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第53回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝 天理大学戦

第53回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝 天理大学戦

2017/01/03



1月2日(月・振)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学42-24天理大学●


《帝京大学》
[FW]
(1)浅見⇒渋谷(2)堀越⇒淺岡(3)垣本⇒呉(味)(4)飯野⇒今村(5)姫野⇒金(嶺)(6)ロガヴァトゥ(7)亀井(8)マクカラン
[BK]
(9)小畑⇒末(10)松田(11)元田⇒竹山(12)金村⇒重(13)矢富(14)吉田(15)尾崎
 
《天理大学》※先発のみ
[FW]
(1)山口(2)藤浪(3)木津(4)西川(5)由良(6)島根(7)コロイブニラギ(8)佐藤
[BK]
(9)藤原(10)立見(11)井関(12)王子(13)金丸(14)久保(15)ケレビ

【前半】【得点経過】
【3分】帝7-0天
キックカウンターから連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田-No8マクカラン-LO飯野と渡り、飯野が抜け出す。さらにCTB金村にパスし、金村がトライ。ゴール成功。
 
【18分】帝7-5天
スクラムから攻められ、トライを奪われる。
 
【38分】帝14-5天
ラインアウトからモールで押し込む。ラックになるもさらに連続攻撃。ラックからSH小畑-HO堀越と渡り、堀越が抜け出してトライ。ゴール成功。
 
 
【後半】【得点経過】
【5分】帝21-5天
ドロップアウトをキャッチし連続攻撃。ラックからSH小畑-CTB矢富と渡り、矢富が抜け出し、相手ディフェンスをかわしてトライ。ゴール成功。
 
【12分】帝28-5天
スクラムから連続攻撃。ラックからHO渋谷が持ち出し、ゴールポストのクッションバッグにグラウンディングしてトライ。ゴール成功。
 
【17分】帝35-5天
相手ボールのラインアウトが乱れたところを、PR堀越がうまくセービングしてキープし、連続攻撃。ラックからSH小畑-SO松田と渡り、松田が仕掛けて、抜け出してトライ。ゴール成功。
 
【19分】帝35-10天
カウンターアタックで走られ、トライを奪われる。
 
【22分】帝35-17天
ラインアウトから攻められ、トライを奪われる。
 
【27分】帝42-17天
相手がノックオンしたボールを拾って連続攻撃。ラックからSH小畑-LO金と渡り、金が抜け出してトライ。ゴール成功。
 
【34分】帝42-24天
スクラムをターンオーバーされ、攻められ、トライを奪われる。



 
《BRIEF REVIEW》
 
大学選手権準決勝の相手は、関西リーグ1位の天理大学。2011年度、V3を達成したときの決勝戦、さらには2014年度のセカンドステージで対戦している。2011年度の決勝はノーサイド直前まで同点という手に汗握る展開。残り1分で得たPGを当時の森田佳寿キャプテン(現東芝ブレイブルーパス)がゴールポストに当てながらも決め、劇的な勝利を収めた。この日のゲームも、そんな激闘を思い起こさせる熱い戦いとなった。開始早々から、帝京は激しさを出していく。LO飯野が強烈なタックルでターンオーバー。その後の攻撃でも飯野がうまく抜け出し、フォローについたCTB金村へ絶妙なパス。金村が走り切って、先制トライを奪った。その後、攻められる場面もあるが、FB尾﨑らの好タックルで防ぐ。ただ、この日はセットプレーがやや不安定。18分にはスクラムから攻められ、トライを奪われる。ここから帝京の激しい攻めが続くが、相手のディフェンスも硬く、スコアまでは届かない。攻め込みながらも得点できない、フラストレーションが溜まってもおかしくない展開だったが、38分、FWの連続攻撃からHO堀越がトライを奪って流れを引き寄せる。前半を14-5で折り返した。後半はスタートから帝京がペースをつかむ。絶好のトライチャンスを相手の好タックルで阻まれた直後のドロップアウトから、CTB矢富が巧みなステップで抜け出してトライを奪って突き放す。さらに12分には途中出場の渋谷が、ゴールポストのクッションバッグにグラウンディングしてトライ。17分には、SO松田がパスダミーから自ら仕掛けて、タックルを受けながらもトライ。35-5とした。しかしその後、相手の強力FBの個人技で短時間に連続トライを奪われてしまう。点差はあるものの、やや重い空気も流れ始める。そんな空気を振り払ったのは、途中出場のLO金(嶺)。キックオフのボールをキャッチした相手に好タックルを浴びせ、ボールを奪う。27分には連続攻撃からのチャンスに、いい位置でボールをもらってトライ。相手に行きかけた流れを引き戻した。終了間際、猛攻を受けて守勢に回るが、インゴールに持ち込んだ相手に対して、No8マクカランがうまく下に体を入れ、トライを阻む。ここでノーサイド。42-24で帝京が勝利し、9年連続での決勝戦進出を決めた。
 
