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2024/1/2【 第60全国大学ラグビーフットボール選手権大会 】vs天理大学 マッチレポート
2024/01/04
第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝 対天理大学戦
1月2日(火)・国立競技場
○帝京大学22-12天理大学●
《BRIEF REVIEW》
大学選手権準決勝の相手は天理大学。これまでも数多くの名勝負を繰り広げてきた相手だ。
試合開始直後は一進一退。帝京は相手の攻撃をダブルタックルでしっかりと止める。帝京の攻めでは、スクラムからチャンスを生むが、相手のプレッシャーも厳しく、攻め切れない。SO井上からWTB小村へのキックパスも惜しくもつながらない。
得点が動いたのは14分。ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-CTB戒田-WTB高本(とむ)と渡り、高本がディフェンスをはじきながらトライ(7-0)。直後の17分には、FB山口のハイパントをWTB小村がナイスキャッチ。すぐにWTB高本(とむ)にパスし、高本が抜け出し、走り切って連続トライを奪う(14-0)。
しかし、ここから帝京のディフェンスにややほころびが見えてくる。それまでダブルタックルで止めていた、相手の強いランナーに対して、1人でタックルに行って前に出られる場面も出てくる。
21分には、ラインアウトからつながれてトライを許してしまう(14-5)。さらに攻められる時間帯が続くが、帝京も厳しいディフェンスで防ぐ。しかし、35分、スクラムから攻められ、トライを奪われ、14-12で前半を折り返した。
ハーフタイムには首脳陣から「仲間のために体を張ろう」という言葉がかけられ、気持ちを切り替えて後半に臨んだ。
この切り替えがうまくいったことで、後半は帝京の動きがよくなる。ミスも出るが、SH李の速い出足でのディフェンスからHO江良がジャッカルし、チャンスを作る。
3分、ラインアウトからFL奥井が前進。ラックからSH李-HO江良-SO井上-WTB小村と渡り、小村が走り切ってトライ(19-12)。7分にはFB山口のPGが決まり、22-12とリードを広げる。
ここからはお互い、接点での激しさが増していき、一進一退の展開となるが、地域的には帝京が敵陣でプレーする時間が長くなる。接点でも帝京が相手を押し返せるようになる。ただ、チャンスでミスも出るなどして取り切れない。
それでも相手の攻撃はCTB久木野、CTB戒田、PR津村、LOシュミットらの好タックルで止める。自陣に入られそうになっても、FB山口の好タッチキックなどで地域を戻す。
攻められる場面は何度もあるが、全員でしっかりと守る。ターンオーバーされても、FL青木、FLダウナカマカマ、PR森山、FL奥井、PR津村らが好タックルを見せる。
攻撃に転じ、CTB五島の突破でチャンスを作るが、相手のディフェンスも厳しく、得点までは至らない。
それでも帝京は最後まで全員でしっかりと守り切り、そのまま22-12でノーサイド。帝京が1月13日の決勝戦へと駒を進めた。
《COLUMN》
―― ラグビーはメンタルのスポーツ ――
帝京が3年連続で大学選手権決勝進出を決めました。
帝京も、対戦相手の天理大学もフィジカルの強さに定評のあるチームですが、この日の試合ではその評判通り、互いに一歩も引かないぶつかり合いを続け、試合は壮絶なフィジカルバトルとなりました。
ラグビーはフィジカル・スポーツであり、フィジカルが強い方が圧倒的に有利であることは間違いないでしょう。しかし、相馬朋和監督は記者会見でこう述べました。
「つくづくラグビーというのはメンタルなスポーツだなと思う80分間でした。」
続けてこう述べています。
「立ち上がり、ハードワークして取ったすばらしい2トライ。その影響でみんなが急に人任せになってしまう。決勝戦が見えてしまったのか、突然、タックルに踏み込まなくなる学生たちが次々と出てきてしまいました。」
おそらく、実際に決勝戦を思い浮かべていた選手はいなかったでしょうし、ましてや油断や手抜きをしていた選手はいなかったはずです。それでも「人任せ」のタックルになってしまいました。それはおそらく「無意識」のなせるわざです。
意識では「さあ、ここから0対0のつもりで気を引き締めていくぞ」と思ったり、言葉にしたりしても、無意識は「開始早々から2連続トライを取れたのだから、この調子で行けば同じようにトライを取れる」と感じてしまったのでしょう。
無意識の厄介なところは、自分では気付かない点です。自分で気付かなければ、コントロールすることもできません。
それに気付いていたのは、岩出雅之顧問(前監督)、そしてスタンドで一緒に見ていた相馬朋和監督です。2人はハーフタイムに絶妙な声掛けをします。
「仲間のために体を張れるプレーヤーになろう」
ここで重要なのは、「油断するな」とか「何で人任せにするんだ」といった声掛けではなかった点です。「こうするな」ではなく「こうしよう」という声掛けによって、全員が具体的な行動に落とし込むことができたわけです。
そして後半早々にトライを奪い、その後も全員が体を張り続けたことで、22-12という勝利につながりました。
強いフィジカルを持っていても、マインドが調っていないとそれを発揮することができません。ラグビーとはつくづくおもしろい競技だと思います。決勝戦でも彼らのメンタルに注目しながら応援したいと思います。
