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春季オープン戦・第8戦 法政大学
2011/06/26
春シーズン最終戦を勝利で締め括り!
6月26日(日)・帝京大百草グラウンド○帝京大学A 31-21 法政大学A●
《帝京》
1吉田→前田(恵)→大出、2白→泉→白、3猿渡→出渕、4小瀧→今村、5マニング、6藤田、7天野→成合→平野、8大和田、9滑川、10森田、11柳→池上、12南橋→南藤→山崎、13南藤→中村(亮)、14菅谷、15竹田→小野
《法政》※先発のみ
1大河原、2草間、3浅岡、4後藤、5宮田、6武者、7小池、8堀、9本村、10高城、11松原、12岡本、13川原田、14竹下、15森谷
春季オープン戦の最終戦は法政大学との対戦。帝京としては、春シーズンの締めくくりとして、ここまで取り組んできた課題をどこまで成果として出し切れるか。勝敗と同時にその内容が問われる一戦だ。
春シーズンの取り組みの中でもこの試合で特に注目される点は3つ。まずは、先週のゲームで大きな進化が見られた「ディフェンス力」。2つ目はボールと人を積極的に動かす「アタック力」。3つ目はそのアタックにつながる安定した球出しを支える「FW力」だ。もちろんまだ春の段階だから個を試す段階でもあるが、以上に注目しながらゲームを見ていきたい。
【前半戦】
序盤。程よい緊張感を楽しむ雰囲気が受け取れるのは帝京。その帝京が立ちあがりから攻め込む。ラインアウトからのボールを受けたSO森田が縦に突破し、大きくゲインする。止められてもFWの早い寄りですぐに展開。WTB菅谷まで瞬時に展開しいきなりの先制トライ(7-0)。まずは「アタック力」の部分で結果を出し、幸先のよいスタートを見せる。
その後、やや攻められる時間帯になるも、SH滑川、CTB南藤らの好タックルでピンチの芽を事前に摘み取る。裏へのキックを多用する法政に対して、FB竹田らがしっかり戻って対応する。この日も竹田はディフェンスの意識が高く、キックも安定。好ポジショニングで相手のキックをチャージしたり、場面によってはラックにも入り、越えていくことでのターンオーバーを試みたりと積極的なプレーでチームを盛り上げる。
竹田自身はこう振り返る。
「今日はタックルに行く機会はほとんどなかったのですが、ディフェンスの意識は常に高くもってプレーしています。法政大学さんはどこからでもBK展開で外にもっていけるチームだったので警戒しましたし、見習うべき点もいっぱいありました」
17分にはまたも森田が魅せる。スクラムから安定したボールが出ると、縦に仕掛けてラインブレイク。FWがつないで、最後はまた大外・菅谷までつながりトライ(12-0)。
なおも攻め続ける帝京。いつもながら攻守にわたって存在感を示すCTB南橋が何度も縦に突破する。
FW戦も優位に進める。スクラムでのターンオーバーなどセットプレーで力強さを見せ、フィールドプレーでもボール争奪の場面で総じて優位に立つ。だが、実際にプレーしていた選手たちの感じ方は少し違っていたようだ。
PR吉田はこう振り返る。
「セットプレーからチームの流れを変えていけるようにと思ってやっていたのですが、マイボールスクラムで安定感が足りませんでした。圧倒できるセットプレー、ブレイクダウンをもっと目指してやっていきたいです。スクラムでは前3人で言えば、いつもと違った組み方をされたときの対応が課題です。後ろで言えば、去年と比べて後ろの押しが甘いです。自分も強くならなければいけませんが、スクラムは1人で組むものではないので、後ろからの押しもとても重要です」
PR猿渡はこう語る。
「相手ボールスクラムではプレッシャーをかけられましたが、マイボールのとき、相手の組み方に付き合ってしまい、安定した球出しができなかったのは課題です。まずはヒットで相手に組み勝つようにしたいです。フィールドプレーでは、まだ接点から接点への寄りが遅い部分がありましたし、順目順目に行きすぎて逆目を狙われたりしたので、もっとチームでコミュニケーションをとって相手を抑えられるようにしたいです」
