REPORT
レポート
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第53回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準々決勝 大東文化大学戦
2016/12/19
12月17日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学55-19大東文化大学●
《帝京大学》
[FW]
(1)西⇒淺岡(2)堀越⇒呉(季)(3)垣本⇒呉(味)(4)飯野(5)姫野⇒金(嶺)(6)ロガヴァトゥ(7)亀井(亮)(8)マクカラン⇒元田
[BK]
(9)小畑⇒末(10)松田⇒今村(11)竹山(12)金村(13)矢富⇒重(14)吉田(15)尾崎
《大東文化大学》※先発のみ
[FW]
(1)古畑(2)栗原(3)中村(4)服部(5)ファカタヴァ(タ)(6)湯川(7)河野(8)佐々木
[BK]
(9)小山(10)川向(11)サウマキ(12)畠中(13)戸室(14)中川(15)大道
【前半】【得点経過】
【4分】帝0-7大
ラインアウトからSHに抜け出されてトライを奪われる。
【17分】帝3-7大
SO松田がPGを決める。
【20分】帝10-7大
ラインアウトからモールで押し込む。HO堀越が持ち出してトライ。ゴール成功。
【34分】帝17-7大
ラインアウトからモールを押し込む。HO堀越が持ち出してトライ。ゴール成功。
【37分】帝24-7大
ラインアウトが乱れるも、LO飯野が拾って前進。ラックからSH小畑-PR西と渡り、西が前進。タックルされるも粘ってそのままトライ。ゴール成功。
【後半】【得点経過】
【4分】帝31-7大
スクラムからNo8マクカランが持ち出し、そのまま抜け出してトライ。ゴール成功。
【10分】帝36-7大
ラインアウトからモールを押し込み、HO堀越が押さえてトライ。
【16分】帝43-7大
ターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田-LO飯野と渡り、飯野が抜け出してトライ。ゴール成功。
【23分】帝43-14大
クイックリスタートから攻められ、抜け出されて、トライを奪われる。
【31分】帝48-14大
ラインアウトからモールを押し込み、HO堀越が押さえてトライ。
【34分】帝48-19大
ラインアウトから展開され、抜け出されてトライを奪われる。
【38分】帝55-19大
相手がノックオンしたボールをSH末が拾ってつなぐ。HO呉(季)が前進。ラックからBKに展開。一度、パスが乱れるもFB尾崎が拾ってWTB竹山にパス。竹山が抜け出し、走り切ってトライ。ゴール成功。
《BRIEF REVIEW》
大学選手権が始まった。8連覇を狙う帝京は対抗戦1位枠でのシード権を得て、準々決勝からの出場。対戦相手はリーグ戦3位、能力の高い選手が揃う大東文化大学。帝京はアップ時から気合い十分。だが、試合序盤はその気合いがかえって硬さにつながったのか、攻めてもミスが出てチャンスを潰してしまう。4分、ラインアウトから相手SHに抜け出され、先制点を与えてしまう。その後も、スピードとパワーを兼ね備えた相手のランナーに抜け出されるシーンがあるが、FB尾崎らの渾身のタックルで止める。17分にSO松田がPGを決めると落ち着きを取り戻し、直後の20分にはモールからHO堀越が持ち出し、逆転トライを奪う。ターンオーバーされた場面でも、LO飯野が強烈なタックルで相手のペナルティを誘うなど、ミスに対しても落ち着いて対応し、大きなダメージには至らせない。前半を24-7で折り返した。後半も落ち着いて追加点を重ねる。4分にスクラムからNo8マクカランが持ち出してトライを奪い、さらに10分、16分と加点。試合の流れを完全に引き寄せた。守っても、No8マクカラン、WTB吉田らが、突破を図る速くて大きな相手を一撃のタックルで止める。HO堀越はラインアウト・モールから4トライを奪うなど、セットプレーも総じて安定。WTB元田、LO今村、PR呉(味)、HO呉(季)ら途中出場組も激しいタックルを繰り出し、55-19でノーサイド。帝京が大学選手権準決勝進出を決めた。
《POST MATCH INTERVIEW》
■岩出雅之監督