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
1月2日(火)・国立競技場
○帝京大学22-12天理大学●
《BRIEF REVIEW》
大学選手権準決勝の相手は天理大学。これまでも数多くの名勝負を繰り広げてきた相手だ。
試合開始直後は一進一退。帝京は相手の攻撃をダブルタックルでしっかりと止める。帝京の攻めでは、スクラムからチャンスを生むが、相手のプレッシャーも厳しく、攻め切れない。SO井上からWTB小村へのキックパスも惜しくもつながらない。
得点が動いたのは14分。ラインアウトから連続攻撃。ラックからSH李-SO井上-CTB戒田-WTB高本(とむ)と渡り、高本がディフェンスをはじきながらトライ(7-0)。直後の17分には、FB山口のハイパントをWTB小村がナイスキャッチ。すぐにWTB高本(とむ)にパスし、高本が抜け出し、走り切って連続トライを奪う(14-0)。
しかし、ここから帝京のディフェンスにややほころびが見えてくる。それまでダブルタックルで止めていた、相手の強いランナーに対して、1人でタックルに行って前に出られる場面も出てくる。
21分には、ラインアウトからつながれてトライを許してしまう(14-5)。さらに攻められる時間帯が続くが、帝京も厳しいディフェンスで防ぐ。しかし、35分、スクラムから攻められ、トライを奪われ、14-12で前半を折り返した。
ハーフタイムには首脳陣から「仲間のために体を張ろう」という言葉がかけられ、気持ちを切り替えて後半に臨んだ。
この切り替えがうまくいったことで、後半は帝京の動きがよくなる。ミスも出るが、SH李の速い出足でのディフェンスからHO江良がジャッカルし、チャンスを作る。
3分、ラインアウトからFL奥井が前進。ラックからSH李-HO江良-SO井上-WTB小村と渡り、小村が走り切ってトライ(19-12)。7分にはFB山口のPGが決まり、22-12とリードを広げる。
ここからはお互い、接点での激しさが増していき、一進一退の展開となるが、地域的には帝京が敵陣でプレーする時間が長くなる。接点でも帝京が相手を押し返せるようになる。ただ、チャンスでミスも出るなどして取り切れない。
それでも相手の攻撃はCTB久木野、CTB戒田、PR津村、LOシュミットらの好タックルで止める。自陣に入られそうになっても、FB山口の好タッチキックなどで地域を戻す。
攻められる場面は何度もあるが、全員でしっかりと守る。ターンオーバーされても、FL青木、FLダウナカマカマ、PR森山、FL奥井、PR津村らが好タックルを見せる。
攻撃に転じ、CTB五島の突破でチャンスを作るが、相手のディフェンスも厳しく、得点までは至らない。
それでも帝京は最後まで全員でしっかりと守り切り、そのまま22-12でノーサイド。帝京が1月13日の決勝戦へと駒を進めた。
《COLUMN》
―― ラグビーはメンタルのスポーツ ――
帝京が3年連続で大学選手権決勝進出を決めました。
帝京も、対戦相手の天理大学もフィジカルの強さに定評のあるチームですが、この日の試合ではその評判通り、互いに一歩も引かないぶつかり合いを続け、試合は壮絶なフィジカルバトルとなりました。
ラグビーはフィジカル・スポーツであり、フィジカルが強い方が圧倒的に有利であることは間違いないでしょう。しかし、相馬朋和監督は記者会見でこう述べました。
「つくづくラグビーというのはメンタルなスポーツだなと思う80分間でした。」
続けてこう述べています。
「立ち上がり、ハードワークして取ったすばらしい2トライ。その影響でみんなが急に人任せになってしまう。決勝戦が見えてしまったのか、突然、タックルに踏み込まなくなる学生たちが次々と出てきてしまいました。」
おそらく、実際に決勝戦を思い浮かべていた選手はいなかったでしょうし、ましてや油断や手抜きをしていた選手はいなかったはずです。それでも「人任せ」のタックルになってしまいました。それはおそらく「無意識」のなせるわざです。
意識では「さあ、ここから0対0のつもりで気を引き締めていくぞ」と思ったり、言葉にしたりしても、無意識は「開始早々から2連続トライを取れたのだから、この調子で行けば同じようにトライを取れる」と感じてしまったのでしょう。
無意識の厄介なところは、自分では気付かない点です。自分で気付かなければ、コントロールすることもできません。
それに気付いていたのは、岩出雅之顧問(前監督)、そしてスタンドで一緒に見ていた相馬朋和監督です。2人はハーフタイムに絶妙な声掛けをします。
「仲間のために体を張れるプレーヤーになろう」
ここで重要なのは、「油断するな」とか「何で人任せにするんだ」といった声掛けではなかった点です。「こうするな」ではなく「こうしよう」という声掛けによって、全員が具体的な行動に落とし込むことができたわけです。
そして後半早々にトライを奪い、その後も全員が体を張り続けたことで、22-12という勝利につながりました。
強いフィジカルを持っていても、マインドが調っていないとそれを発揮することができません。ラグビーとはつくづくおもしろい競技だと思います。決勝戦でも彼らのメンタルに注目しながら応援したいと思います。
(文/木村俊太・写真/志賀由佳)
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