FW戦で圧倒したいという高い目標があるからこその反省点だ。
35分。そのFW戦でさらに圧倒する場面がやってくる。相手ゴール前スクラムからモールを組み直すと、そのまま押し込んでHO白がトライ(19-0)。FW力もしっかり見せつけ、結果を出した。
前半終了間際に攻められるシーンもあるが、WTB柳の好タックルなど、厳しいプレッシャーで守り切り、前半を19-0で折り返すこととなった。
キャプテン森田は前半戦をこう振り返る。
「今日の前半は、今年の中でも一番気持ちの入ったいいゲームだったと思います。みんな、気持ちの乗ったタックル、アタックをしていても、とてもいいプレーが出ていました」
圧倒したかったという高い目標を見据えれば修正すべき点もあったが、これまでの成果をしっかりと見せられた前半戦だった。
【後半戦】
後半に入るとやや様相が変わる。ミスから相手に攻め込まれ、自陣ゴール前で耐える時間帯が続く。それでも南橋、柳らの好タックルでしのぐ。今季のBKはみな、いい動きでチームに勢いをつける。ラックでのサインプレーでは、南藤がラックの真ん中を抜けていくプレーで盛り上げる。残念ながらペナルティを取られてしまうが、決まっていれば流れを変えられるビッグプレーだ。
南藤は振り返る。
「あのラックの真ん中を抜けていくシーンは滑川さんとのサインプレー。去年、吉田光治郎さんがよくやっていたプレーなので、それをイメージしてやりました。ああいうひたむきな仕事をペナルティなしでしっかりできるようにしたいです。自分は体が大きい方ではないので、縦に入っていくアングルとかスピードを常に考えてプレーしています。そうした考えるプレーを伸ばして、さらに自分の強みにしていきたいです」
試合は、このあたりからお互い点の取り合いとなる。それでもFWは献身的に走り、BKの仕掛けも現時点で帝京の最大の武器だ。またしても森田の突破からBK展開。最後は戻ってもらい直した森田が飛び込んでトライ(24-14)。直後には3点差まで追い上げられるも、24分にはラインアウトからモールを押し込んでトライ。その後はLOマニング、森田、滑川らの好タックルや、FW陣のブレイクダウンでのプレッシャーなどで最後まで守り切り、31-21で春のオープン戦の最後を勝利で締めくくった。
注目の「ディフェンス力」「アタック力」「FW力」に関しても、特に前半はかなりいい形で披露することができたのではないか。特に「アタック力」では人とボールがしっかりと動き、相手の弱点をついていくプレーで得点を重ねた。それを支えたのが「FW力」であり、さらに無失点に抑えた「ディフェンス力」も冴えていた。
束の間のOFFを経て、今度は夏に向け強化にいそしむシーズンに突入する。春に身につけた力を土台にして、夏、秋には次のステップへと進み、さらなる成長を遂げていく季節となってくる。
《試合後のインタビュー》
■岩出雅之監督
「今日もたくさんの方にご観戦いただき、ありがとうございました。今日のゲームは『Show the Spirit』をテーマとし、自分たちの気持ちをプレーや発言や行動にどれだけ出し切れるか、それを自分のやるべきこととリンクしてやり切っていこうという話をして臨みました。いいところもたくさん出ましたが、芯の甘さが出てしまった部分もあり、そこは試合後選手とともに確認を行いました。しんどいときにいかにきっちりとしたプレーができるかが大事なので、そうした場面で楽な選択をせず、もっともっとしぶとさ、力強さを出してほしかったということを、特にリーダーに、そしてそのリーダーを選んだ4年生に伝えました。
この春シーズンを通して、ボールを動かして得点する力をつけることにチャレンジしてきました。まだまだ力不足な点もあり、失敗もありましたが、それも今だからこそできる必要な体験です。BKがボールを動かすためには、力強いFWが不可欠です。FWの強さ、しぶとさを前面に出せるように、公式戦までの3ヵ月でしっかり整えていきたいと思っています。この春の厳しい体験、そして夏にあるであろうさらなる厳しい体験を乗り越えて、学生たちは頂点を目指すにふさわしいたくましさを身につけてくれるはずです。みなさまにはその成長を温かく見守っていただきたいと思います。今後とも応援、よろしくお願いいたします」