「大学選手権準々決勝の対戦相手が大東文化大学さんに決まったときから、かなり強力な相手と戦うことになると感じていましたので、私自身もとても気合いを入れましたし、学生たちもそれに応えて気合いを入れてくれたのではないかと思っています。対抗戦終了から今日まで試合はありませんでしたが、試合があるのと変わらないような、いい2週間を過ごすことができました。今日はミスもありましたが、全体としては最後まで引き締まったゲームをしてくれたと思っています。戦略戦術としては、大東文化大学さんの強みの部分を出させず、ウィークポイントを突いていくということを、学生たちがしっかりと理解して、厳しく実行してくれたことが今日の結果につながったと思っています。また、強力なランナーにいいタックルをすることで、試合を通じて成長できるのではないかと思えるシーンも見えましたし、今日の試合が次につながるようにという部分と、まずは今日は今日として集中して戦うという部分と、その両方をプレーの中で出してくれたのではないかと思っています。次の天理大学さんとの戦いに向けては、まずはコンディションを整えて、そしてしっかり分析をして、学生が理解できる内容に落とし込んで、きちんとした準備をさせていきたいと思います。」
■キャプテン・FL亀井亮依(4年)
「今日は、前半のスタートから、アタック、ディフェンスともにコンタクトの部分で前に出ていこうと言って試合に臨みました。しかし、序盤に相手のキーマンに走られて、チャンスを与えてしまったところは課題として改善していきたいです。アップ時にちょっと硬さがあったように感じたので、キャプテンとして声掛けをしていったつもりでしたが、スタートのところでコミュニケーション不足が出てしまいました。ですが、その後はチームとしてしっかりとコミュニケーションをとって、自分たちの強みであるディフェンスからチャンスを作ることができたので、そこは次につながるいい自信になったと思います。次戦の相手の天理大学さんとは、春に一度、招待試合で対戦しているのですが(6月5日の招待試合では66-24で勝利)、とてもいいチームという印象が残っています。まずは自分たちのコンディションを整え、いい準備をして、チーム一丸となって戦っていきたいと思います。」
■相手のキーマンに強烈なタックルを浴びせる・LO飯野晃司(4年)
「今日は、チーム全体としてフィジカルの面で前に出ることができたと思います。大東文化大学さんがどんどん前に出てくる中で、さらに自分たちが前に出ることができました。ですが、コミュニケーションミスやイージーミスも多かったので、次の天理大学さんとの試合に向けて修正したいです。出場していない選手たちが支えてくれて初めて、僕たちはファーストジャージを着て出場することができるので、チームの他のメンバー、特にここまで4年間一緒に戦ってきた同期の4年生たちの分まで僕らが一生懸命やって、今後もできることを全力でやっていきたいです。大学選手権は負ければ終わり。次も大事に戦いたいです。天理大学さんのキーマンになる人たちに対してもタックルやアタックでしっかり前に出て、帝京の強みであるフィジカルで圧倒したいです。」
■短時間の出場ながらスクラムを安定させた・HO呉季依典(2年)
「この2試合、リザーブメンバーに入ることができていますが、少ない出場時間で自分のいいパフォーマンスを出そうとして、空回りしてしまっている印象があります。ですが、Aチームで出場できること自体、自分にとっていい経験になっていますので、もっともっといい経験を積み重ねていけるように、メンバー争いも頑張っていきたいです。この大学選手権という大きな舞台で兄(PR呉味和昌)と一緒に出場することができ、スクラムを組めたことはとてもうれしいです。出場して最初のプレーがスクラムだったのですが、兄から『今までやってきたことを頑張って出そう』と言われたことで、自信を持ってスクラムを組むことができました。でも、これで終わりではないので、次の試合でもまたピッチで一緒にプレーできるように頑張ります。次戦に向けては、まずはメンバー争いを勝ち抜いて、試合に出たらチームに少しでも貢献できるように頑張りたいと思います。」
■途中出場で攻撃をテンポアップ・SH末拓実(1年)
「今日は、チームとしては最初の入りのところがよくありませんでした。しかし、そのあとは帝京の強みであるFW戦で前に出て、モールでも得点できました。そこが勝利につながった要因だと思います。自分のプレーに関しては、あまり流れを変えることができず、納得のいくゲームではありませんでした。Aチームで出場する機会をいただいていますが、リザーブとして短い時間でどう自分のプレーを出していくかが課題だと思っています。また、自分の持ち味はテンポアップだと思っているので、後半、敵が疲れている状況でどれだけテンポアップできるかも課題です。次戦への2週間でしっかりレベルアップして、出場した時にはプレーをテンポアップさせ、得点につなげられるように努力したいと思います。」