 
《POST MATCH INTERVIEW》
 
■岩出雅之監督
「例年、大学選手権準決勝はとても勢いのあるチームが上がってくるので、受け身にならず、自分たちも勢いを持った試合をしたいと思い、気合いを入れて臨みました。我々のいいところも出ましたが、天理大学さんもさすがは関西の雄、すばらしいプレーをされ、なかなか厳しいゲームになりました。要所要所で得点することができましたので、結果に関しては不安に感じませんでしたが、今日出た反省はしっかりと次に活かしていけるようにしたいと思います。次は決勝戦ですが、相手との勝ち負けの前に、まずは決勝戦という舞台で戦えることに感謝したいです。昨年も東海大学さんとの決勝戦でしたので、相手はその分、期するものがあろうかと思いますが、我々も一年間、積み上げてきたものがありますので、それをしっかりと悔いなく出し切れるようにしたいと思います。」


 
■キャプテン・FL亀井亮依(4年)
「今日の試合は、前半のスタートからアタック、ディフェンスともにコンタクトエリアで前に出ようと言って臨みました。自分たちの強みである前に出ていくラグビーができたところもありましたが、中盤のディフェンスで引いてしまったり、タックルが甘かったりといった少しの隙で相手にトライを与えてしまうシーンがあったので、次につながる課題も多く出た試合になりました。ディフェンスからチャンスをつかもうと言っていたのに、自分たちがチャンスを与えてしまうシーンがあったのは残念です。ただ、前半、スコアは開きませんでしたが、しっかり敵陣でプレーできていましたし、ゲームコントロールはある程度、きちんとできていたと思います。次戦に向けては、まずは決勝戦という大学日本一を競うゲームに出場できることをうれしく思います。今年のこのチームで一年間積み上げてきたものを、しっかり出し切る準備を全員でやっていきたいです。この時期、ここから新しいことをやるということはないので、今までやってきたことを出し切れるようにいい準備をしたいと思います。」


 
■前半終了間際のトライで試合の流れを引き寄せた・HO堀越康介(3年)
「今日は、前半、ディフェンスで少し受けてしまったところがありました。キックカウンターをしっかりと止めきれなかったことが、前半、ロースコアになった原因の一つだったと思います。また、セットプレーでの課題も出てしまいました。自分のトライシーンは、FWの近場でのプレーでしたが、姫野さんがいいプレーしてくれてサイドにスペースができたので、うまくコミュニケーションできてトライになりました。決勝戦の東海大学さんはFWが強い印象ですが、こちらもしっかりと体を当てていきたいです。この一年、継続してやってきたことをしっかりと出し切れるように、今日出た課題を修正していきたいと思います。自分たちのラグビーを出し切ることを考えてプレーしたいと思います。」


 
■好タックルで相手の突進を何度も止めた・No8ブロディ・マクカラン(2年)

「天理大学さんは強かったです。体はそれほど大きくないのに、ハートがとても大きい選手ばかりでした。すばらしいファイティング・スピリットを持っていました。自分たちは、帝京のチーム・スローガンである『Enjoy & Teamwork』を出そうと思ってやりました。特にTeamworkはとても大事なので、コミュニケーション、自分の場合はFW、そしてSHやSOとのコミュニケーションを大事に戦いました。ディフェンスでいいタックルができたと思いますが、今、すごく体が痛いです(笑)。来週の東海大学さんも強いので、痛い体をしっかりリカバリーして、いいコンディションで臨めるように、いい準備をしていきたいです。」


 
■後半開始早々、相手ディフェンスを翻弄するトライを奪う・CTB矢富洋則(3年)
「今日は前半からミスも多く、天理大学さんの勢いに押されたところがありました。後半は立て直せたのですが、個人としては後半20分過ぎあたりから集中力が落ちてきて、ハンドリングミスやタックルミスが出てしまいました。80分間やり切る集中力が足りなかった点が、今日出た反省点です。自身のトライについては、相手ディフェンスが外にかぶっているように見えたので、そこをうまく切り返して抜け出すことができました。決勝戦は、去年はケガをした森谷(圭介・現パナソニックワイルドナイツ)さんの代役という形で出させていただいたのですが、自分の準備の足りなさと緊張に負けてしまったことでいいプレーができず、悔しい思いをしました。今年は自分も経験を積んできましたし、やってきたことを出し切って、絶対に優勝したいと思います。」


 
 
《PICK UP PLAYERS》
 
この一年、常にリーダーシップを意識してきた
 
FB 尾﨑晟也(3年)
 
OZAKI SAIYA

 
1995年7月11日生まれ
医療技術学部スポーツ医療学科
伏見工業高校出身
身長174cm/体重85kg
 
 
■まずは、今日のゲームを振り返ってください。
「こちらが予想していたプランと少し違った攻め方をされた部分があり、そこでの戸惑いもありました。前半、相手のディフェンスに合わせたアタックをしてしまったところもあり、そこも反省点です。後半は、強いプレーを選択したのがうまくいって、いいプレーもたくさん出たのでそこはよかったのですが、終盤にディフェンスの甘さが出てしまったので、決勝に向けて修正していきたいです。」
 
