」
■得意としているプレーはどんなプレーですか。
「アタックで、相手のディフェンスラインをこじ開けていくようなプレーをどんどん出していきたいです」
■今後の練習で重点的に取り組むべきテーマはどんなことでしょうか。
「相手のディフェンスをこじ開けていくために、もっと深い位置から走り込めるように練習します。それと、ディフェンスでもっと体を張れるための練習と、体力づくりにしっかりと取り組みたいです」
■今年の帝京はボールと人を積極的に動かしていこうということに取り組んでいますが、得意の縦突破はそうした戦略に欠かせないと思います。こうした取り組みと自身のプレーについてはどう考えていますか。
「自分が縦に切っていくプレーをもっと出せれば、FWもBKも前に出られて、もっとボールも人も動かせるようになると思うので、そうしたプレーをどんどん出して自分のプレーをチームの中で活かしていきたいです。」
■最後に今後の抱負を聞かせてください。
「今日は貴重な経験ができてよかったです。まだまだ足りないところがありますが、もっとレベルアップしてAチームで活躍できるように頑張ります」
帝京FWの強みである縦への突破を得意とする、小気味の良いプレーヤーだ。No8としてFWを後ろからまとめていこうという意識も高い。体は小さいが芯が 強いので、今後よりいっそう鍛えていくことで突破力にも磨きがかかるだろう。昨年の強力な第三列の継承者となれるかどうかは、高いレベルでの経験値と体力 づくりにかかっているのかもしれない。ますます成長が楽しみな逸材だ。
《この日行われたその他の試合》
○帝京大学B26ー12明治大学B●
1 佐藤→竹井→合月
2 亀元→田中→石澤→亀元
3 辻井→東恩納→古賀雄→東恩納
4 松永真
5 木下
6 松永浩
7 長野→平野
8 斉藤→河口
9 塚本→小平
10 中村→朴
11 永野→山下
12 渡辺→佐々木
13 安田→前原
14 池上
15 徳富→木崎→柳
《NEXT MATCH PREVIEW》
【6月12日(日)VS東海大学 ニッパツ三ツ沢球技場 14時キックオフ】春季オープン戦第6戦は、リーグ戦の覇者・東海大学との対戦。昨年の大学選手権では準決勝で、一昨年は決勝戦で死闘を演じた好敵手だ。強敵相手が続くが、ひるむことなく、横浜のファンの前で帝京ラグビーの進化をしっかりと披露したい。
(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
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