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2022/8/21【 SUMMER TRAINING GAME 】vs早稲田大学 マッチレポート

2022/8/21【 SUMMER TRAINING GAME 】vs早稲田大学 マッチレポート

2022/09/08

《BRIEF REVIEW》

夏合宿での練習試合第2戦は、対抗戦のライバル早稲田大学との対戦。春季大会は52-26で帝京が勝利しているが、そこからお互いに成長を遂げているはず。秋以降の対抗戦、大学選手権を見据え、さらに成長できるゲームにしたい。
立ち上がりから波に乗りたい帝京だったが、この日は早稲田大学戦という独特の緊張感からか、試合開始直後は動きが硬く、帝京本来の力強さが見られない。開始早々、キックをチャージされ、いきなり先制点を許してしまう(0-7)。さらにペナルティも増え、9分、15分とラインアウトからの攻撃で失点。開始15分で0-21と大きなビハインドを背負う展開となった。
しかし、ここで帝京にようやくスイッチが入る。そのスイッチを押したのは、この日ゲームMVPとなるCTB二村だった。キックオフのボールを全力で追いかけ、見事にジャンピングキャッチ。そこから大きく前進し、ゴール前でつかまるものの、ラックからのやや乱れたボールをHO當眞蓮がうまくキャッチしてトライ。反撃の狼煙を上げる(7-21)。
その後も、No8延原の気迫あふれるハイパントキャッチなど、気持ちの入ったプレーが続出する。28分にはラインアウトからモールを押し込み、FL青木が押さえてトライ(14-21)。その後、ピンチもあるが、FB山口やCTB二村のジャッカルなどで守る。
攻めては、SO高本幹から、大外にポジショニングしていたFL青木へとキックパスが通るが、惜しくもインゴールノックオンの判定で得点ならず。
それでも36分、スクラムから展開し、FL青木が大きく前進。さらに展開し、CTB松山が抜け出してトライ。ゴールも決めて、同点とする(21-21)。
前半のラストプレーではペナルティを得てスクラムを選択。展開し、CTB松山が持ち込むが、惜しくもグラウンディングできずにここでハーフタイム。前半を21-21で折り返した。
後半もお互いの力と力がぶつかり合う。ピンチの場面でもSO高本幹らの好タックルなどで防ぐ。前半は優勢だったスクラムでペナルティを取られるシーンもあるが、そこから攻め込まれても、FB山口のインターセプトなどもあり、しっかりと守る。
12分、ミスからピンチを招く。スクラムから展開され、タックルをかわされてトライを奪われる(21-28)。しかし、帝京も激しさを前面に出していく。20分、相手ボールスクラムを押し、ボールアウトを乱れさせる。こぼれ球を拾ってつなぎ、最後はNo8延原が抜け出し、トライ。28-28の同点に追いついた。
帝京の勢いはさらに増していく。キックオフのボールをWTBツイナカウヴァドラがうまくキャッチし、そのまま仕掛ける。スピードに乗り、相手ディフェンスをかわしながら大きく前進。得点にはつながらなかったが、チームに勢いを与える。
このあたりから急に激しい雨が降り出す中、相手ボールのスクラムでSH李が相手SHのパスに足を出してターンオーバー。拾って持ち出すも、惜しくもインゴールノックオンの判定で得点ならず。
攻められる場面でも、FL山添の好タックルなどで防ぐ。LO山川は好チャージを見せ、インゴールへとボールを追うが、惜しくもグラウンディングできずに得点とはならない。WTB高本とのインターセプトで前進を見せるも、タッチに出される。
帝京はいいプレーが続くものの得点にまで至らない時間帯が続くが、それでも気持ちが切れることはなく、激しいプレーを続ける。
すると同点で残り時間が少なくなる中、帝京にスーパープレーが生まれる。相手ボールのラインアウトから攻められるが、前に出るディフェンスでプレッシャーをかけ、相手のノックオンを誘う。CTB二村がこぼれ球を拾い、前方へキック。これが「50:22」となり、相手ゴール前でのマイボール・ラインアウトを獲得する。39分、このラインアウトから連続攻撃を見せ、SO高本幹がショートパントで自ら再獲得を試みる。ボールはこぼれるが、SH李がうまく拾ってトライ。ゴールも決まって、帝京が35-28と逆転する。
終了間際の相手の必死の攻撃も、帝京の堅いディフェンスで守り切ってノーサイド。帝京が35-28で勝利を収めた。


《COLUMN》

―― 試合の流れ ――

「試合の流れ」という言葉があります。そんなものはないと主張する人もいるようですが、少なくとも競技者の「心理的な流れ」(時間や状況によって起こる心理的な変化や揺れ)は確実にあります。試合は人間が行うものであり、人間のパフォーマンスは心理に大きく影響を受けるとすれば、「心理的な流れ」によって「試合の流れ」も生まれます。

この日の帝京は、前半の立ち上がりから15分間で相手に3トライを奪われるという、かなり大きなビハインドを背負うことになりました。試合後に選手たちに話を聞いてみると、「緊張していた」「緊張感から人任せになってしまった」という声がありました。

両チームの3トライ後の心境を想像すると、無意識の領域を含め、おそらく相手は「これは行けるぞ」と感じ、帝京の方は「もっとしっかりやるべきことをやらなければ」と思ったはずです。特に無意識の領域で相手は「これで大丈夫だ」「このまま、同じようにやって行けば勝てる」と感じた人も多かったのではないでしょうか。対する帝京は「俺たちはこんなもんじゃない」という気持ちになったはずです。

この心理的な変化が、このあとの「試合の流れ」を作っていきました。帝京に積極的で激しいプレーが増え、相手はその激しさに対して受けに回るシーンが増えていきます。

「だったら、最初からその流れを作れる心理になるようにすればいいじゃないか」と思うかもしれませんが、これが「言うは易く、行うは難し」。それでも、この日の試合のような心理的変化を経験できたことは、今後への大きな糧となるはずです。「あの時の、あの心理になれればもっと激しいプレーができる」ということがわかったからです。

この日の試合は「ゲームの最初からあの心理状態を作ろう」という、正しい方向に向かうための方位磁石を手に入れたゲームになったのではないでしょうか。


(文・木村俊太/写真・志賀由佳)

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