■キャプテン・森田佳寿(4年)
「今日は春シーズンの最終戦ということで、春にチャレンジしてきたことへのいい締めくくりができるようにと思って臨みました。ただ、春シーズン最後といっても、夏、秋につながっていくゲームなので、とにかく気持ちを前面に出したゲームをしようと思っていました。前半は気持ちの入ったいいプレーが出たのですが、後半、甘い選択をしてしまった場面があったのは今後の課題です。常に精度の高い、逃げないプレーができるようにしていきたいと思います」
■久々の出場でも存在感を示した・PR吉田康平(4年)
「教育実習の期間、チームを離れていて、久しぶりのゲームだったのですが、個人としては試合の感覚や判断力、筋力、スタミナなどの部分を早く取り戻さなければいけないと感じました。FW陣は去年のチームと地力は遜色ないと思いますが、経験を積んで勝負できるチームにしていきたいです。自分も含めて、芯の部分、メンタルの部分がやや甘いと思っています。練習から気を抜かないプレーヤーこそが、試合で力を発揮できると思っているので、プレーでも私生活でも自分がしっかりと率先してやってみせて、下級生たちを引っ張っていきたいと思っています」
■高い意識でFWを牽引・PR猿渡康雄(3年)
「自分としては、スクラムとタックル、接点での激しさを課題として臨みました。今後はセットプレーはもちろん、フィールドプレーで相手のスペースを見つけて積極的にアタックして、ゲインして、しっかりとした球出しをするという意識をもっと高くもってやっていきたいです。
そのためには、まずは体づくり。次にセットプレーで相手に負けないこと。そして、しっかり走れるようにすること。さらにはケガをしないことを目標にやっていきたいです。FW陣はもっともっと一人一人が強くなって、その力をFW全体に貢献できるようにしていかなければと思っています」
■ラインアウトで安定したキャッチングを見せた・LO小瀧尚弘(1年・春シーズン新人賞)
「今日はジャッカルで相手のノットリリースザボールを誘ったことと、マイボール・ラインアウトをしっかりキープできた点がよかったです。ただ、体力面がまだまだなので、体を大きくして、体力もつけて、80分間走り切れるようにしたいです。タックルをはずされてしまったシーンもあったので、夏に向けて改善していきたいです。自分の高さを活かしたプレーでアピールできるように頑張っていきます」
■BKのユーティリティ・プレーヤーとして開花し始めた・CTB南藤辰馬(3年)
「法政大学さんは展開してくるチームなので、『今日はディフェンスの日だ』と思って臨みました。前半は相手の11番が入ってくるのが見えたので、思い切ってタックルに行って止めることができたのですが、後半、似たようなシーンでは自分の思い切りを逆手に取られて抜かれてしまったのは反省です。センターとしての経験値の浅さが出てしまいました。ただ、以前はアウトサイド・センターというポジションに不安もあったのですが、今は楽しくなってきています。今後も自分の仕事をひたむきにやってきたいです」
■安定感に力強さも加わった・FB竹田宜純(2年)
「今日は、練習してきたペナルティからのタッチキックの部分で、練習の成果を出せました。相手のキック処理などミスも出てしまったことは反省点です。春シーズンはケガで出遅れてしまったのですが、去年と比べると体力づくりを意識してやってきて、その成果も出てきたように思います。これからもしっかりと体づくりを続けていきたいです。
今後は、1つのキックでゲームの流れを変えられるようなプレーや、アタックで突破役になれるプレーができるようにしていきたいと思っています」
■FBとして積極性が光った・FB小野寛智(3年)