《PICK UP PLAYERS》
弟と組むスクラムで自身の責任感を再燃させた
PR 呉 味和昌(4年)
GO MIWASUKE
1994年4月12日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
京都成章高校出身
身長181cm/体重115kg
■まずは、今日のゲームを振り返っての感想をお願いします。
「今日はケガからの復帰戦ということで、気持ちが少し空回りしてしまいました。あと、弟(HO呉季依典)もリザーブに入っていたので、一緒にプレーできたらいいなと思っていました。前半、帝京の方が少し落ち着きを欠いたところがあってクロスゲームになっていたので、出場機会がないかもしれないとも思ったのですが、後半、出番が来たので『よし、思い切ってやろう』と気持ちを入れてピッチに入りました。気持ちの準備はできていたと思います。」
■その弟の呉季依典選手とのスクラムは、組んでみてどうでしたか。
「スクラム自体は自分としてはあまりうまくいかなかったです。安定はしましたが、押すことができませんでした。もっとプレッシャーを掛けたかったです。次の試合ではもっとしっかり押したいです。」
■組む際はどんな気持ちでしたか。
「弟の分まで自分がしっかりやろうと思っていました。僕自身、帝京で兄(現サントリーサンゴリアス森川由起乙選手)とスクラムを組むことが目標だったのですが、それは叶わなかったので、今度は弟が来た分、僕が頑張らないといけないと思っていました。」
■進路はホンダに内定しているとのことですが、お兄さんとは対戦という形でスクラムを組むかもしれませんね。
「1番と3番なので、スクラムでマッチアップすることになるかもしれませんね。当初は、兄のいるサントリーでプレーしたいという気持ちもあったのですが、福田コーチから『お兄さんと戦うのもいいのでは』と言われ、またホンダさんから声を掛けていただいたこともあって、兄と戦う道を選びました。」
■この時期、帝京では毎年「4年力」という言葉がクローズアップされます。これについてはどう考えていますか。
「自分たち4年生がチームの先頭に立って引っ張っていかなければと常に思っています。特にこの時期の4年生が力を発揮するというのが、帝京の伝統にもなっていると思いますし、後輩たちにしっかりとした姿を見せていこうと思っています。今までの先輩方に負けないくらい、自分たちもリーダーシップをとっていきたいです。」
■では、次戦に向けての意気込みをお願いします。
「次戦の相手の天理大学さんとは春にも対戦しているのですが、スクラムでよくなかったところがあったので、しっかりリベンジしたいです。スクラムで圧倒して、ゲームを作っていけたらと思っています。」
ケガがあり、しばらく試合から遠ざかっていたが、ようやく回復し、大学選手権に間に合った。その復帰戦で弟・呉季依典との兄弟スクラムが実現。本人のインタビューからは出てこなかったが、スクラムを組む際、「今までやってきたことを頑張って出そう」と声を掛け、弟を落ち着かせたという。自身の復帰戦という部分だけでもメンタル作りが難しかったはずだが、加えて弟への気遣いも欠かさなかった。プレー面でも、出場してすぐに激しいプレーを見せた。弟とのスクラムが、4年生としてのリーダーシップや責任感の火を再燃させてくれたようだ。頼もしい4年生が帰ってきた。
《COLUMN》
――タックルと信頼――
この日の帝京は、アップ時からかなり気合いが入っていたように見えました。インタビューした限りでは「いつもと変わらないつもりでした」という意見が多かったのですが、これはまさに「意識」の領域の話。「無意識」の領域での気合いは、普段以上に入っていたようでした。
特に、アップ後半、タックルバッグ(コンタクトバッグ)を持った選手たちに一人ずつタックルするときの音が違っていました。スタンドから見ていたお客さんも思わず「すごい」と声を漏らすほど、「ドスン、ドスン」という音が響き渡っていました。
今さら何を言っているのかと言われてしまいそうですが、ラグビーで最も重要なスキルはタックルです。タックルはしないがボールキャリーは上手という選手と、ボールキャリーはしないがタックルは上手という選手がいたら、試合で活躍するのは間違いなく後者でしょう。
