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2022/1/9【 第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 】vs明治大学 マッチレポート

2022/1/9【 第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 】vs明治大学 マッチレポート

2022/01/26

《試合経過》
【 前半 】
05分 【帝京大学】 トライ 敵陣ゴール前ラインアウトのこぼれ球を12押川が拾いそのままトライ ゴール不成功 5-0
13分 【帝京大学】 トライ 敵陣でフェーズを重ね外に展開して14白國トライ ゴール不成功 10-0
34分 【帝京大学】 トライ 敵陣ゴール前連続攻撃から14白國トライ ゴール不成功 15-0
40分 【帝京大学】 トライ 相手ボールを14白國がインターセプト。そのまま走り切りトライ ゴール不成功 20-0

前半終了:帝京大学 20-0 明治大学


【 後半 】
07分 【帝京大学】 7 上山黎哉 → 20 リッチモンド・トンガタマ
09分 【明治大学】 トライ 敵陣ラインアウトモールから2が抜け出しトライ 12ゴール成功 20-7
17分 【帝京大学】 5 江里口真弘 → 19 山川一瑳
21分 【帝京大学】 1 照内寿明 → 17 津村大志
26分 【帝京大学】 トライ 敵陣で連続攻撃8奥井が抜け出しトライ 10高本ゴール成功 27-7
35分 【明治大学】 トライ 敵陣ゴール前連続攻撃から7がトライ 12ゴール成功 27-14
36分 【帝京大学】 11 二村莞司 → 23 ミティエリ・ツイナカウヴァドラ
39分 【帝京大学】 2 江良颯 → 16 小林恵太 , 3 細木康太郎 → 18 奥野翔太 , 9 李錦寿 → 21 岡本泰斉 , 12 押川敦治 → 22 松山千大

試合終了:帝京大学 27-14 明治大学

(試合速報担当:3年 長谷川毅・湯浅宏太)



《BRIEF REVIEW》

ついにこの日がやってきた。大学選手権決勝。対戦相手は明治大学。だが、準決勝の試合後に細木キャプテンが語ったように、帝京としては相手が誰であろうと、1年間、この日のためにやってきたことを思いっきり出すだけだ。
開始早々は帝京が攻める。チャンスになりかけるが、少し硬さがあったか、ミスで攻め切れない。だが、相手の攻撃はFL上山らのナイスタックルで防ぐ。その後、キックの蹴り合いから、帝京が攻めに転じ、ペナルティをもらって敵陣ゴール前へと攻め込む。ラインアウトが乱れるが、常にオーバーボールのケアを心掛けていたというCTB押川がうまく拾って、そのまま抜け出して先制トライを奪う(5-0)。
その後、守る時間帯になるが、全員でひたむきにタックルし、相手の攻撃を止める。ファーストスクラムでは、相手のペナルティを誘う。
13分、ラインアウトから連続攻撃。ラックから、SH李-PR照内-SO高本幹-CTB押川-WTB白國と渡り、白國がディフェンスをかわしてトライ(10-0)。
ここからやや守勢の時間帯となるが、帝京のディフェンスは崩れない。WTB二村のタックル、FB谷中のインターセプトなどでピンチを防ぐ。相手ボールのラインアウトでのサインプレーにも、HO江良が対応し、強烈なタックルで止める。攻め込まれても、WTB二村がボールをもぎ取ってターンオーバー。ラインディフェンスでも相手にプレッシャーをかけ、ノックオンを誘う。スクラムでは強烈な押しを見せ、ペナルティを得る。
守勢の時間帯を凌ぎ切ると、チャンスがやってくる。34分、ラインアウトからの連続攻撃。ラックから、SH李-No8奥井-WTB白國と渡り、白國がトライ(15-0)。
前半終了間際、ピンチになるが、HO江良がターンオーバー。さらに攻められるが、相手の長いフラットなパスにWTB白國が反応し、インターセプト。ハーフウェイライン付近からそのまま走り切ってトライを奪う。前半を20-0とリードして折り返した。
後半の帝京は、総じて守りの時間帯が長くなる。しかし、安定感のある、硬いディフェンスでしっかりと守っていく。開始早々、SO高本幹が自陣からのキックで、新ルール「50:22」を決め、敵陣ゴール前でのマイボール・ラインアウトのチャンスを作るが、ここはペナルティで取り切れない。その後、攻められても、SO高本幹がジャッカルでボールを奪って防ぐ。ただ、ペナルティが続いてしまい、ピンチを招くと、9分、ラインアウトからモールで攻められ、持ち出されて、トライを奪われる(20-7)。
さらに防御の時間帯が続くが、ディフェンスでプレッシャーをかけ続け、相手のミスを誘う。なおも攻められるが、No8奥井、CTB志和池らの好タックルで防ぐ。
26分、ようやく帝京にチャンスがやってくる。スクラムを押し込み、ペナルティをもらってチャンスを広げると、ラインアウトから連続攻撃。ラックから、SH李-No8奥井と渡り、奥井がディフェンスを振り切ってトライを奪う(27-7)。
その後も帝京のペナルティが増え、ピンチを招くが、Flトンガタマらの好タックルで防ぐ。ディフェンスでプレッシャーをかけ、相手のミスを誘い、スクラムを押し込んでペナルティをもらうという好循環が生まれる、攻撃では攻め切れないものの、その後、ピンチになっても安定したディフェンスで守る。
35分、ペナルティから相手がクリック・リスタートで攻め、トライを奪われるが(27-14)、13点差で残り時間は約4分。CTB松山の好タックルでターンオーバーし、CTB志和池のキックで敵陣深くに攻め込む。
残り約1分で相手ボールのラインアウトとなる。インゴールでボールを回す相手に、SO高本幹、CTB志和池、WTBツイナカウヴァドラがプレッシャーをかけ、インゴールでグラウンディングさせる。ここでホーンが鳴り、ノーサイド。帝京は27-14で勝利し、4年ぶり10回目の大学日本一となった。
なお、試合後の記者会見で、岩出雅之監督の今シーズン限りでの退任が伝えられた。後任者等の詳細については、後日、正式に発表されることになっている。


