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スペシャル
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2023/12/9【 関東大学対抗戦A 】vs慶應義塾大学 マッチレポート
2023/12/04
関東大学対抗戦A 対慶應義塾大学戦
12月2日(土)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学54-10慶應義塾大学●
《BRIEF REVIEW》
いよいよ対抗戦も最終戦を迎えた。この試合で勝ち点1以上を獲得した時点で、対抗戦1位枠での大学選手権出場が決まる。対戦相手は慶應義塾大学。ラグビーのルーツ校であり、「魂のタックル」と形容されるディフェンス力には伝統的に定評のある相手だ。
帝京は開始早々から、その厳しいタックルにさらされ、攻め込みながらもミスやペナルティで得点を取り切れない時間帯が続く。相手の攻撃に対しては、帝京もしっかりとタックルし、LO尹のジャッカルなどで防ぐが、攻撃に移るとまたも相手の厳しいタックルを受ける。
チャンスの場面でも、やや取り急いだようにも見えるキックパスがつながらない。WTB高本(とむ)の前進などで、チャンスも作るが攻め切れない。
ようやく得点が動いたのは17分。相手のペナルティからゴール前でのラインアウトを得る。スローが長くなるが、FL奥井が後方でキャッチし、そのまま走り切って、先制トライを奪う(5-0)。
続く22分。ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-WTB小村と渡り、小村が抜け出してトライ(12-0)。その後、キックチャージなどでピンチになる場面もあるが、PR上杉のジャッカルもあり、大きな傷には至らない。
このあたりから、ようやく帝京が自分たちの形を出し始める。31分、ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-HO江良-LO尹と渡り、尹が抜け出し、走り切ってトライ(19-0)。
さらに34分には、相手ボールのラインアウトを奪ってつなぐ。WTB高本(とむ)が大きく前進。さらにつないで、ラックからSH李-SO井上-HO江良-CTB大町と渡り、大町が抜け出す。最後はサポートしていたSH李にパスし、李が走り切ってトライ(26-0)。
終了間際の40分にDGを決められるが、前半を26-3とリードして折り返した。
後半は、開始早々にまたもやや急ぎすぎたプレーでピンチを招く。キックオフからのボールを、自陣22m内でタッチライン際へとキックパス。これを相手に奪われ、攻められ、トライを奪われる(26-10)。
9分、ゴール前でのラインアウトで、走り込んでキャッチしたNo.8延原が抜け出し、トライを奪うが(33-10)、その後は何度も攻め込みながら、相手の厳しいディフェンスもあり、得点まで結びつかない時間帯が続く。
それでも、堅実なプレーを続け、チャンスを伺う。24分、ゴール前まで攻め込んだラインアウトでペナルティをもらうと、CTB大町がクイック・リスタートで前進。そのままインゴールに飛び込んでトライを奪う(40-10)。
攻められる時間帯もあるが、ピンチもFL奥井のジャッカルなどで防ぐ。一進一退が続き、攻められても、FL青木の好タックル、スクラムを押し込んでのペナルティ奪取、FB山口のキックからCTB五島がジャッカルするなど、ピンチをチャンスに変えていく。
42分、LO藤井がうまくキャッチしたラインアウトでアドバンテージをもらいながら攻め、ラックからFL奥井が持ち出し、前進してトライ(47-10)。直後の44分には、キックオフからのボールをつなぎ、WTB高本(とむ)が大きく前進。SH上村-CTB五島と渡り、五島が相手ディフェンスをハンドオフでかわして、走り切ってトライ。FB山口のゴールも決まり、54-10で帝京が勝利した。
この結果、対抗戦7戦全勝、勝ち点を34と伸ばし、3年連続12度目の対抗戦1位(優勝)、大学選手権の対抗戦1位枠での出場を決めた。
《COLUMN》
―― 対抗戦の価値 ――
帝京はこの日の試合に勝利し、3年連続12度目の対抗戦1位(優勝)を決めました(対抗戦は学校どうしの戦いの集合体であり、優勝という概念はないという主張もありますが、順位付けが存在することも事実なので、ここでは1位を「優勝」と表現します)。
この日の記者会見の後半、記者さんから「対抗戦優勝」についてのコメントを求められた相馬朋和監督は「大変失礼しました。最初に私が対抗戦優勝に関してコメントしなかったせいで、こんなこと(こんな質問をさせてしまうこと)になってしまいました」と述べ、会場は笑いに包まれました。