ラグビーはよく「信頼」が鍵を握ると言われます。チーム内の信頼、隣のポジションの選手との信頼があってこそ、いいプレーができるのです。おそらく「タックルはしないがボールキャリーは上手」という選手は、チームメイトから信頼を得ることはできないはずです。信頼のない選手が試合で活躍することはまずありません。
大学選手権準々決勝、相手の大東文化大学には大きな体にスピードも兼ね備えた、非常に高い能力の選手が揃っていました。大きな選手にタックルに行くというのは、とても勇気がいります。この日の帝京は、各選手がその勇気のいるプレーを全力でやり続け、大きな相手を一発で何度も裏返しました。
岩出監督は記者会見で「強力なランナーにいいタックルをすることで、試合を通じて成長できるのではないかと思えるシーンも見えました」と述べています。
強力なランナーにいいタックルをすることで、タックルを決めた一人一人は大きな自信を得たに違いありません。しかし、このビッグタックルはタックラー本人の成長だけではない、チームとしての大きな成長も促してくれます。
それが「信頼」です。
「あいつに任せれば、あの相手をタックルでしっかり止めてくれるはずだ。だから、自分はこっちのディフェンスに専念しよう」
チームメイトへの信頼は、そんなふうにチームディフェンス力をも高めてくれます。「あいつは信用できない。タックルしないかもしれない。だから自分があっちもこっちもマークしなければ」という状態では、きちんとしたディフェンスはできません。
帝京が得たこの日の勝利には、「信頼」という名の大きな副産物も一緒に付いてきました。
ラグビーの基本はタックル。これは「ラグビーの基本は信頼」という意味でもあるのです。
《NEXT MATCH》
第53回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝
対天理大学(http://www.tu-rugby.com/)
1月2日(月・祝) 秩父宮ラグビー場
14時10分キックオフ
過去の対戦成績:大学選手権2勝0敗
[天理大学の直近5戦]
10月23日 ○54-5近畿大学(関西大学Aリーグ)
11月13日 ○53-21立命館大学(関西大学Aリーグ)
11月27日 ○48-5関西大学(関西大学Aリーグ)
12月 3日 ○34-12同志社大学(関西大学Aリーグ)
12月17日 ○29-24慶應義塾大学(大学選手権準々決勝)
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
○帝京大学55-19大東文化大学●
《帝京大学》
[FW]
(1)西⇒淺岡(2)堀越⇒呉(季)(3)垣本⇒呉(味)(4)飯野(5)姫野⇒金(嶺)(6)ロガヴァトゥ(7)亀井(亮)(8)マクカラン⇒元田
[BK]
(9)小畑⇒末(10)松田⇒今村(11)竹山(12)金村(13)矢富⇒重(14)吉田(15)尾崎
《大東文化大学》※先発のみ
[FW]
(1)古畑(2)栗原(3)中村(4)服部(5)ファカタヴァ(タ)(6)湯川(7)河野(8)佐々木
[BK]
(9)小山(10)川向(11)サウマキ(12)畠中(13)戸室(14)中川(15)大道
【前半】【得点経過】
【4分】帝0-7大
ラインアウトからSHに抜け出されてトライを奪われる。
【17分】帝3-7大
SO松田がPGを決める。
【20分】帝10-7大
ラインアウトからモールで押し込む。HO堀越が持ち出してトライ。ゴール成功。
【34分】帝17-7大
ラインアウトからモールを押し込む。HO堀越が持ち出してトライ。ゴール成功。
【37分】帝24-7大
ラインアウトが乱れるも、LO飯野が拾って前進。ラックからSH小畑-PR西と渡り、西が前進。タックルされるも粘ってそのままトライ。ゴール成功。
【後半】【得点経過】
【4分】帝31-7大
スクラムからNo8マクカランが持ち出し、そのまま抜け出してトライ。ゴール成功。
【10分】帝36-7大
ラインアウトからモールを押し込み、HO堀越が押さえてトライ。
【16分】帝43-7大
ターンオーバーから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田-LO飯野と渡り、飯野が抜け出してトライ。ゴール成功。
【23分】帝43-14大
クイックリスタートから攻められ、抜け出されて、トライを奪われる。
【31分】帝48-14大
ラインアウトからモールを押し込み、HO堀越が押さえてトライ。
【34分】帝48-19大
ラインアウトから展開され、抜け出されてトライを奪われる。
【38分】帝55-19大