■終盤、点差が開いたところから反撃を受けてしまいました。

「自分たちの中ではホッとしたわけではなく、気持ちは入っていると思っていたのですが、どこかで甘さが出て、それがプレーにつながってしまいました。決勝戦では、最初から最後まで気持ちの入ったプレーをしたいと思います。」
 
■高学年(3年生)としてのリーダーシップについては、どんなことを意識していますか。
「3年生になったときから、自分としてはリーダーとしての自覚は持っているつもりです。この一年間、リーダーシップを意識してずっとやってきましたが、今シーズンも残りあと少し。自分たちが最高学年になる時期も近づいていますので、もっともっとチームの中でリーダーシップを発揮していかなければと思っています。」
 
■春に行ったイヤーブック用の対談の中で、「3年生と4年生はとても仲がいい。2年生ともそういう関係を築きたい」といった趣旨の話がありました。あれから時間が経ちましたが、現在、2年生とはどんな関係を築けていますか。
「2年生たちにも、チームの中でリーダーシップを取るという自覚が芽生えてきているようなので、僕たち3年生とコミュニケーションを取る機会も多くなりましたし、そこは2年生も3年生もいい形で成長できていると思います。」
 
■改めて、決勝戦への意気込みをお願いします。
「一年間、積み上げてきたことを出し切れるように、今週一週間、しっかりと準備をして臨みたいと思います。気持ち、メンタルの部分とスキル、体力と、すべてのコンディションを整えて、決勝戦で爆発したいと思います。」
 
 
この日は、強い相手に何度も好タックルを浴びせ、ピンチの芽を摘んだ。昨年度のWTBから今シーズンはFBに転向し、チームに安定感を与えている。また、3年生ながらこの一年間、ずっとリーダーシップを意識してきたという。今年の3年生は「4年生に近づく3年生」というスローガンを掲げてここまで過ごしてきた。3年生が4年生のような働きをすることでチームはより強くなると考えてのことだ。毎年、「4年力」がクローズアップされるこの時期だが、今年は「3年力」にも注目だ。


 
《COLUMN》
 
――9年連続9回目――
 
 
関西王者・天理大学との激闘を制し、帝京は9年連続9回目の決勝戦進出を決めました。「9年連続9回目」、つまり初優勝の前年に初めて決勝戦に出場してから、途切れることなく、決勝戦を戦っているということになります。
 
帝京が掲げる目標はあくまで「大学日本一」ですが(第一の目標。もう一つ「日本選手権優勝」もあります)、「9年連続9回目」の決勝戦進出という成果もすばらしいものがあります。
 
2016年度を戦った大学ラグビー部の中で、現時点で残っているのはたったの2チームだけです。他チームはすでに4年生が引退。新チームへ移行しています。
 
この日、岩出監督は「次は決勝戦ですが、相手との勝ち負けの前に、まずは決勝戦という舞台で戦えることに感謝したい」とコメントしています。こうした趣旨のコメントは今回だけのことではありません。在りし日の国立競技場、準決勝後は代々木門付近に集合するのが常でしたが、ここで岩出監督は毎年のように「まずは決勝戦を戦えることを喜ぼう」と選手たちに伝えていました。
 
もちろん、「決勝戦に出ることで十分に満足」という意味ではありません。「決勝戦を戦える喜びを感じながら、それを力に変えて戦おう」ということです。
 
「9年連続9回目」という事実が、決勝戦に出ることがどれだけ大変なことなのかを教えてくれます。つい10年前まで、先輩たちは決勝戦(もっというと準決勝)に出ようと必死に努力し、そして分厚い壁に跳ね返されてきたのです。
 
先輩たちのそうした決勝戦への思い、そして今シーズンも決勝戦を戦えるという喜びは、きっと目標に向かうための大きなエネルギーとなってくれるでしょう。
 
さあ、いよいよ決勝戦です。


 
《NEXT MATCH》
第53回全国ラグビーフットボール選手権大会・決勝
対東海大学(http://seagales.com/
1月9日(月・祝) 秩父宮ラグビー場
14時キックオフ
 
過去の対戦成績:大学選手権4勝0敗
[東海大学の直近5戦]
10月30日 ○28-7大東文化大学(関東大学リーグ戦1部)
11月12日 ○62-21中央大学(関東大学リーグ戦1部)
11月27日 ●26-29流通経済大学(関東大学リーグ戦1部)
12月17日 ○71-12京都産業大学(大学選手権準々決勝)
1月2日 ○74-12同志社大学(大学選手権準決勝)


(文/木村俊太・写真/志賀由佳)

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