続けて「チーム一同、うれしく思っておりますし、対抗戦で優勝することの価値は我々にとても高いものです」と述べました。最初に優勝に関するコメントが出てこなかった理由としては「勝った瞬間から気持ちが先に飛んでしまった」と述べています。
相馬監督自身、学生時代に対抗戦を戦ってきた人ですから、その価値の高さは体で感じていると思います。また、帝京が対抗戦に加盟する際に尽力された方々の思いもよく知っておられますので、対抗戦優勝への思いも小さくなかったはずです。
それでも「ここで満足してしまったら、今後の成長はない」という意識が勝り、「勝った瞬間から気持ちが先に飛んでしまった」のでしょう。江良颯主将もチームメイトたちを誇りに思うとした上で「ここで満足しているヤツはおるか?」と問いかけたと言います。成長を止めないための働きかけを忘れませんでした。
帝京が対抗戦に加盟することになる経緯については、以前にもこのコラムで書きましたので詳細は述べませんが、ご存じない方のために簡単に説明しておきましょう。
核となった方は、今年の1月に他界された増村昭策名誉顧問です。増村さんとともに動いてくださったのは、元早稲田大学ラグビー部監督の白井善三郎さんでした。当時の対抗戦は各学校間の話し合いで試合の開催を決める方式だったので、加盟校が「試合をしてもいい」と言ってくれないと、試合ができませんでした。
お二人は「対抗戦加盟は難しいかもしれないが、とにかくやれることはやってみよう」ということになり、まず明治大学の北島忠治監督のもとを訪れます。すると北島監督は二つ返事で「OK」をくださいました。
その後もお二人は、対抗戦加盟校一校一校に出向き、試合を組んでもらえるよう、お願いをして回りました。ただ、一度、試合を組んでもらえたとしても、翌年も組んでもらえるという保証はありませんでした。事実、前年対戦した学校から「今年はスケジュールが合わない」と対戦を断られたケースもあったと聞きます。
それでもお二人は諦めずに、毎年、丁寧にお願いに回り、やがて実力も認められるようになって、多くの学校が帝京と試合をしてくれるようになりました。帝京に限らず、対抗戦に後発で加盟した学校の多くは、(程度の差こそあれ)同じような経緯を辿ったはずです。
いま帝京が対抗戦で戦うことができているその背景には、多くの先輩方が積み重ねてきた歴史があります。そんな対抗戦での優勝。その価値の大きさをファンの皆様と共有し、まずは喜び、学生たちは次の目標へと歩みを進めます。
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
12月2日(土)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学54-10慶應義塾大学●
《BRIEF REVIEW》
いよいよ対抗戦も最終戦を迎えた。この試合で勝ち点1以上を獲得した時点で、対抗戦1位枠での大学選手権出場が決まる。対戦相手は慶應義塾大学。ラグビーのルーツ校であり、「魂のタックル」と形容されるディフェンス力には伝統的に定評のある相手だ。
帝京は開始早々から、その厳しいタックルにさらされ、攻め込みながらもミスやペナルティで得点を取り切れない時間帯が続く。相手の攻撃に対しては、帝京もしっかりとタックルし、LO尹のジャッカルなどで防ぐが、攻撃に移るとまたも相手の厳しいタックルを受ける。
チャンスの場面でも、やや取り急いだようにも見えるキックパスがつながらない。WTB高本(とむ)の前進などで、チャンスも作るが攻め切れない。
ようやく得点が動いたのは17分。相手のペナルティからゴール前でのラインアウトを得る。スローが長くなるが、FL奥井が後方でキャッチし、そのまま走り切って、先制トライを奪う(5-0)。
続く22分。ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-WTB小村と渡り、小村が抜け出してトライ(12-0)。その後、キックチャージなどでピンチになる場面もあるが、PR上杉のジャッカルもあり、大きな傷には至らない。
このあたりから、ようやく帝京が自分たちの形を出し始める。31分、ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-HO江良-LO尹と渡り、尹が抜け出し、走り切ってトライ(19-0)。
さらに34分には、相手ボールのラインアウトを奪ってつなぐ。WTB高本(とむ)が大きく前進。さらにつないで、ラックからSH李-SO井上-HO江良-CTB大町と渡り、大町が抜け出す。最後はサポートしていたSH李にパスし、李が走り切ってトライ(26-0)。
終了間際の40分にDGを決められるが、前半を26-3とリードして折り返した。
後半は、開始早々にまたもやや急ぎすぎたプレーでピンチを招く。キックオフからのボールを、自陣22m内でタッチライン際へとキックパス。これを相手に奪われ、攻められ、トライを奪われる(26-10)。