相手がノックオンしたボールをSH末が拾ってつなぐ。HO呉(季)が前進。ラックからBKに展開。一度、パスが乱れるもFB尾崎が拾ってWTB竹山にパス。竹山が抜け出し、走り切ってトライ。ゴール成功。
《BRIEF REVIEW》
大学選手権が始まった。8連覇を狙う帝京は対抗戦1位枠でのシード権を得て、準々決勝からの出場。対戦相手はリーグ戦3位、能力の高い選手が揃う大東文化大学。帝京はアップ時から気合い十分。だが、試合序盤はその気合いがかえって硬さにつながったのか、攻めてもミスが出てチャンスを潰してしまう。4分、ラインアウトから相手SHに抜け出され、先制点を与えてしまう。その後も、スピードとパワーを兼ね備えた相手のランナーに抜け出されるシーンがあるが、FB尾崎らの渾身のタックルで止める。17分にSO松田がPGを決めると落ち着きを取り戻し、直後の20分にはモールからHO堀越が持ち出し、逆転トライを奪う。ターンオーバーされた場面でも、LO飯野が強烈なタックルで相手のペナルティを誘うなど、ミスに対しても落ち着いて対応し、大きなダメージには至らせない。前半を24-7で折り返した。後半も落ち着いて追加点を重ねる。4分にスクラムからNo8マクカランが持ち出してトライを奪い、さらに10分、16分と加点。試合の流れを完全に引き寄せた。守っても、No8マクカラン、WTB吉田らが、突破を図る速くて大きな相手を一撃のタックルで止める。HO堀越はラインアウト・モールから4トライを奪うなど、セットプレーも総じて安定。WTB元田、LO今村、PR呉(味)、HO呉(季)ら途中出場組も激しいタックルを繰り出し、55-19でノーサイド。帝京が大学選手権準決勝進出を決めた。
《POST MATCH INTERVIEW》
■岩出雅之監督
「大学選手権準々決勝の対戦相手が大東文化大学さんに決まったときから、かなり強力な相手と戦うことになると感じていましたので、私自身もとても気合いを入れましたし、学生たちもそれに応えて気合いを入れてくれたのではないかと思っています。対抗戦終了から今日まで試合はありませんでしたが、試合があるのと変わらないような、いい2週間を過ごすことができました。今日はミスもありましたが、全体としては最後まで引き締まったゲームをしてくれたと思っています。戦略戦術としては、大東文化大学さんの強みの部分を出させず、ウィークポイントを突いていくということを、学生たちがしっかりと理解して、厳しく実行してくれたことが今日の結果につながったと思っています。また、強力なランナーにいいタックルをすることで、試合を通じて成長できるのではないかと思えるシーンも見えましたし、今日の試合が次につながるようにという部分と、まずは今日は今日として集中して戦うという部分と、その両方をプレーの中で出してくれたのではないかと思っています。次の天理大学さんとの戦いに向けては、まずはコンディションを整えて、そしてしっかり分析をして、学生が理解できる内容に落とし込んで、きちんとした準備をさせていきたいと思います。」
■キャプテン・FL亀井亮依(4年)
「今日は、前半のスタートから、アタック、ディフェンスともにコンタクトの部分で前に出ていこうと言って試合に臨みました。しかし、序盤に相手のキーマンに走られて、チャンスを与えてしまったところは課題として改善していきたいです。アップ時にちょっと硬さがあったように感じたので、キャプテンとして声掛けをしていったつもりでしたが、スタートのところでコミュニケーション不足が出てしまいました。ですが、その後はチームとしてしっかりとコミュニケーションをとって、自分たちの強みであるディフェンスからチャンスを作ることができたので、そこは次につながるいい自信になったと思います。次戦の相手の天理大学さんとは、春に一度、招待試合で対戦しているのですが(6月5日の招待試合では66-24で勝利)、とてもいいチームという印象が残っています。まずは自分たちのコンディションを整え、いい準備をして、チーム一丸となって戦っていきたいと思います。」
■相手のキーマンに強烈なタックルを浴びせる・LO飯野晃司(4年)
「今日は、チーム全体としてフィジカルの面で前に出ることができたと思います。大東文化大学さんがどんどん前に出てくる中で、さらに自分たちが前に出ることができました。ですが、コミュニケーションミスやイージーミスも多かったので、次の天理大学さんとの試合に向けて修正したいです。出場していない選手たちが支えてくれて初めて、僕たちはファーストジャージを着て出場することができるので、チームの他のメンバー、特にここまで4年間一緒に戦ってきた同期の4年生たちの分まで僕らが一生懸命やって、今後もできることを全力でやっていきたいです。大学選手権は負ければ終わり。次も大事に戦いたいです。天理大学さんのキーマンになる人たちに対してもタックルやアタックでしっかり前に出て、帝京の強みであるフィジカルで圧倒したいです。」