「今日は、キックされた後のカウンターと最後の砦としてのタックルを意識して臨みました。まずまずできたと思いますが、カウンターの機会はあまりなかったのですが、タックルで抜かれてしまった場面があったので、夏はタックルを自分のテーマの一つにして強化していきたいです。アタック面では、相手のディフェンスを見て、このプレーがいいという判断ができるようにしていきます。どのポジションに入っても、しっかり考える力をつけていきたいです」
《PICK UP PLAYERS》
WTB 柳佳貴(3年)YANAGI YOSHITAKA
1990年8月28日生まれ
経済学部経済学科
大津高校出身
身長170㎝/体重75㎏/血液型A型
■今日はどういったテーマで試合に臨んだのでしょうか。
「監督からいつも言われているのですが、自分の課題はタックルなので、意識してタックルに行こうと思っていました。Aチームでの試合は3試合目でまだまだ慣れていないのですが、とにかく思い切ってタックルに行って、しっかり1人目で倒すという意識でやりました」
■ナイスタックル連発でした。
「今日は、タックルに関してはかなりよくできていたと思います。前回のサントリー戦ではタックルする場面が少なかったので、今日はよかったです」
■自分自身の一番の強みはどこでしょうか。
「ボールをもらってから相手をステップで抜くようなランニングです。今日はあまり出せませんでしたが」
■つながっていればトライというシーンはありました。
「南橋さんが突破して大きくゲインしたあとですね。でも、ボールを落としてしまってはダメです。反省しています」
■2戦連続、Aチームでの先発出場ですが、どんな点に期待されていると思いますか。
「自分は足が特別速いわけではないので、切れとかステップで抜いていくことを期待されていると思っています。まだAチームの経験が少ないですが、もっと頑張ってみんなに認めてもらえるように練習でも試合でもいいプレーをしていきたいです。試合経験が豊富な菅谷とか伊藤拓巳さんに追い付けるように頑張りたいです」
■柳選手はまた違ったタイプなので、そこを活かせれば対抗できるのでは。
「そう思って頑張っています」
■春シーズンを総括して成長したと思える点はどこですか。
「春はAチームからDチームまで経験しましたが、Aチームのプレーの激しさを体感できたことが収穫ですし、自分のフィットネスをそこにもっていこうと思えるようになったこと自体が成長だと思っています。もっと体づくりをやらないとAチームでは通用しないと思っています」
■WTBとしては体づくりと同時に体の切れも維持する、バランスがやはり大切ですか。
「切れの部分は普段の練習で力をつけていって、その切れを落とさずに筋力もつけていきます。ただ、おそらく、切れがなくなるほどの筋肉が急に付いたりはしないと思うので大丈夫です(笑)」
■オフのときはどんなことをしてリフレッシュしていますか。
「部屋で本を読んだり、友だちと買い物に行ったり。あとは、映画を見たりですね。最近は自動車学校に通っていたのですが、これもすごくリフレッシュできました」
■今後の抱負を聞かせてください。
「体づくりをして、Aチームで活躍できるように頑張りたいです。まだまだ、チームへの貢献度は高くないですが、もっと貢献できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」
帝京ラグビーの強力BKに、また新たな戦力が現れた。スピードよりも切れで勝負するWTBは、今後の成長次第で大きな得点力が期待できる。本人は課題として挙げるが、ディフェンスの意識も高い。経験を重ねることで、現BK陣とのコミュニケーションもよくなっていくだろう。推薦枠ではない、いわゆる一般入試で入学し、Aチームの先発を任されるまでになったその成長力には目を見張るものがある。謙虚ながらも貪欲さがあり、さらなる伸びしろを感じさせる。夏にどこまで伸びるか楽しみだ。
《NEXT MATCH PREVIEW》
春シーズンのオープン戦はすべて終了。試験期間などを含め、しばしのオフとなる。なお、今後の予定などは決まり次第、当HPにてお知らせします。(文/木村俊太、写真/志賀由佳)
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