9分、ゴール前でのラインアウトで、走り込んでキャッチしたNo.8延原が抜け出し、トライを奪うが(33-10)、その後は何度も攻め込みながら、相手の厳しいディフェンスもあり、得点まで結びつかない時間帯が続く。
それでも、堅実なプレーを続け、チャンスを伺う。24分、ゴール前まで攻め込んだラインアウトでペナルティをもらうと、CTB大町がクイック・リスタートで前進。そのままインゴールに飛び込んでトライを奪う(40-10)。
攻められる時間帯もあるが、ピンチもFL奥井のジャッカルなどで防ぐ。一進一退が続き、攻められても、FL青木の好タックル、スクラムを押し込んでのペナルティ奪取、FB山口のキックからCTB五島がジャッカルするなど、ピンチをチャンスに変えていく。
42分、LO藤井がうまくキャッチしたラインアウトでアドバンテージをもらいながら攻め、ラックからFL奥井が持ち出し、前進してトライ(47-10)。直後の44分には、キックオフからのボールをつなぎ、WTB高本(とむ)が大きく前進。SH上村-CTB五島と渡り、五島が相手ディフェンスをハンドオフでかわして、走り切ってトライ。FB山口のゴールも決まり、54-10で帝京が勝利した。
この結果、対抗戦7戦全勝、勝ち点を34と伸ばし、3年連続12度目の対抗戦1位(優勝)、大学選手権の対抗戦1位枠での出場を決めた。
《COLUMN》
―― 対抗戦の価値 ――
帝京はこの日の試合に勝利し、3年連続12度目の対抗戦1位(優勝)を決めました(対抗戦は学校どうしの戦いの集合体であり、優勝という概念はないという主張もありますが、順位付けが存在することも事実なので、ここでは1位を「優勝」と表現します)。
この日の記者会見の後半、記者さんから「対抗戦優勝」についてのコメントを求められた相馬朋和監督は「大変失礼しました。最初に私が対抗戦優勝に関してコメントしなかったせいで、こんなこと(こんな質問をさせてしまうこと)になってしまいました」と述べ、会場は笑いに包まれました。
続けて「チーム一同、うれしく思っておりますし、対抗戦で優勝することの価値は我々にとても高いものです」と述べました。最初に優勝に関するコメントが出てこなかった理由としては「勝った瞬間から気持ちが先に飛んでしまった」と述べています。
相馬監督自身、学生時代に対抗戦を戦ってきた人ですから、その価値の高さは体で感じていると思います。また、帝京が対抗戦に加盟する際に尽力された方々の思いもよく知っておられますので、対抗戦優勝への思いも小さくなかったはずです。
それでも「ここで満足してしまったら、今後の成長はない」という意識が勝り、「勝った瞬間から気持ちが先に飛んでしまった」のでしょう。江良颯主将もチームメイトたちを誇りに思うとした上で「ここで満足しているヤツはおるか?」と問いかけたと言います。成長を止めないための働きかけを忘れませんでした。
帝京が対抗戦に加盟することになる経緯については、以前にもこのコラムで書きましたので詳細は述べませんが、ご存じない方のために簡単に説明しておきましょう。
核となった方は、今年の1月に他界された増村昭策名誉顧問です。増村さんとともに動いてくださったのは、元早稲田大学ラグビー部監督の白井善三郎さんでした。当時の対抗戦は各学校間の話し合いで試合の開催を決める方式だったので、加盟校が「試合をしてもいい」と言ってくれないと、試合ができませんでした。
お二人は「対抗戦加盟は難しいかもしれないが、とにかくやれることはやってみよう」ということになり、まず明治大学の北島忠治監督のもとを訪れます。すると北島監督は二つ返事で「OK」をくださいました。
その後もお二人は、対抗戦加盟校一校一校に出向き、試合を組んでもらえるよう、お願いをして回りました。ただ、一度、試合を組んでもらえたとしても、翌年も組んでもらえるという保証はありませんでした。事実、前年対戦した学校から「今年はスケジュールが合わない」と対戦を断られたケースもあったと聞きます。
それでもお二人は諦めずに、毎年、丁寧にお願いに回り、やがて実力も認められるようになって、多くの学校が帝京と試合をしてくれるようになりました。帝京に限らず、対抗戦に後発で加盟した学校の多くは、(程度の差こそあれ)同じような経緯を辿ったはずです。
いま帝京が対抗戦で戦うことができているその背景には、多くの先輩方が積み重ねてきた歴史があります。そんな対抗戦での優勝。その価値の大きさをファンの皆様と共有し、まずは喜び、学生たちは次の目標へと歩みを進めます。
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
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