■短時間の出場ながらスクラムを安定させた・HO呉季依典(2年)
「この2試合、リザーブメンバーに入ることができていますが、少ない出場時間で自分のいいパフォーマンスを出そうとして、空回りしてしまっている印象があります。ですが、Aチームで出場できること自体、自分にとっていい経験になっていますので、もっともっといい経験を積み重ねていけるように、メンバー争いも頑張っていきたいです。この大学選手権という大きな舞台で兄(PR呉味和昌)と一緒に出場することができ、スクラムを組めたことはとてもうれしいです。出場して最初のプレーがスクラムだったのですが、兄から『今までやってきたことを頑張って出そう』と言われたことで、自信を持ってスクラムを組むことができました。でも、これで終わりではないので、次の試合でもまたピッチで一緒にプレーできるように頑張ります。次戦に向けては、まずはメンバー争いを勝ち抜いて、試合に出たらチームに少しでも貢献できるように頑張りたいと思います。」
■途中出場で攻撃をテンポアップ・SH末拓実(1年)
「今日は、チームとしては最初の入りのところがよくありませんでした。しかし、そのあとは帝京の強みであるFW戦で前に出て、モールでも得点できました。そこが勝利につながった要因だと思います。自分のプレーに関しては、あまり流れを変えることができず、納得のいくゲームではありませんでした。Aチームで出場する機会をいただいていますが、リザーブとして短い時間でどう自分のプレーを出していくかが課題だと思っています。また、自分の持ち味はテンポアップだと思っているので、後半、敵が疲れている状況でどれだけテンポアップできるかも課題です。次戦への2週間でしっかりレベルアップして、出場した時にはプレーをテンポアップさせ、得点につなげられるように努力したいと思います。」
《PICK UP PLAYERS》
弟と組むスクラムで自身の責任感を再燃させた
PR 呉 味和昌(4年)
GO MIWASUKE
1994年4月12日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
京都成章高校出身
身長181cm/体重115kg
■まずは、今日のゲームを振り返っての感想をお願いします。
「今日はケガからの復帰戦ということで、気持ちが少し空回りしてしまいました。あと、弟(HO呉季依典)もリザーブに入っていたので、一緒にプレーできたらいいなと思っていました。前半、帝京の方が少し落ち着きを欠いたところがあってクロスゲームになっていたので、出場機会がないかもしれないとも思ったのですが、後半、出番が来たので『よし、思い切ってやろう』と気持ちを入れてピッチに入りました。気持ちの準備はできていたと思います。」
■その弟の呉季依典選手とのスクラムは、組んでみてどうでしたか。
「スクラム自体は自分としてはあまりうまくいかなかったです。安定はしましたが、押すことができませんでした。もっとプレッシャーを掛けたかったです。次の試合ではもっとしっかり押したいです。」
■組む際はどんな気持ちでしたか。
「弟の分まで自分がしっかりやろうと思っていました。僕自身、帝京で兄(現サントリーサンゴリアス森川由起乙選手)とスクラムを組むことが目標だったのですが、それは叶わなかったので、今度は弟が来た分、僕が頑張らないといけないと思っていました。」
■進路はホンダに内定しているとのことですが、お兄さんとは対戦という形でスクラムを組むかもしれませんね。
「1番と3番なので、スクラムでマッチアップすることになるかもしれませんね。当初は、兄のいるサントリーでプレーしたいという気持ちもあったのですが、福田コーチから『お兄さんと戦うのもいいのでは』と言われ、またホンダさんから声を掛けていただいたこともあって、兄と戦う道を選びました。」
■この時期、帝京では毎年「4年力」という言葉がクローズアップされます。これについてはどう考えていますか。
「自分たち4年生がチームの先頭に立って引っ張っていかなければと常に思っています。特にこの時期の4年生が力を発揮するというのが、帝京の伝統にもなっていると思いますし、後輩たちにしっかりとした姿を見せていこうと思っています。今までの先輩方に負けないくらい、自分たちもリーダーシップをとっていきたいです。」