《COLUMN》

―― 可能性を意識して準備する ――

帝京が4年ぶり10回目の大学日本一に輝きました。3年間、優勝から遠ざかっていましたが、世代としての優勝経験という意味では、途切れることなくつながったことになります。

この日の試合では、帝京にとってラッキーに見えるものの、試合展開を大きく左右したいくつかのプレーがありました。例えば、前半最初のトライが生まれた、CTB押川選手のプレー。前半終了間際のWTB白國選手のインターセプトからのトライ。あるいは、前半23分過ぎの相手ボールのラインアウトからのサインプレーをHO江良がナイスタックルで止めたシーンなどです。

最初のトライのシーンについて押川選手に聞くと「あのあたりの位置でのラインアウトでは、どの試合でもSO高本(幹也)から『オーバーボールをケアして』と声が掛かるので、常に意識していました」と語ってくれました。各試合の各ラインアウトですべて、オーバーボールをケアし続けた押川選手でしたが、あのシーンまでは何事も起こりませんでした。

もしかしたら、あの場面でも何事も起こらなかったかもしれません。人によっては「何も起こらないことに意識を向け続けるなんて無駄じゃないか」と思うかもしれません。それでも押川選手はオーバーボールのケアをし続け、それによって試合の流れを作ったあの先制トライにつながったのです。しかも「何事も起こらなかったとき」の攻め方もきちんと意識しつつ、「何か起こったとき」のこともケアするという、両構えで備えていたわけです。

白國選手のインターセプトは「明治大学さんがフラットな長いパスをよく放ってくることは理解していた」と言います。つまり、短いパス回しだったときのディフェンスをすることも意識しながら、長いパスが来たときにインターセプトを狙うという両構えで備えていました。

江良選手のタックルは、ラインアウトから相手のSHが持ち出して走っていく方向と逆の方へ、相手のWTBが走り込みながらパスをもらうというプレー。それに江良選手が一人で対応し、走り込んだWTBを好タックルで止めました。

江良選手はけっしてサインを読んでいたわけではなく、こうしたことが起こる可能性を意識しながら、SHの仕掛けにも対応しつつ、後ろから走り込む選手もケアするという両構えで備えていたわけです。

しかも、相手のサポートが厚いサイドではなく、手薄な方に相手を倒そうと思ったと言います。とっさにそこまで判断して、やり切っていました。

これらはすべて、いくつかの起こり得る可能性を意識して、どれが来ても対応できるように準備しているからこそできたことです。何の準備もなく、感覚だけでとっさにできたわけではありません。

仮にですが、もし押川選手、白國選手のトライがなかったら、帝京の得点は10点少なかったかもしれません。江良選手のディフェンスもなく、相手に抜け出されていたら、トライされて、7点を失っていたかもしません。まさに試合結果を左右していたかもしれないプレーだったと思います。

しかし、帝京の各選手たちは「可能性を意識して、準備していた」ことで、上記のような仮定は起こりませんでした。その結果、大学日本一をつかむことができました。

さて、すでに報道されているとおり、岩出雅之監督が今シーズン限りでの退任を表明しました。さすがにこの事態への意識や準備はしておらず、驚きましたが、監督ご自身のご意志とのことですので、尊重すべきことだと思います。

同時に、帝京大学ラグビー部の「輝く歴史を新たに書かん」とする今後に、大いに期待したいと思います。


(文・木村俊太/写真・志賀由佳)

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