■では、次戦に向けての意気込みをお願いします。
「次戦の相手の天理大学さんとは春にも対戦しているのですが、スクラムでよくなかったところがあったので、しっかりリベンジしたいです。スクラムで圧倒して、ゲームを作っていけたらと思っています。」
ケガがあり、しばらく試合から遠ざかっていたが、ようやく回復し、大学選手権に間に合った。その復帰戦で弟・呉季依典との兄弟スクラムが実現。本人のインタビューからは出てこなかったが、スクラムを組む際、「今までやってきたことを頑張って出そう」と声を掛け、弟を落ち着かせたという。自身の復帰戦という部分だけでもメンタル作りが難しかったはずだが、加えて弟への気遣いも欠かさなかった。プレー面でも、出場してすぐに激しいプレーを見せた。弟とのスクラムが、4年生としてのリーダーシップや責任感の火を再燃させてくれたようだ。頼もしい4年生が帰ってきた。
《COLUMN》
――タックルと信頼――
この日の帝京は、アップ時からかなり気合いが入っていたように見えました。インタビューした限りでは「いつもと変わらないつもりでした」という意見が多かったのですが、これはまさに「意識」の領域の話。「無意識」の領域での気合いは、普段以上に入っていたようでした。
特に、アップ後半、タックルバッグ(コンタクトバッグ)を持った選手たちに一人ずつタックルするときの音が違っていました。スタンドから見ていたお客さんも思わず「すごい」と声を漏らすほど、「ドスン、ドスン」という音が響き渡っていました。
今さら何を言っているのかと言われてしまいそうですが、ラグビーで最も重要なスキルはタックルです。タックルはしないがボールキャリーは上手という選手と、ボールキャリーはしないがタックルは上手という選手がいたら、試合で活躍するのは間違いなく後者でしょう。
ラグビーはよく「信頼」が鍵を握ると言われます。チーム内の信頼、隣のポジションの選手との信頼があってこそ、いいプレーができるのです。おそらく「タックルはしないがボールキャリーは上手」という選手は、チームメイトから信頼を得ることはできないはずです。信頼のない選手が試合で活躍することはまずありません。
大学選手権準々決勝、相手の大東文化大学には大きな体にスピードも兼ね備えた、非常に高い能力の選手が揃っていました。大きな選手にタックルに行くというのは、とても勇気がいります。この日の帝京は、各選手がその勇気のいるプレーを全力でやり続け、大きな相手を一発で何度も裏返しました。
岩出監督は記者会見で「強力なランナーにいいタックルをすることで、試合を通じて成長できるのではないかと思えるシーンも見えました」と述べています。
強力なランナーにいいタックルをすることで、タックルを決めた一人一人は大きな自信を得たに違いありません。しかし、このビッグタックルはタックラー本人の成長だけではない、チームとしての大きな成長も促してくれます。
それが「信頼」です。
「あいつに任せれば、あの相手をタックルでしっかり止めてくれるはずだ。だから、自分はこっちのディフェンスに専念しよう」
チームメイトへの信頼は、そんなふうにチームディフェンス力をも高めてくれます。「あいつは信用できない。タックルしないかもしれない。だから自分があっちもこっちもマークしなければ」という状態では、きちんとしたディフェンスはできません。
帝京が得たこの日の勝利には、「信頼」という名の大きな副産物も一緒に付いてきました。
ラグビーの基本はタックル。これは「ラグビーの基本は信頼」という意味でもあるのです。
《NEXT MATCH》
第53回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝
対天理大学(http://www.tu-rugby.com/)
1月2日(月・祝) 秩父宮ラグビー場
14時10分キックオフ
過去の対戦成績:大学選手権2勝0敗
[天理大学の直近5戦]
10月23日 ○54-5近畿大学(関西大学Aリーグ)
11月13日 ○53-21立命館大学(関西大学Aリーグ)
11月27日 ○48-5関西大学(関西大学Aリーグ)
12月 3日 ○34-12同志社大学(関西大学Aリーグ)
12月17日 ○29-24慶應義塾大学(大学選手権準々決勝)
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
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